HISTORY & STORY

1.06.2015

道坂峠と今倉山

今倉山
往にし方の道坂峠から
2015年1月5日
ヒミツ展望台から

天神様

旧トンネル脇から登る

今倉山は3ピークある

member 太郎 伊藤フミヒロ記 

5日 月曜日
天候 はれ

 JTBのガイドブックに今倉山から撮った御正体山のいい写真があったのでそれを撮影してみたい。県道道志都留線の道坂トンネルからスタートするのがいちばんの近道。道志道の駅の先、神地に分岐があって10分ほどでトンネルまで行くことができる。トンネル手前の天神様の脇に車を停める。
 道坂トンネルと表示がある。道坂峠の下を抜ける立派な新道で、かつては一段上の旧トンネルを使った。それ以前は人や馬が主尾根上の道坂峠を越えて行き来したという。天神様は峠にあったものを引き下ろしたらしい。願掛けの新しいお札がたくさんぶら下がっている。峠は道志の神地や善の木村から谷村(都留の旧名)に越える古道で村と町を結ぶ重要な経路だったという。
 7時半スタート。ガイドブックのとおり旧道に入り、入口をふさがれた旧トンネルの脇から造林帯の中の暗い急坂を登る。ひと登りで道志連山の主稜線に上がることができる。急に北風が吹き付けてくる。道坂峠はすぐ先にあった。案内も石仏もなにもない鞍部だが、道志側には古道としかいいようのない深い凹状の道型が下っている。天神様はここにあったのだろうと思われる小塚もあって好ましい峠の風情を見せている。
 都留(谷村)側に下る道は、と見るが、急坂でそれらしい様子はない。ハイキング道を今倉山へと辿る。しばらく行ったところで左に緩く下る踏み跡が見える。道坂峠に達したあとすぐ谷に下るのではなくもう少し尾根を登ってからまくようにして古道があったのかもしれない。さらにしばらく行くと小さな広場があって、左は都留との案内があった。道坂トンネルの都留側の入口から上がってくる新しいハイキング道のようだ。
道坂峠、どうさか峠と読む。天神峠とも

今倉山頂

聖、赤石、荒川、塩見


 今倉山へは急坂を一直線に登るように道が付けられている。極端な急坂ではないのでそんな道もありなのだが、丹沢の人気ルートのように人の手がていねいに入った様子はない。道志連山のメイントレイルなのだが昔のまんまの登山道が残されているようだ。
 休み休み登って9時半に今倉山山頂。標高差は500m。広くて平な山頂だが雑木の林に囲まれている。木の間から四方の山々を見ることができるが、緑の季節には望めないだろう。なんともハイカーには気の毒な山頂ではある。では、ガイドブックに載っていた御正体山と富士山の写真はどこから撮ったのだろう?
 そのへんを歩きまわったあと、あてずっぽうで西峰へ続く道を下ってみる。広場のようなコルに降り立つと西側が明るい。雑木の林の薄いところがあってそこに向かうと、あった、小さな展望台が。人ひとりが立てるスペースで、正面に素晴らし景色が広がっている。足元を見ると灌木をのこぎりで切ったあともある。熱心な写真家の秘密の場所にちがいない。守備よく撮影を済ませトラバースするようにして往路のハイキング道に戻る。シカ道だったらしくがさがさと獣が逃げていく後ろ姿が見えた。太郎は大騒ぎだ。
 下りはなんのこともなく1時間ほどでトンネル入り口に帰着。11時半終了。今日もだれにも会わなかった。道志の山は人気が少ないので犬連れ散歩にはとても向いている。

道志道駅から道志の山

赤鞍は遥か向う。道志七里は細長い

参考
 道志七里は長い谷間にあって、小さな村が点在している。村から都留(谷村)側に抜けるには道志の山を越えなければならない。いくつもの峠があったようだが、道坂峠越えは重要な道だったらしい。犬越え路や城ヶ尾峠ととも戦国時代からの物語が語りつがれているようだ。
 道志の山から南を見ると甲相国境稜線の向うに箱根、そして小田原の海を遥かに見ることができる。甲州から道坂峠に登りさらに道志の谷に下り、城ヶ尾峠を越えて玄倉、酒匂川と辿れば相模の海に触れることができる。山国からやってきて遠くに光る海を見た古人の顔を想像するのはけして難しくない。驚きと憧れ、今の人にも共通する表情にちがいない。
 峠歩きの現代のグル「峠のむこうへ」さんの実地踏査と論考には頭が下がる思いだが、道坂峠についても古書を比較検討して、実際に歩いて探したレポートが発表されている。この方は学者ではないらしいが、だからこそというか、たいへん文章が素晴らしい。過去の紀行家に負けないレポートを読むことができる。

「峠のむこうへ」さんの道坂峠紀行
 http://homepage3.nifty.com/tougepal/budousawa.htm