HISTORY & STORY

2.10.2002

宝登山

宝登山

 
いいところです
 
ロウバイを見に宝登山に登る。
by Kaazuo Mtsukura

 2月10日(日)、長瀞の宝登山(ほどさん)に登ってきた。以前から、宝の登山と
いうその山名が気になっていた。ただ、山というにはあまりに小さい。標高497mと、
500mにも満たない。さらに、山頂直下まではロープウエイで行ける。おじいちゃん、
おばあちゃんが気軽にやってこられる山なのだ。そんなわけで、なかなか足が向くこ
とはなかった。
 では、なぜ、そんな山に行ったのか? この時期、宝登山はロウバイが見事なのだ。
山頂に上がれば、ロウバイが山肌を黄色く染め、その向こうに秩父連山が一望できる
という。
 家を8時40分に出ると、宝登山ロープウエイ脇の駐車場には10時半過ぎに到着。駐
車場代500円を支払い、何とか空いた場所を見つけて停める。身支度を整えると、10
時40分に出発。不動寺の脇の車道をひたすら登っていく。この時期、雪を気にせずに
登れる山とあって、かなりのハイカーの数だ。半数はロープウエイを使わずに登って
いるようだ。
 途中からは林道をショートカットするように、山道がつけられている。山道脇には
ところどころ雪が残っている。のんびり歩くハイカーを次々と追い抜いていく。コー
スタイム1時間のところを45分ほどで宝登山奥宮を経て山頂に立つ。すでにかなりの
人出だ。70~80人くらいはいそうだ。
 山頂のロウバイは淡い黄色の花を鈴なりにつけ、あたり一面に甘い香りを運んでい
た。白梅や紅梅よりもずっと匂いが強い。花は、その名の通り、まさに蝋細工のよう
だ。花びらの質感がつるりとして、陽が当たると透けて見える。山頂からはロウバイ
の向こう西側に、ギザギザの稜線が印象的な両神山が目立つ。写真愛好家5人くらい
がそれを狙い三脚を立て、雲から太陽が出るのを待っている。南には山頂部を真っ白
にした武甲山が痛々しい。石灰岩採掘で小学生の頃登った姿とはまるで変わってしまっ
ている。
 小一時間ほど、ロウバイや白梅、紅梅を楽しんでから、ロープウエイの山頂へと向
かう。駅にはこれから下る人たちの行列が50人くらいできている。下山路へと向かう
と、左斜面に鮮やかな濃い黄色が目に飛び込んできた。福寿草が斜面にポッ、ポッと
明かりを灯すように咲いていた。山道に入ると、今度は、ロープウエイ下の斜面に枝
先にレモン色に近い黄色と臙脂の毛糸が絡んだように咲くマンサクが花をつけていた。
ちなみにマンサクは「まず咲く」ということからその名がついたとも言われ、まさに
春一番に山を彩る花の一つだ。
 それにしても、春一番の花はなぜ、どれもこれも黄色いのだろうか。単なる偶然な
のか。ただ、言えるのは、冬寒の時期、見ていてあったかく感じる花は、赤でも白で
もなく、黄色だ。もしかしたら、花もそのことを知っていて黄色に咲くのかも知れな
い。