HISTORY & STORY

10.06.2006

与那国ー西表島横断  by ミウラー

 与那国ー西表島横断  by ミウラー

カテゴリ:2006の記録
シーカヤックで与那国島から西表島まで漕ぎ渡る海峡横断遠征に参加して来
ました。

島間距離は77kmで日本を最西端の与那国から北海道まで島伝いに最短距離で結ぶと2

目に長い島間距離です。出発と到着の港を結ぶと約80Km。これを人力のみで15時間
で渡る計画でしたが、向かい風と
向かい波に手こずり約23時間の死闘となり何とか全員渡り切りました。

過去漕ぎ渡った記録は少なく、アマチュアカヤッカーがシングル艇で渡っ
たのは私が日本初となるそうです。

実は、今回の海峡横断は8月に石垣島でシーカヤックツーリング中に飲んだ勢いで
「やってやる!」と言ってしまった事から始まりました。
そのときガイドしてくれた八幡暁という男は2年前からノースフェイスでサポートし
ている冒険カヤッカーで、数年かけてオーストラリアから日本(葉山)までの海をつ
ないでいます。 詳しくはこちらを http://www.thegreatseaman.jp/index.html

インドネシアの海域が津波以降許可が下りない為一昨年、葉山-沖縄間を漕ぎ、昨年
は石垣-沖縄本島をつなぎました。そのとき漕いだ宮古-久米島間が日本最長の海峡
でなんと220kmです。これを単独、伴走船なし、56時間で漕ぎきりました。日本(世
界)初の快挙でした。そして、この6月、黒潮の源流が南北に流れる台湾-与那国間
110kmを27時間で渡りました。これも単独、伴走船なし、もちろん世界初、というか
こんな厳しい海を渡る人間は当分出ないだろうと言われています。間違いなく今国内
で最もタフなシーカヤッカーのひとりです。

このとき彼は本当は与那国から石垣まで漕ぐ予定でしたが、訳あっていったん与那国
で打ち切りました。石垣-西表間は何度も渡ってる場所なので、与那国-西表が彼に
とって国内で唯一残った最後の海峡となりました。ここを一緒に渡ろうと、誘われた
わけです。当然、私はたいしたカヤック経験も無く、ほんとの外洋なんて漕いだこと
もないので無理だと言ったのですが、石垣で一緒に漕いで必ずできるとおだてられ、
また、シングルで成功すれば日本初という魅力にも引かれ、すっかりその気になって
しまったという訳です。

それなりに練習したとはいえ、出発前夜、海の状況と見通しを言われたときは、顔面
蒼白でした。沈してもいいから20時間漕ぎつつければ渡れると励まされ、覚悟を決め
ました。暗闇の中出発したときは、尋常じゃないうねりにビビリましたが、最初の難
所の三角波地帯に突入したときには、波に負けずに漕ぐしかないと必死でした。実は
僕はロールやブレイスといったリカバリーテクニックをほとんど持たず、フォワード
ストロークのみで勝負するしかないのでした。無事三角波帯を越えたら少し自信がつ
き、大きなうねりの中を漕ぐのが楽しくてたまらなくなり、ひたすら漕ぎまくりまし
た。気が付いたら、先頭で隊を引っ張る役になっていました。長いナイトパドリング
に突入してからは、もう時計を見るのをやめ、パドリングマシーンになりきり、最後
は仲間の艇をトーイングしてのゴールでした。

疲労困憊でしたが、仲間達は、最後まで笑って漕ぎきったのは、あんただけだとあき
れてました。本当に楽しく、有意義な、すばらしい23時間の旅でした。当分シーカ
ヤックにはまりそうです。あの外洋のでかいうねりは癖になります。

ARCレポート番外編でした。
みうら つとむ