CLIMBING IN 4000ers in Switzerland
スイスアルプスの4000メートル峰4つ99
雪が落ち着かないとたいへん
Jungfrau, Alarinhorn und Camping in GW
1999-7-22 8-10 member KUROKAWA,KISYA、SATOSI KANAMORI 6-22 KLM便でアムステルダム経由チュウリッヒ着。ほぼ同時刻着の大阪発大韓 便の黒ちゃんと合流。レンタカーを借り出してルツエルンへ。車はオペルのアト ラスの新車で調子よい。町外れの湖畔にベストウエスタンチェーンのホテルをみ つけチェックイン。むかいのレストランで夕食。物価は日本より高めだろうか。 ホテルのまどから眺めるピラタス山と湖がすばらしい。 6-23 ルツエルンからインターラーケンに向かう。町なかを偵察して米など買い だしてグリンデルワルトへ。道がせまいのにスピードをだすのがスイスの事情ら しい。BODENWALD、最近はEIGERNORDWANDと名前をかえたキャンプ場にチェックイ ン。前者はホテル名となってオーナーの息子さんが敷地内で経営している。日本 人のクライマーが昔から利用するところでオーナーのおじさんも親切だ。設備は たいへんよく、景色は最高だ。目前にアイガーの北壁が大きくそびえる。この 2、3日の悪天気で山は冬模様。フィルストからはパラパントが何十機と飛び出 している。人気エリアらしい。山登りより楽しそうだ。 この日、ドライブでグロッサーシシャイネディックとラウターブルンネンの谷を 偵察する。グリンデルワルトは日本人が多く、老人のツーリストが多いが、ラウ ターブルンネンの谷には欧米の若者たちが多くみられた。スポーツショップも前 者にはみるべきものがほとんどないが、後者ではよい店が発見できた。 6-24 天気がよいので上にあがってみることにする。ユングフラウヨッホで登山 電車をおりる。ユングフラウは真っ白でトレールなし。登山シーズンにはまだ早 すぎるのだろうか。ラッセル1時間でメンヒヨッホの小屋にはいる。人影がな く、冬季小屋にはいってなごむ。薪用のキッチンストーブがあって快適。水を作 ってお茶を飲む。夕方になってイタリア人の6人組みがあがってくる。山スキー をはいている。そのあとスイス人の2チームが入ってにぎやかになった。イタリ アチームからハムなどおいしいものをいただく。彼等は夜中にメンヒをめざすと いう。スイス人の若者ふたりは北東壁をのぼるという。 6-25 イタリアチームは未明の2時頃でていくが、6時ころにはもどってきた。 頂上直下100メートルのところで雪がわるく敗退したとのこと。ぼくらは7時 に小屋をでる。天気はよい。トレールをたどると、おもったよりも手前でおわっ ていた。これなら頂上までまだ標高で200メートルはありそうだ。目の前にや せたナイフリッジがのびている。2、3日前の新雪がつもっていて悪そうだ。イ タリア隊はここで懸命にも引き返す勇気をもったわけだ。ここから先はトレール なし。危ないんじゃないの? とおもうが黒ちゃんはロープをだして行くとい う。あてになりそうもないスタンディングアクスビレイで確保する。50メート ルいっぱいにのばしてやせ尾根がおわり、こんどは急なカンテ状雪壁をぼくがリ ードする。4000メートルでのラッセルはきつい。それでも出発直前に富士山頂で 1泊した効果は絶大だ。となりの尾根をスイスの二人組みが登っていくのがみえ る。50メートルのばしたところで岩場にでくわし、つぎは黒ちゃんがさらに急な 雪壁をつめる。50メートルのばしたところで確保用のポールがでてくる。頂上 手前の肩のようなところ。ここから先は頂上まで広くてゆるい頂上稜線が伸びて いるのだろうと勝手に想像していたのだが、あにはからんや、右に左にセッピが 張り出したやせ尾根。メンヒはビギナー向けの山、などとガイドブックにはあっ たがとんでもない。今日のコンディションは厳しい。さらに50メートルほどの ばしたところで、急な雪壁のトラバースとなる。あと頂上まで100メートルだ が、このトラバースはやばそうだ。500メートルしたのセラックまで急な滑り台 がのびている。自信がないので、ここで戻ろうと、黒ちゃんに言うと、ひとりな ら行けるとのこと。ロープを外してここで待つことにする。確保支点もどこかに 埋っていて見つからないのでロープがないほうがこの場合安全なのだ。煙草をす う。黒ちゃんはピッケルをおもいきり突き刺して、雪を何度も践み固めながら、 がんがんといく。雪崩ないことを願うだけだ。 頂上直下の北東壁にはスイス人の若者がひとり、上にもいけず下に下ることもで きずに立ち往生しているのがみえる。黒ちゃんは頂上に着いたが、相変わらず動 こうとはしない。そのうち赤い救助隊のヘリコプターがごお音とともにやってき た。レスキュー隊員がするするとおりてきて、あっと言うまにその遭難者をつか まえると、ヘリにぶらさがったまま下界へと連れ去っていった。そのスイス人の 相棒はその前にひとりで滑落してケガをし、電話でレスキュウを呼んだらしい。 とり残された彼もヘリで救助されたということのようだ。ぼくも黒ちゃんもスク ープ写真をものにしたようだ。 天気はすばらしい。モンブランやマッターホルンが見える。 時計をみると11時。黒ちゃんは、北尾根を登ってきた単独行のイギリス人と頂上 からいっしょにおりてきた。ロープで確保しながら登ってきたルートどおりに下 降して、12時に小屋との分岐点にもどる。 電車で下山。クライネシャイディックでヤマケイのハイキングビデオ撮影隊とで あう。前の日、町の宿に遊びにいっているので全員が顔見知りだ。汗を流しなが ら働いている。キャンプ場に戻るとモンベルテントが張ってあり元気な金森君の 顔があらわれた。予定どおりの登場だ。 明日からは3人での行動になる。 6-26 レストの日。朝飯後、ビデオグループのコンドミに遊びにいきコーヒーを のんでいると、今日はメンリヘンでアルペンホルンのコンサートがあるという。 撮影にいくというのでぼくらも同行することにする。現地までのぼってみると、 天気がわるく延期になったとのこと、お茶をのんでから、ウエンゲンまでハイキ ングする。標高差800メートルの下りハイキングだ。駅につくと見覚えのある風 景があった。何年かまえここにきたときのことを思いだした。鉄道をつかってぐ るりと大廻りしてグリンデルワルトに戻る。 6-28 アイガー東山稜は冬景色。ユングフラウもいまだにトレールがつかない。危ない 雰囲気だ。夏山日和になってガイド登山でも始まってくれれば楽勝なのだが。作 戦をかえて南のバリス山群の4000メートル峰にのぼることにする。ビデオ隊の山 本、高城さんたちも打ち合わせにツエルマットにいくというので、車2台をつら ねて移動。カンデルシュテグからの鉄道フェリーが珍しい。二つの谷の出会いで ツエルマットにはいるベンツワゴンとわかれ、われわれはザースの谷にはいる。 ザースフェーの駐車場から荷物をもってインフォメーションへ。初めて訪れる 村。オートルートの最終ポイントであり、ツエルマットとはひとあじ異なったス キーエリア。正面にドムがそびえる。ベルグハイマートガルニに宿をとる。町中 を散歩。こじんまりして良い町。テレマークとクライミングの専門店もある。わ れわれは明日アラリホルンに登る予定。 6-29 朝いちでロープウエー2本と地下ケーブルカーをのりついでミッテルアラリン へ。930に歩きだす。ノーマルを登るグループがみえる。正面の北東稜を登るト レールもみえる。おじいさんとおばあさんの4000メートルといわれるだけあって 人気ルートのようだ。ここでいちばん危険なのは歩き始めがスキー場のなかなの でスキーヤーにぶつけられること、とゲーツゲのガイドブックには書いてあった が実際そのような感じではある。ノーマルではものたりないと思ったのか、黒ち ゃんが正面の北東稜を登ろうという。先行のトレールがあるので楽だ。PD+のル ート。かなりむずかしいはず。正面からみると絶壁にみえるが、実際にとりつい てみるとそれほどのこともない。先行していたのはフィンランド人で登路をおり てくるのとであう。たいしたことないよ、とのこと。それでも頂上直下100メー トルは60度以上の雪壁で、ロープをだしてダブルアックスで快適にのぼることが できた。2時間半で頂上。マッターホルンがそびえる。バイスホルンやモンテロ ーザも素晴しい。 下山はノーマルルートにとる。おじさんやおばあさんがガイドとともに登ってく るのにであう。1330ミッテルアラリンの駅にもどる。全員調子がよいようだ。 この日、気分転換してグレッチャーホテルに転宿。 6-30 ザースフェーからツエルマットに移動。車止めのターシェの駅で金森君の知り合 いのエクストリームスキーヤーの利根川君にであう。ツエルマットまで電車、駅 前のホテルバンホフにはいり、利根川君と大通り2階のレストランでカレーライ スをとる。マッターホルンは雪が多くまだシーズンにはいっていないとのこと。 明日はブライトホルンからスキー滑降することにしよう。駅前のバイアードスポ ーツでテレマークスキー1式3人分を借りる。午後近くのクライミングゲレンデ を見にいく。 7-1 新築なったホテルバンホフは快適宿。ドミトリーもあるし、炊事設備もある。山 屋のためのホテルだ。かんたんな朝飯をたべ、駅前から電気タクシーでロープウ エー駅へ急ぐ。クライネマッターホルンまでロプウエーでひといき。いきなりこ こに登ってきたらめまいがすることだろう。 天気は良好。もう何人かがブライトホルンを登っている。日本人の団体登山ツア ーの一行もガイドと添乗のひとといっしょに登りはじめた。20人くらいが3グ ループにわかれている。ぼくらも初めてはくレンタルスキーをつけて滑り初め る。コルまではゆるいくだり。先行する登山者をあっというまに追い越してしま うs。スキーはBD社のもの、ブーツはガルモントのプラスティック。 シールが入手できなかったので登りはスキーを背負う。2時間で頂上。頂上手前 は雪稜なのでスキーを肩にデポする。頂上は狭いがにぎやか。日本人グループが おお喜びしている。風が強いのですぐに退散。スキーの滑降写真を撮りながらく だる。金森君はいちばんいい斜面でスキーを流す。流れ止めがこわれてしまった のだ。すぐに止まったが、くやしいらしくすこし登り返して滑り直す。1時間ほ どでロープウエー駅にもどる。 ホテルバンホフにもどりランチをとり、荷物をまとめてそのまま電車にのりター シェへ。車で3時間弱のドライブ。なつかしのアイガーノルトバントのキャンプ エリアにもどる。夕食後、ビデオ隊の宿に遊びにいき帰還報告と自慢話し。 7-2 レストの日。大快晴。再び好天の周期に入ったようだ。そろそろ登山者が山を登 り出したのではないだろうか。午後は体を動かしたい気持ちになり金森くんとグ レッチャーシュートの岩場で2本ほどクライミング。 夕飯を食べながら相談する。いつまで天気がもつかわからないので、思いきって 明日はユングフラウに登ろう。メンヒヨッホの小屋に前泊して早朝に登るのが鉄 則だが、みんなの調子もよいので朝いちの登山電車であがりその日のうちに頂上 往復とすることにしよう。 7-3 予定通り730の電車に乗る。930にはユングフラウヨッホのスフインクスの出口か ら歩きだす。やはりおとといと昨日の好天で何人かが登ったのだろう、うっすら とトレイルがみえる。きょうも好天。メンヒヨッホの小屋を未明に出たのだろ う、2.3の登山者がユングフラウの頂上下をくだってくるのが遠望できる。日が 当って数時間たった雪面はときどきブスッとひざまでもぐる。やはり朝いちでア イゼンをきしませて登るべきだったかも。遅い出発に気持ちが焦る。雨量計のさ きでルートを失う。雪がおおいのではっきりした今シーズンのトレイルがまだで きていないのだ。もろい岩場をおそるおそるあがり、氷河からきたしっかりした トレイルに合流。あとは登るだけ。ヨッホからみた絶壁のトラバースも、その場 にいってみるとそれほどのこともない。トレイルがしっかりついている。左上の 巨大セッピがくずれてこなければ問題ない。太陽に暖められたあちこちの斜面か らは不気味な音とともに表層なだれがでている。トラバースをおえてクレバスを こえるとローターホルンとのコルにでる。急な雪壁をがんがんのぼって、ロープ がほしいトラバースも気合いで突破。氷のついた岩場もおもいっきりよく越え て、やがて4110メートルの頂上。1330、ガスがでてきて視界はなし。一時的なガ スだったが、長い無用と記念写真をとって下りの途につく。ロープもださずがん がんと下り、安全地帯へ。もう2時だというのに登ってくる二人組みにであう。 マイペースのひともいるのだ。今日頂上を極めたのは10人ほどか。麓の喧騒にく らべてあまりにもわずかな人口ではある。アレッチ氷河のトラバースにでてひと 安心、ここで念のため今日初めてのロープをだす。午後の氷河トラバース、クレ バスがこわいからだ。駅までの登り返しをがんばって1630ヨッホ駅に帰還。登り が4時間、下りが3時間のアルパイトであった。どうしても登りたいと思ってい たこの山群の最高峰に登って大満足。駅の韓国カップヌードルでランチ。きょう は朝ごはん以来たしたものを食べていなかったのを思い出した。 最終近くの電車の乗り、グルント下車。テントにもどってシャワーをあび、いつ ものとおり芝生の上で寝転びながらワインなどを飲みながら楽しく食事する。今 年の条件でわれわれのできることは大体やったという、感じか。 7-4 のんびり過ごす。 7-5 案の定天気下り坂。テント撤収。おやじがもう帰るのかという。明日金森くんが 帰国するのでチュウリッヒ郊外の温泉町バーデンに移動。ぼくもスケジュール変 更でいくらか早めのチケットをホテルプラン社にて再購入。バーデンのホテルヒ ルッチャー泊。川向こうの伝統の温泉プールになごむ。 7-6 天気くずれ曇りと雨。チュウリッヒで旧市街と大聖堂、シャガールのステンドグ ラスなど見学。金森くんを空港におくる。バーデンにもどる。黒ちゃんはあと10 日ほど残りドイツを旅したりするという。条件がよければマッターホルン登頂に もトライしたいとのこと。 7-7 バーデン町深訪。古城、歴史博物館など見学、再び温泉プールにはいり、夕方チ ュウリッヒ入。空港で黒ちゃんと分かれ、夜のJAL機にて帰国。チュウリヒ空港 のパブにて川崎カメ、みなみらんぼう氏らハイキング取材班とあう。どこかで会 えるとおもっていたが最後の最後に会えたわけだ。昨日二人はガイドとともに悪 天にもかかわらずメンヒに登ったという。ぼくらのトレイルをたどったわけだ。 7月8日午後4時成田着。 (汽車)