HISTORY & STORY

3.20.1992

焼岳北面スキー

火打山~焼岳北面スキー滑降・単独
原 伸也(ビルエバンス同人)
 
 
1992年3月20日
加藤 雅昭(大阪あすなろ山岳会) 秋田 三枝子(関西蛍雪山岳会) 原 伸
也(ビルエバンス同人)頸城山塊の火打山から焼山の南面は浅い沢が多くよく滑られてる。
が、一方の北面はそれとは対称的に激しい浸食を受け沢も急峻で複雑に入り組ん
でいる。
そのためか、焼山の北面などや 火打山から派生する空沢山方面などの一部を
は、ほとんどスキー滑降の記録は発表されていない。
日本の山の中でも、標高差2000m以上を滑れる山は特別な条件下での富士山
をのぞいて、火打山頂上2462mから笹倉温泉の450m地点までの標高差約
2000mぐらいしかないと思われる。
豊富な積雪と雪質がよく人もあまりみかけない静寂な山々。
山スキーの縦走も いったん稜線にでると素晴らしい奇妙な形をした山の展望が
楽しめて面白いが、個人的にはスキー滑降を主体としたほうが楽しめると思う。

1983年5月1日~4日
5月1日
関温泉を8時発。
燕温泉を経由して、右手の神奈山の斜面からの落石に注意しながら、ツボ足でゆ
っくりと登る
黒沢池に12時5分着。ツエルト泊。
5月2日
天候悪く停滞。
5月3日
霧で視界ゼロの中を6時50分発。稜線沿いに登り、火打山頂上に9時40分
着。
頂上直下の急な北面斜面も雲の中で何も見えな.
2年前に頂上で偶然出会った直江津山岳会の柳氏らと共に初滑降したから気持ち
の余裕がある、とはいっても最初の滑り出しはポーンと空中に放り出されるよう
で、いろんな考えが交錯して不安と勇気との戦いだ。
滑り出して10mも滑ると、ほとんど頭の中はカラッポで雪面との無邪気な遊び
だけで引き返す気にならない。
雪は腐り気味でしかも積雪量も前回より少な目なのが気がかりだ。
左手へギルランデ状に慎重に滑ると、落下しそうなロート状の一番怖い斜面とな
る。
しかし底部がカール状に少しずつ広がってくるのが見えるとよく滑ったなという
安心感と充実感が
心の中に満足として広がっていくのがわかる。
賽ノ河原手前の緩斜面のど真ん中で大休止し、ウイスキーで乾杯。
世間ではアホと言うヤツもいるが オイラにはとてつもなく充実した気分になる
んだ。

シールをボロイ板につけて胴抜キレットへ向かう。
1730m地点から雨が降り始め、ザックをデポしてツボ足で登高。
胴抜キレットに14時13分着。休憩もせずに滑り始める。
風の通り道なのか堅い雪質でよく滑る。ザックを回収して1500m地点でツエ
ルトを張る。
翌朝3時まで強風と雨。

5月4日
賽ノ河原を横断しようとするが、濃霧で下部が見えず引き返す。
昨日登り滑ったルートを忠実に辿り、胴抜キレットに9時30分着。
円錐形の焼山への縦走路をキックステップで登るが、アイゼン無しのため結構気
を使う。
石仏がひょっこり立ってる頂上に11時28分着。
頂上から稜線沿いに雪面を下ると、ガレが露出した場所があり、そこから固定ザ
イルに助けられて雪の大斜面に出る。
2350mから滑降開始。ホワイトアウトの中泊岩を目指して下るが、滑降不能
な岩場の上部へ出てしまい、大幅にもどることになる。
今度は地図とコンパスそして山勘をたよりに、慎重に沢沿いを下る。
12時15分遭難碑のある1780m地点にようやくたどりつく。
ひと安心で休憩してると、皮肉にも霧は消えていく。
U字谷をふたつほどトラバースし、フィナーレの長大な緩斜面をゆらゆらとパラ
レルで快調に滑る。あきてきてちょっと急な斜面をアマナ平へとコースを自由に
とる。
焼山川と火打山川に挟まれた溶岩流が形成してるいくつかのおだやかな起伏を越
えていく。
左手に新田山が見えはじめると、雪面のところどころに土が出て春の雰囲気が出
てくる。
笹倉温泉手前でスキーは終了。

雨飾山前沢左ルンゼ初滑降

雨飾山前沢左ルンゼ初滑降
NOBUYA HARA
 
 
1992年3月20日
加藤 雅昭(大阪あすなろ山岳会) 秋田 三枝子(関西蛍雪山岳会) 原 伸
也(ビルエバンス同人)

92年の正月に大渚山の登頂した時に、雨飾山の左肩から「く」の字形に落ちて
るルンゼが目についた。
正面から見ると傾斜は概して強く見え、スキー滑降ではとても不可能に見えた。
しかし眺めているうちに、それも可能であるかもしれないとおもえてきて
3月の連休に実行した。

3月20日
小谷温泉を7時30分出発。
林道を少し歩き、シールをつけて登高。
標高1127m地点から大海川沿いに登り、さらに夏道のある尾根の手前の沢を
登る。
荒管沢をトラバースし、右手の尾根に取り付く。
すぐにアイゼンに履き替え、クレバスの多い尾根を登る。
雨飾山の頂上に12時55分着。
山頂から、痩せた西尾根を慎重に下り、1860メートル地点からスキーをつけ
る。
左ルンゼをのぞくと、だいたいの全容が見える。
岩壁や滝はなさそうで一安心。
雪屁の小さい部分から左ルンゼに滑り込む。
昼間部までは30~40度の急斜面。ジャンプウエーデルンで滑降。
気温も上がり湿雪になってるので、雪崩が心配だった。
巨大な前沢奥壁を回りこみ右ルンゼと合流すると斜度も落ち、20度程度にな
る。
さらに前沢右俣は右に曲がっていて、ここからはデブリが多く滑りづらい。
1000m地点まで滑降しそこからシールをつける。
前沢の左岸を巻いてトラバース。湯峠に到着するころには日が暮れてしまった。
ヘッドランプの明かりに助けられ小谷温泉まで滑降。
19時30分小谷温泉着。

写真
1)大渚山から雨飾山の全景 前沢が見える
2)登りの写真 モデルはワシ