HISTORY & STORY

9.30.2001

大ヤスリ岩/夢のカリフォルニア

大ヤスリ岩/夢のカリフォルニア
日時調査中

・ルート
大ヤスリ岩/夢のカリフォルニア3P(5.10-、5.7、5.10)+ハイピ-ク・ルート上部2P(Ⅲ+、A1)

・メンバー
pika&chu

・内容
日帰りはきついので、前夜、大泉ラッセル邸泊。AM5:00起き、6:00出。
増富温泉経由で瑞牆山荘へ(40分)。
7:00発。金峰への登山道を辿り、富士見小屋から瑞牆方面へ左折。
取り付きは登山道沿い。明るく明瞭。8:40着。
頂上は間近で大勢のハイカ-が見えます。

ルートは大ヤスリの前衛に位置するナイフピークの南壁に入ったクラックです。
現在7つのクラック・ルートが開かれていますが、殆どがワイドの要素を含んでいて、wildです。
その中で、レイバックを駆使する”夢のカリフォルニア”はスポーティなイメージがあって、長い間、
僕の心を捉えていたートの一つでした。

1P目、chuリード。5.10-の美しいフレークが10mくらい続きます。
寝てるように見えましたが、スタートしたら、パワー全開でした。
2つキャメをとったあとフォール。これで怖さが消えました。
あと2つありがたいキャメ#4と、トライカム#7をsetして気の抜けないオフィズスから、ビレイ点へ。
レイバックは右引きなのに、どういう訳か右手でカムをsetしないと、バランスがとれず、つらかったです。
腕が張ってしまったので、2P目をpikaにゆだねました。
ここは快適なハング(5.7)からハンドクラック(5.7)を抜けて、外傾テラスのビレイ点へ、20m。
3P目、1P目同様の美しいフレークで、上部がハンドのコーナーになっています。
2P目のハング越えのポイントから見えたこのラインは、日本離れしていて非常に印象的でした。
pikaは、出だしのオフィズスに少し手こずりましたが、フレークのレイバックをこなし、コーナーを使って巧みにレスト。
抜け口のハンドを持ち前の粘りでうまくこなしてオンサイトしました。
でも、本人は中間部に2本リングボルトがあって、これにクリップしたことに少々気がとがめていたようです。
(大きなカムのなかった頃は、他にプロテクションは取れなかったんでしょう)

ビレイ点のすぐ上が、ナイフピーク肩のテラス。
大ヤスリは目前ですが、手前のルンゼ状広場にいったん5mラッペルします。
大ヤスリ側の簡単なクラックからチムニーへ入り(Ⅲ+、20m)、
2ポイントのエイドで大ヤスリのテラスへ。
瑞牆のピークや、登山道を行き交うハイカーのおじさん、おばさんたちのあたたかい(?)声援にマメに手を振りながら、
恐ろしいスピード(20分!)でpikaが大ヤスリの先端へ(40m、A1)。
20年前の”聖子命”は消えていた!!(これ分かるひと、いるかな?)

経歴不明のビナ一個で、ラッペルするのは気が進まず、コングの”人食いビナ”をドネーション(これも25年モノだけどね)。
大テラスからは北側(本峰側)に15mほどのラッペル(しっかりした支点あり)で登山道に戻りました。
取り付き着13:00過ぎ(正確な時刻は忘れちゃった)。
予報はあまりよくなかったけど、時々日も差し、概ね暑からず寒からず。

ケイタイから下界はどこも大雨(アフガンには爆弾の雨)という話が伝わってきました。
僕達は今日もラッキーなクライミングができました。僕達は好きなことやっていられる世界にまだいます。
でも、そうではないひとたちが大勢いることが、いつになく気がかりになりました。

以上

追記>下山途中で、なんとオコジョと対面。実物をこんな間近で見るのは初めてで、感激しました。

9.29.2001

奥日光ハイキング

奥日光ハイキング
冠水した小田代原を訪ねる
 
松倉一夫
 9月29日、土曜日に、奥日光の小田代原に行ってきた。今年は台風の大雨の影響で、
湿原に満々と水がたまっており、これまでに見たことがない珍しい小田代原の姿に触
れることができた。
 自宅を朝5時40分出発。まだ本格的な紅葉シーズンは迎えておらず、渋滞もなく赤
沼茶屋には7時20分に到着。駐車場はすでにかなりのクルマが止まっており、奥の方
に駐車スペースを見つける。
 身支度を整えて7時25分に出発。ミズナラの森は所々黄色く色づきはじめているが、
まだ二分といったところ。途中、戦場ヶ原展望台から草紅葉と太郎山を展望。周囲が
カラマツ林になると小田代原も近い。鹿よけの電気柵の内側へ回転扉を抜けて入る。
時計回りに進むと、じきに電気バスが走る車道に出る。
 話に聞いたとおり、まるで湖のように湿原が冠水している。車道脇の斜面には写真
愛好家が4人ほど、一本のシラカンバ、貴婦人や湿原に光が射し込むのを待って三脚
を立てている。高い位置に上がると、水面に映り込む木々が美しい。まさに水鏡その
ものだ。それにしても、これほど冠水してしまって高山植物のダメージはどれほどか
と心配になる。夏場はホザキシモツケやハクサンフウロ、野アザミがきれいだ。
 写真を数枚とり、車道をたどること5分ほどで、8時30分、小田代原のバス停前に
到着。再び回転扉で電気柵の内側に入り木道をたどる。冠水は木道の際まできており、
木道がなければ先を進めないほどだ。
 進むに連れ、男体山や大真名子山、小真名子山、太郎山がよく見えてくる。紅葉し
始めた木々が水面を挟んで上下にシンメトリーを描くようにくっきりと写っている。
 小田代原の最奥まで進むと、水もなくなる。笹原とススキ、草紅葉が美しいグラデー
ションを見せ、その向こうに貴婦人と男体山が映える。
 回転扉で小田代原を抜けると、泉門池へと向かう。途中、大きな沢状の切れ目が現
れる。以前はそれほど深くなかったが、今回の大雨で削られたのだろう。幅は1mほ
どだが、深さは3~4mありそうだ。
 しばらく進むと、大きなこぶの目立つミズナラの大木が現れる。ここを過ぎるとゆ
るやかに下っていき、じきに分岐となる。左へと1分ほどで泉門池となる。地中から
湧き出す小さな池にはマガモが悠々と泳いでおり、男体山が望める。テーブルとベン
チも用意されており休憩にちょうどいい。まだ9時40分と早いが、朝飯も少ししか食
べていなかったので、ここで昼食とする。おにぎり2個とミカンを食べ、9時55分、
湯滝へと向け歩き出す。
 整備された木道を進むと、じきに湯川沿いとなる。ゆるやかな流れには釣り人がけっ
こう入っている。20分ほどで分岐となる。湯滝へは左へと橋を渡って進むと1km、まっ
すぐ湯川沿いに進むと400mとの案内。左へと橋を渡る。橋から正面に小滝が望め、
釣り人が中に入り込み、竿を振っている。
 一度小さく登って、ミズナラの森を行く。途中、直径1m50cmはあろうかというミ
ズナラの巨木に出会う。このあたりのマザーツリーといったところか。さらに進むと、
右下に見事なカツラの巨木が見えてくる。根元から枝分かれした姿がいかにもカツラ
らしい。ここから1分で湯滝だ。10時33分着。
 展望台から湯滝を眺め、茶屋の前を抜け、赤沼方面へと進む。400mで小滝の脇
を通り、先ほどの分岐だ。往路をたどり泉門池に戻る。ここから戦場ヶ原を抜け、赤
沼茶屋へと向かう。ミズナラの森を抜けると、左手に男体山、大真名子山、小真名子
山、太郎山が広がり気持ちのいい木道歩きだ。駐車場には11時35分着。
 時間も早いし、他を少し巡ろうかとも考えるが、かなりクルマも増えている。いろ
は坂の渋滞を考え、下ることにする。途中、日光市内のやしおの湯で汗を流し、午後
1時半過ぎに帰途につく。帰りはいつもながら、日光杉並木の道を通り、鹿沼ICま
で走る。杉並木は規模こそ小さいが、アメリカのレッドウッドハイウエイを彷彿させ、
とても気に入っている道だ。帰りも渋滞に会わず、4時過ぎに帰宅。

9.08.2001

西湖の岩場開拓10回

サイコの岩場 マイ・ゲレンデ
  サイコのトポはこちら
 
9月8日
池の内潔 汽車
小屋から小1時間。西湖のキャンプ場に近付くと青空がのぞいてきた。小屋のあたりは小雨だったのだが、あのあたりはいつ
も天気がわるい。
突き当たりに車を置いて林道を10分、樹林帯のなかの急なクライマー道をあえぎ登ること10分。明るい岩場の基部にでる。
鷲の巣(とうのす)岩とか言われていると古いガイドブックに書いてあったが詳細は不明。
正面に大きなスラブがあって、その右に小沢をはさんで岩塔がそびえる。岩場は南面にあって、日が当たると暑いくらいだ。
1時ころから登り始める。
西湖が光っているのがみえる。富士山も見えるらしいが、台風接近の今日は厚い雲の中だ。
スラブ壁を交互に登る。
5級、5.9、10a、10aと勝手にグレードをつける。
リングボルトが多いがところどころに新しいボルトもある。終了点はよく整備されている。ボルトを打ちかえると安心して登れ
ると思う。
小谷のアウトドアスクールのスタッフ5人が登ってきてトップロープで研修?を始める。運動靴。全員。登るのは女性スタッフひ
とり。
ぱらぱらとしてきそうなので4本でおしまいとする。
スラブ壁には10本ほどルートがあるようだ。広沢寺ゲレンデの倍の大きさか。
岩塔のほうは2ピッチあってほんちゃん風のようだ。
先週ハーフドームを登ってきた池の内氏は日本的な岩場に感心していた。
半日クライミングが楽しめるのがよい。こんどカラファテでボルトを買ってこよう。
by kisya

9月23日
member おまた かわさき 汽車
雲ひとつない好天。初冠雪の富士山が素晴らしい。
朝飯をゆっくりとりサイコ方面へ。11時には岩場の下にいた。
前回トライできなかった正面壁の左2本を登る。
それぞれ30メートルあって、左が10b、右が10a,スラブである。
リングボルトが打たれていてルートは明瞭。50メートルロープだと足りない。
懸垂は2pになる。
午後は右壁の前回登った5.9と10aを登る。おまたさんが5.9を初リード。
正面壁には都合6ー7本のルートがあることになる。
ノーズダイレクトともいえる正面ルートがあいているようでここにボルトを打ってみたいものである。
日が傾いてきて富士山がますます素晴らしい。サイコも。今日は一日中雲が湧くことはなかった。
まれにみる初秋の好日であった。5湖の観光エリアはマイカーの洪水状態のように見えた。

サイコ3
ボルトを打った
9月30日
メンバー いけのうち、きしゃ くろ

午後から雨になるという。いかにもそのような気配の朝である。
あり合わせのボルトが10数本ある。ペッツエルの10ミリ径60ミリ長のものである。サイコゲレン
デにぴったりのものだ。11時過ぎに岩場についた。
おっと、といういけのうちさん。ハーネスを忘れた、とかでシュリンゲで自作する。
あいている正面ダイレクトをトップロープで登りボルトの位置を決め、ぶらさがりながらあっという
間に5本を打つ。ふたりが交互に登って新ルート完成。ノーマル右5.9としよう。先週おまたさんが
登ったノーマルは5.9というのはまちがいで先々週5@級としたもので、ま、5.7とでもして
おくのがよいかもしれない。いずれ要所のボルトをペッツェルに変えよう。
ノーマル左は10a.。いけのうちさんが錆びたリングボルトのかわりに3本新打ちして整備。そのころには小雨となった。
あと30本ほどペッツェルボルトが必要かもしれない。

サイコ4
メンバー いけのうち なべ 汽車 ひろみ くろ まいら
10月6日
先週まであったアプローチの鉄橋がはずされていて、山道を少し歩かなければならなくなった。
土曜日とあってゲレンデはにきやかだ。企業研修生を連れた小谷の学校がきていた。ルートを登ると拍手
がわくのがへんだと思っていたのだ。あっというまに去る。どこかの山岳会10人ほどもきていた。
「ザイルダウン!」
とか言っていた。中年と若い女性たち。下のキャンプ場に滞在しているらしい。リッチなオートキャンパーでも
あることがあとで分かった。
正面左の2本を整備した。9か10a。どちらも30メートルほどの長いルート。間にもう一本ルートがある。コ
ケっぽいので手をつけなかった。あっと
言う間に時間がたって暗闇の中を下山。夜なべちゃんがやってきた。今夜のメニューはトン汁と野菜炒め
10月7日
昨日とおなじメンバーが岩場にいた。さらにボルダリングのマットを持った若者グループもいて大賑わい。その
うち白人グループもやってきて岩塔のマルチを上りだした。
正面の小ハング直上にボルトをうつ。5本のルートがぴかぴかのfixe(イタリアの金具)で整備されたことになる。岩塔ルートは
3pほど。昨日も今日もパーティがとりついていてまずまず安定しているようだ。アルパインクライミングのよ
うで面白そうだ。こんど登ってみよう。あちこち登った。チキン照り焼きとごーやちゃんぷるを作る。
10月8日 
ヒロミさんとマイラ(犬)がやってきた。ロープをはったところで雨となり敗退。予報よりやや早い雨の訪れで
あった。クロとマイラが仲良くあそんでいた。吉田ヤナセ向かいのうどんを食して解散。


サイコ5

10.13
ikenouchi endo kisya くろ
素晴らしい秋空の日。のんびり出て取り払われた橋にかわる回り道をかまなたで整備
しながら岩場には昼着。誰もいない。
左エリアの三段ハングとその左のダイレクトを整備する。トップロープで試し登りし
てボルトを打つ。池ノ内枯れ木がおれてずこっけるハプニングあり。三段ハングは完
成。イモにで酒盛り。
10.14
ikenouchi endo nabe kisy くろ
今日も絶好の秋日和。岩場には今日もだれもいない。風もなくおだやか。湖にはボー
トやウインドサーフィンが浮かぶ。
なべちゃんがきて昼前に全員集合。左エリアの右既成ルートを登る。見た目より難し
い。10ありそう。左ダイレクトにトラバースしてボルトを打とうとしたらバッテ
リー切れであった。昨日バッテリーを充電するのを忘れたため。ここは10びーの予
定。池ノ内の三段ルートをみんなで登る。1
0しーはあるか。下から見た感じよりもぼろぼろの岩であった。汽車オンサイト。
左ダイレクトのとなりのハングルートを試し登りしたいけのうちいわくここは11あ
りとのこと。掃除する。


サイコ6
いけのうち 汽車 クロ
10.27
絶好の秋日和である。富士山は紫色に輝き、てっぺんあたりは何度目かの雪で薄化粧している。近所の黄葉はカエデの類か。透過した光がやわらかい日差しを庭におとしている。葉形はカエデのようだけれど、黄色くかわるカエデもあるのだろうか。垣根のあたりのドウダンツツジは真紅に色をかえて今がいちばんよいときのように見える。風はいくらかあるが、陽気はぬくぬくとしていて、こんな日ならだれでも幸せな気持ちになれるにちがいない。クロは、朝日をあびてベランダにべったりと腹をつけてうつらうつらしている。敷物になってしまったようだ。いまがいちばんよいとき、と思っているにちがいない。だれでもクロのように考えられれば人生は言うこと無しだ。
作りおきの雑煮スープに七輪でもちを焼いていれる。
夜中に到着したらしい池のうち氏がのんびり起きてくる。手酌で深酒をしたのか、ああーとかううーとか言っている。
朝飯をすませ、クライミングの道具をガチャガチャ言わせて整理し、電動ドリルのバッテリーを充電し、そういえばいまのうちにやっておこう、と水道管に凍結防止のヒーターをまき、そういえばこの不凍栓もと思いつき、かがまなくても開け閉めできる孫の手方式のハンドルをとりつけ、してやったりとその成果をよろこぶ。畑に立って、冬も近いというのにいまだ未成熟な大根たちを、この後どうしたらよいものか、などと考えたりしているうちにいよいよ日が高くなってきた。
「そろそろ出かけようか」と車のエンジンをかける。クロが飛び乗ってくる。
予想に反してすいすいと湖畔の観光道路をドライブして30分ほどでサイコの駐車場に到着。いつものように急な山道を大汗かきながら、岩場の基部につくころには11時になっていた。クロも水筒の水をがぶがぶと飲む。
今日の仕事は新しいクライミングルートを作ること、その3である。先週のうちに大体見当をつけておいた岩場上の仮想のルートに安全確保用のボルトを打ち込むこと。そうすることによって、だれでもトライすることのできるピカピカのクライミングルートが完成するのだ。朝方用意した電動ドリルは充電式のバッテリーを使う野外用で、ボルトの穴を岩にあけるためのもの。重い思いをしてここまで持ち上げたのである。
あまり人の世に知られていない事実についてお伝えしたい。
地表部分の堅い岩石が露出して絶壁となっている自然地形が国内あちこちに存在する。一般には岩場とよばれるのがそれだ。そしてそこが登山道や林道の近くであるのならば、そこには必ずといっていいくらいクライミングのルートが作られている。なん十年も昔から日本中の岩場にクライミングの愛好家がルートを作ってきた成果がそれである。そのつもりでそれらしき岩場を見あげれば上にむかって一列に延びるボルトやハーケンなどを発見できるはずだ。それがクライミングルートである。一般の人の知らない事実であろう。
岩壁があればそこでロッククライミングすることが可能だ。ただしそこがぼろぼろの崩れやすい岩場だとクライミングを楽しむには危険すぎる。落石などの心配のないしっかりした岩場を発見したら、土や泥などでを落し、コケなどは剥がして、金ブラシでクリーニングする。その後、安全確保用のボルトを打ち込んでルートとする。これがロッククライミングのルートを作るということの必要充分な説明である。
作られたルートを初めて登るのが初登攀。初登攀するのは普通はルートを作った本人であることが多い。初登攀した人はそのルートとそのグレードを世界中に発表できることになっている。そのルートに自分の好きなように名前をつけることもできる。自分の子供に名前をつけるようなものである。そういう伝統がロッククライミングの世界にはあるのである。
日本中の岩場にクライミングルートが作られてしまった現在、もう新しいルートの制作は不可能かといえば、それがそうでもなく、いまでもあちこちで愛好家たちは新しいルートを作りつづけている。辺境の岩場や林道から遠く離れた岩場、山の上の岩場など、あるいは有名な岩場の脇や、日の当たらない裏側、にいまでもクライミングルートはつくりつづけられているのである。

今回のわれわれプランは、知るひとぞ知る古い岩場、山梨県のサイコ湖畔にあるサイコ、そのメインゲレンデの脇や日の当たらないその裏側、あるいは既成ルートと既成ルートの間に、新しいルートを作るというもので、およそ10本のルート制作が計画されている。われわれは先週と先先週とその前の週、さらにその前…、すでに5本のルートを作ってきた。
今日はぼくが1本、池ノ内氏が1本、屏風のようにヨコに広がるサイコの岩場のもっとも西の端に、新ルート完成のためのボルトを打つという胸おどる日なのである。湖は銀色に輝き、そびえる巨大火山は反逆光の美しいシルエットをひろげている。さきほども申し上げましたが、すでに先週のうちに仮想のラインは考えられていて、コケなども落とされ、金ブラシとハンマーで、指や手に危害を与えそうな粒子やもろい岩角などは処理されていて、あとはボルト打つばかりの状態。サイコのもっとも西端にあるこの新エリアは、本日、われわれの到着をいまや遅しと待っていたのである。
ドリルやボルト、ハンマー、そのほかいろいろを身につけて仮想ルートの最上部へ登る。ロープにぶらさがりながら、ドリルで岩を穿ち、ボルトを入れて、レンチで締める。錆びとめをほどこしたボルトが灰色系稀褐色の岩場に銀色の星のようにキラリと輝く。岩壁のすぐとなりでは作業用の革手袋をはめた池ノ内氏がもう一本のロープにぶら下がりながら金ブラシで岩を磨くことに余念がない。声をかけるが返事がない。金ブラシ作業に全身全霊で没頭しているのだ。けっこう変わっている人かもしれない。
ロープ伝いに下りながらたちまち7本のボルトを取り付けた。新ルート完成。
ドリルを池ノ内氏に手渡し、こんどは彼がとなりの仮想ルートにボルトを打つ番だ。再び最上部に登り返し、同じようにドリルで穴をあけボルトを埋め込んでいく。
ぼくは折りたたみのノコギリとカマを出して登り口付近のヤブやら草などを刈り込んで、整理し、あまつさえ整地まで始める。
電動式ハンマードリルの機械的な轟音が岩肌にこだましている。池ノ内氏もまたたくまに4本ボルトをとりつけたようだ。見上げると5本目の穴をあけようとしている。そのときドリルが急にか弱い声に変わる。
「ちっ。バッテリー切れだ」岩場を足蹴にして悔しがる池ノ内氏。あと2本で新ルート完成だというのに。一度小屋に戻って充電しないかぎりドリルはもう動かない。
岩場で地団駄する池ノ内氏に言う。
「ま、しょうがない。残りの2つのボルトはまた次回」
しばらく休憩とする。クロは山が好きだ。あちこちくんくん鼻をならしながら散歩している。ケダモノの匂いがするのだろう。チーズと水をあげると、こんどはごろりとヨコになって昼寝を始めてしまった。全山錦秋、落葉して明るくなった森の中へは日が差し込んで下草の紅葉はいっそう鮮やかだ。
今日始めにぼくが作ったルートを登ることにする。ボルトが打たれたから安全に登ることができる。ロープをハーネスにつけてまず僕がトライ。安全は確保されているとはいえ、ボルトより上部で落ちればそれなりの距離を墜落するわけだから慎重に行く。池ノ内氏は下でロープを握りぼくの動きに合わせてロープを繰り出している。
「……」
「……」
二人とも声はない。
いくつかの手がかりや足がかりはボルトを打つ時に確かめてあるから、その点安心だ。難しいと思われるところの動きはその時に研究もしてある。
下からみるとカンタンに見えたところが意外とむずかしい。ぼくをロープで安全確保確保している池ノ内氏が両足の間から小さくみえる。

足が震えるような難しいところが2箇所ほどあった。なんとか墜落せずに5本目のボルトを越えると、見上げているはずの池ノ内氏は岩の下で見えなくなった。
息があがっている。最後のボルトにロープをかけると急に傾斜がおちて、あとはカンタンに終了点に到着した。
一息ついて振り返ると富士山が大きい。湖には小さなボートがなん十も浮かんでいる。へらぶな釣りの舟のようだ。
ロープ伝いにするすると下る。
「やったね。オメデトウ」池ノ内氏がうれしそうだ。
つぎは池ノ内氏が登る番。
ロープをハーネスに結びつけながら聞いてくる。
「グレードは?」
グレードは難しさのことで、5から,15まである。15が現在世界でいちばん難しいクライミングルートのグレードである。この数字は世界で通用する基準なのである。
「10くらいかな」ぼくが答える。
池ノ内氏がぼくよりもあきらかに慎重に登りはじめる。慎重だが迷いはない。ゆっくり確実の登っていく。ボルトに正確にロープをかけながら登っていく姿に見ているほうも安心感がわいてくる。
さすが永年世界のあちこちでクライミングを経験してきたエキスパート。核心の部分をあっさり越えて姿が見えなくなった。しばらくして「オーケー、登ったよ」の声が頭上から聞こえてきた。
池ノ内氏が再びロープにすがってするすると降りてくる。
息を弾ませることもなくニコニコ顔で言う。
「グレードは10だね。いいルートだよ。名前はなんて付けるの?」
まだ考えてない。「こんどまとめて考えようよ」と答える。
日が傾いてきた、湖が金色に輝き始めている。急に冷えこんできた。今朝、水道管にヒーターをまいたのは正解だった。
店じまいの荷物をまとめながら池ノ内氏がいう。
「もう一回だね」
バッテリー切れでまだ2つのボルトが打たれていない。来週もまたここで仕事しなければ。
「さっき観察していたら岩場のもっと西端にもまだルートが作れるみたいだ」もう仮想ルートを考えているらしい。再来週の仕事もありそうだ。
それにしても、池ノ内氏は都会ではどんな仕事をしているのだろうか。なにしろ、ここ1.2ヶ月というもの週末という週末はこの岩場で過ごしているのだから。彼の仕事はともかく、クライミングルートを作るということが大好きな人であることは間違いないようだ。クライミングルートを作る仕事はもちろん一銭にもならない奉仕のような仕事なのだから。時間とボルトなどすべて自己負担。好きでなければできない土方仕事である。好きだとはいえ、先先週など、ボルト打ちの最中、つかまっていた枯れ木が折れて数メートルでんぐりかえって墜落するハプニングまであったのだ。ルート作りは命がけなのである。池ノ内氏はやはりちょと変人かもしれない。
古いロッククライミングゲレンデ、サイコ。クライマーが訪れることもまれな忘れられたゲレンデ。新しいルートが作られることによって、またクライマーが少しずつやってくるのかもしれない。
あたりが暗くなってきた。クロがしきりに帰りたがっている。秋の夕暮れはつるべおとし。突然ひらめいた。そうだ、今朝かた、頭を悩ませた畑のいじけたダイコンは明日にでも収穫してタクアン漬けとしよう。名案に満足して暗くなりはじめた急な山道をかけおりた。


サイコ7
11月4日
いけのうち きしゃ くろ
昨日は駐車場までやってきたら雨になった。
駐車場の周辺はオートキャンプ場と別荘地になって
いる。サイコ一周のドライブをして帰荘。おそらく駐車
場のあたりは根場という集落だったようだ。小学校の跡地をさが
すがいまいち判然としない。古い石垣の上にたつあたらしめの別荘が不
釣合いに見える。今根場というのは、対岸の西湖民宿村となっているところ
を言うらしい。46年の水害で集落の名前ごと引越ししたらしい。民宿村ははたし
てそのような立地のところにあった。区画整理された敷地に民宿がずらりと並んでいる
。古い土着の民家というものは一切ない不思議な村である。無理やり作られていると言う感
じであった。ブリダイコンを作ってみる。かなりの味であった。ミネストローネスープが大量に
できてしまった。増量したカレースープもひとなべできてしまった。なべ長者である。

 さて昨日とはうってかわった秋日である。富士山は7合目までたっぷりと雪を積もらせた
。根雪になりそうだ。紅葉は湖畔に向かって駆け下りている。
バード10bを登ってロープをたらし、11のルートにボルト
を打ち足す。いけのうち、汽車が登ってオンサイト
。そのバリエーションルートに3本を打ち足
し一本とする。トップロープでトライし
たがここも11ありそうだ。リードし
たくないルートであった。
北北西に進路をとれの
2p目を偵察するが、
ルート作りはたいへん
そうだ。また次回考え
よう。
ルートが作れそうな所
はおおむね作ってしま
ったということか。

サイコ8
11月11日
金森 柏 いけのうち きしゃ くろ 

快晴。前日の雨で富士山4合目まで真っ白。秋空に純白の化粧が映える。
西湖自転車レース開催とかで時差的通行止めがあり、それでも11時過ぎに
は岩場にいた。地元山岳会の救助訓練が開催されていて十数人がいた。ウイ
ンチまで設置している。
未登の緑の森エリアのアルパインルートの2pを登る。前回のぼった1pと
あわせるとリッパなルートである。正面スラブの5.8を登る。5.10といって
もおかしくない。
金森夫妻はヒッチコック10bなど数本を登る。
夕方、未登の岩塔2pを登る。1pはエプロンで、2pは40メートル。交
互に登る。もろい岩壁でヒヤヒヤのアルパインルートだった。
夜は、5.13鍋とチキンクリームシチューで夕食をとりました。


サイコ9
11月16日
いけのうち きしゃ くろ かとう

小淵沢のactメンバーのかとうさんがやってきた。先週は足元まできて岩場を発見できず
合流できなかった経緯がある。
小屋の朝はマイナス5度まで下がった。秋色は湖畔にまでやってきた。晩秋である。
昼から森の緑のアルパインの左の直登ルートを整備する。
トップロープで登ってみる。出だしのハングはガバがあって容易。中間部は快適。最後の
フェイスが強敵。フェイスはコケもあって大掃除しないといけない。終了点を2段階にする
とよいかもしれない。下部は10a,フェイスは10cはありそうだ。
夜は、イタリアンでワインがおいしい。

11月20日?
ちゅう、けんじ
全部は登れなかったけど、感想などを書きます。

・アプローチ
けんじさんが来てくれました。Pから屋根岩みたいに全貌が見えて、思っ
ていたよりもでっかいので驚きました。
Pから30分強かかりました。最後の堰堤からの登りは、落ち葉が滑って
結構シンドイですが、fixロープでずいぶん助かりました。

・取り付き
割と安定していて、いいです。景色抜群。日当たり最高。申し分ないです。

・ルート
3つの壁をそれぞれ登りましたが、全体的に低レベルグレードほど辛目に
感じました。
一般にグレーディングは、要素が整理されていませんし、クライマー間で
の明示的なコンセプトもありません。
ゆ~じがクリプトナイトをRPしたとき、14dはないということを云い
ました。
彼でさえも、そのときの主観で一過的にグレーディングするわけですから
、公平な評価はかくも難しいのだは思います。
でもスポーツルートの開拓者は、今後取り付くクライマーのレベルについ
て充分に注意深い必要があると、僕は思います。
だって、危ないですから。

以下、登ったルートごとのコメントです。右の方から。

①ノーマンベイツ10c・・・1ポイントのみ。限定は気になりません
でした。
②アンソニーホプキンス7・・・おもしろいです。、5.8に感じまし
た。5.9でも文句ないです。
③ジャネットリー8・・・とってもおもしろい!! 5.9に感じまし
た。10aとしても文句ないです。出だしにもう一本ボルトがあっても
良い
と思いました。
④サイコ9・・・ルート名通り、異常に怖いルートでした。けんじさん
には薦められませんでした。ボルトをもう3本ほど足して欲しい気がしま
す。グレードは5.9なのかもしれませんが、修正が恐ろしくて、10
aを感じました。壁が思いっきり寝てますので、どのクリップに失敗して
も、ロングフォールになってただごとではすまない気がします。
⑤ヒッチコック10b・・・とってもおもしろい!!ここのところ甲信
の岩場へばかり行ってますが、それらの水準と比較してもこのルートは
抜群
に高品質です。けんじさんがぎりぎりでOSしたことからも適正グレー
ドだと思いました。発表されれば人気ルートになりますね。
⑥ダイヤルMを廻せ11a・・・パワフルでおもしろい。適正グレード
だと思いました。
⑦引き裂かれたカーテン11b・・・チンケ(ごめん!)ですけど、見
た目よりもおもしろかったです。レイバックに入るときにもう一本ボル
トが
欲しいなあ、って思いました。あれで落ちると、下の寝たところにたた
きつけられますね。上に立ちこんだあとの微妙なムーブが核心だと思い
ます
が、これはどっかの11bとそっくりでした。従って適正グレードかと
思います。

※一応⑦だけ1テンで、あとは全部OSできました。
左の壁は結構掃除も大変だったのじゃないですか? 大変な労力だった
ろうと思います。ごくろうさまでした。
まだまだ開拓の余地もありそうで、楽しみです。僕にもお手伝いさせて
ください。

9.06.2001

坊抱き岩

坊抱き岩
蜂がいたた

。。。
送信者 : "丸山直樹&明子" 
送信日時 : 2001年9月6日 11:01
>  昨日、直樹の友人に連れられて坊抱岩に行って来やした。
> 標高1,000m程なので、まだまだ登れるんじゃないかな。
> ただ、大きなスズメ蜂の巣があって、ブンブン飛び回っているのが
問題。
> 上山田温泉街から車で5~10分程。後は取り付きまで、歩いて1
5分ぐらい。(急登)白馬から、1時間30分ぐらいでした。
> 
> 登ったルート
> <Aボルダー>
>  ・カサブランカ ★★ 5.10b
>  ・スローダンシング ★ 5.10a
>  ・レインワルツ 5.9  
> <Bボルダー北面>
>  ・湯の街旅情  5.7 ★
> <Eボルダー>
>  オー・ルージュ 5.10a ★★★
> 
> 今回は初めてのエリアだったので、師匠の教えに習って、★の付
いているのを選んで
> 登りました。私的に判断すると、グレードは妥当だったと思いま
す。
> でも連れて行ってくれた直樹の友人(ヨシノ君)によると、<ツ
タエリア>や<イワタケエリア>は辛目だと言っていました。
> 全体的に薄っかぶりで、ホールドは角張っているんだけど外傾ぎ
み、パワーの要るルートが多いです。
> 特に昨日登ったルートは、殆ど出だしがかぶっていたので、力使
いました。
> 今年は外で3日しか登っていません。やっぱ体が強ばっちゃって
上手く体を使えませんでした。

9.05.2001

有笠山

有笠山
総員もち高し
 
9月5日(水) メンバー 石寺 他REIスタッフ 冶部、上田、阿部 計4名

前日から雨で、場所の変更も考えたが、前夜泊でとりあえず行ってみることにする。
21:00にREIを出て、0:30頃到着。途中かなり迷う。 

西口登山道の入口でキャンプ。翌朝7時起床、全員モチベーションが高い。
偵察にいった仲間が、前傾壁は乾いていると言うので、サンダンスエリア
に行く。アプローチは良く、10分くらい。 

広い広場に圧巻の前傾壁。 右奥の手ごろなルートは濡れており、左端の
苔の庭 10Bから始める。 何とかオンサイト。言われるがままに、二つ星
大地讃唱11bにトライ。核心のホールドが濡れており、2本目のボルトで敗退。
クライミングスタッフの阿部さんが大地讃唱、Please jam me. 11Cをオンサイト。
 
昼食後、古谷ロックに移動。わずか2分で着く。 ここも小さいがすばらしいエリア
で、岩場から里山の風景が美しい四万温泉が一望できる。 三ツ星、夢の浮橋
11Aをトライ。皆に励まされて、とにかくルートを抜ける。 クタクタ。
REIクライミングスタッフがいる今回の有笠山はとにかく、上まで登るという暗黙の
決まりがあり楽しい。

その後、西口駐車場に戻り、大休止。 フロントウォールと偏屈岩に向かう。
西口から5分くらい。 ここも楽しそうなエリアだが前傾壁以外はずぶ濡れ。 
ねずみ返し 10B、リスのえさ箱10C、ハッピーマンデー 10Bを皆で登る。
ねずみ返しをOS、ハッピーマンデーをREDしたが、ルートによってグレードは辛い。
 

結果よりも、モチベーションの高い仲間と登れて、すがすがしく家に帰えれた。

帰りは、吾妻温泉に入り、大衆食堂でソースカツ丼大盛りを食して帰りました。
石塚さんの縄張り群馬県の岩場なので、お子様が誕生する前にいっしょに行きましょ
うね。

今回自分が取り付いたル-ト

苔の庭 10B  OS  
大地讃唱 11b  
夢の浮橋 11A 
ねずみ返し 10B RP
ハッピーマンデー 10B RP

石寺

9.01.2001

北アルプス全山縦走

北アルプス全山縦走
台風が来た

。。。
8月31日~9月10日
石塚竜夫

8月31日 横浜 > 上高地

上高地への夜行直行バスの予約が取れた。これで一安心。横浜SOGOの第一駐車場が見
つからずに焦るが、何とか間に合った。車中はちょっと寒かったが、少しでも睡眠を
取れるようにウトウトする。

9月1日 上高地 > 涸沢 (テント泊)
7:00上高地 > 8:00明神 > 9:00徳沢 > 10:00横尾 > 13:30涸沢

 6:00上高地着。焼岳に行こうか迷ったが、今回はパス。良く考えたら日程に余裕
がない。焼岳からの稜線歩きも不安。アークボラ65が満杯で35キロから40キロくらい
の重量。入りきらない食料はスタッフバッグに入れ、トップリッドにストラップで固
定した。
 最初はハーネスが肩に食いこんでツライが、バックレングスを最大にしたら良く
なった。おれって胴長なんだなぁと、しみじみ思う。
 荷物は重いが、ほぼコースタイムどおりに歩けて一安心。横尾のキャンプサイト
は、芝生が綺麗で泊まりたい気持ちが高まるが通過。槍に向かう人多く、涸沢はテン
トも数えられる程度しかなかった。ガレたテントサイトにペグがなかなか効かなく
て、非自立式のテントはこんなとき辛い。
 14時ころからウトウトして、16:30に改めてテント受付。受付の兄ちゃんの、「が
んばってください」の声が嬉しかった。でも、スタートしたばかりなんだけどねぇ…
 涸沢小屋は清潔で、スタッフも親切。今度はニョーボを連れて来たいなぁ。生ビー
ルが格別に美味い。生800円、テント500円

9月2日 涸沢 > 奥穂高岳 > 北穂高岳 (小屋泊・素泊まり)
7:00涸沢 > 10:45奥穂高岳 > 11:30白出のコル > 14:50北穂高岳

 寒い。MTSのタイツを忘れたのだ。あれがあれば、暖かく眠れたのに…なんで忘れ
たのだろう?(後で、タイツの代わりに着替えのトレッキング用パンツを選んだこと
を思い出す。眠るときは重ね着、下山してからの着替え用としてタイツの代わりにこ
ちらを選んだのだ)
 4:00ごろ目覚めてしまうが、ウトウトしつつ涸沢を7:00に出発。だいたいコース
タイムどおりに10:15ごろ穂高小屋到着。ザックをデポし、トップリッドをウェスト
パックにして奥穂高岳に向かう。11:00ごろ頂上着。途中からジャンダルムが綺麗に
見える。槍も見え、行く先が…やや思い悩まれる。
 11:30に穂高小屋に戻り、北穂に向かう。弘前大の学生に、「これから北穂です
か?がんばってください」と、意味ありげに励ましてもらう。理由に気付いたのは涸
沢岳。垂直の鎖が下がっている。10m~12m… マジかよと思う。ストックをしまい、
ザックのストラップを締め直す。落ちたらおしまいだ…
 一歩一歩スタンスを確認し、チムニーをステミングで下る。ホールドもいまいち信
用できず、ニョーボの顔が目に浮かぶ。「こんなところで死んだらシャレにならな
い!」と思いつつもザックは岩にとられ気持ちは焦ってくる。切りぬけたと思った
ら、短いトラバースがあり、また垂直のクサリ…クライミングやっていて良かったと
思う。35kg背負ってのクライムダウンだ。
 ホールドが豊富なのは助かるが、どれも信用できない。ちょっと持っただけならOK
でも、荷重をかけると動き出す。荷物と体重で100kg近くになっているのだ。その後
も馬の背状あり、トラバースありで北穂には14:50ごろ到着。天候も崩れてきた。テ
ン場は南稜にあり、風雨の影響を受けやすい。装備を考えて小屋泊。営業小屋に泊ま
るのは、良く考えたらこれが初めての経験だ。今まではテント、雪洞、そして避難小
屋しか使ったことが無い。
 小屋泊は嫌だ(後日、針の木でかなり印象は良くなったが)。せまいスペース、蚕
棚に詰めこまれ湿った蒲団に寝る。沢山の中高年が、お互いになぜかライバル意識を
出して会話する。素泊まりで5,500円ナリ。こんな山行をしていたら、金がいくら
あっても足りないが、あきらめることとする。
 翌日の降水予報は午前50%、午後70%。南岳への大キレットはさらに危険度満点との
こと。しかもそれが連続する。どうしようか迷いに迷う。結局4:00に起きて天候次第
と決める。悪天であれば横尾に戻って槍沢を登り返す。無理は禁物だ。

9月3日 北穂小屋 > 横尾 > ババ平キャンプ場
5:30北穂発 > 7:30涸沢 > 10:00横尾 > 1:30槍沢ロッジ > 2:30 ババ
平

 4:00起床。天気は相変わらず。別パーティーの3人組は、霧雨・ガスの中を突いて
南岳に向かう。それを見ていて心は揺れ動いたが、冷静になるように努める。小雨の
中、涸沢に向けて出発。槍沢ロッジまで順調に進み、ニョーボと会社に電話で報告す
る。
 横尾からは薄日がちらつく。寂しいような気持ちを覚えて、良く考えてみると「も
う本当の意味でのソロ山行ができなくなった」と考えていることに気がついた。俺も
大人になったもんだ。
ロッジで受付をして、テン泊していると雨。シュイナードは健闘しているがやはり雨
は漏ってくる。まぁ仕方ない。下地の水はけが良いのが救いと考えよう(この時点で
は…)。明日はいよいよ槍、そして双六まで足を伸ばす予定。身体を清水で拭いたら
気持ち良い!今夜は快適に眠ることができそうだ。
 明日も目標は4:00起き。体重が減っているのをやや実感し始める。3kgくらいは
減ったのかもしれない。ウェスト横のダブツキが無くなったように思う。
 なんと夜半より豪雨となる。0:00から1:00頃には雷も激しく鳴り、一本ポールの
シュイナードの自分は、だんだんとドキドキしはじめる。これは避雷針じゃない
ぞ、、、早くどこかへ行ってくれ!雨漏りも、、、すごい。すべてがグショグショに
なりつつある。装備はすべてバックパックカバーを流用した巾着袋に突っ込む。ビ
ビーサックは無事だが地面を雨が流れはじめて、水路作りに追われる。

9月4日 ババ平 > 槍ケ岳 > 双六小屋 (テン泊)
6:00ババ平 > 7:00大曲 > 10:00槍岳山荘 > 10:30槍山頂 > 12:00千丈
沢乗越
> 15:00樅沢岳 > 16:00双六小屋

 4:00起床。雨の翌日の撤収には時間がかかる。6:00に出発。ほぼコースタイム通り
に槍の肩に到着。槍沢ヒュッテの少し下で日本猿の群れを見かける。ヒュッテから先
の登りがキツカッタ。肩の小屋では、取り壊しの準備が進んでいた。槍へは10:30頃
登るが展望はまったくなし。証拠写真のみ撮って、下山しようとする。そういえば、
と思って新田次郎の小説で想像を巡らせた北鎌尾根を覗く。うーん。夏ならまだし
も、冬季にこんなところを登るとは…想像を絶する世界に思いを巡らせる。
 11:00に肩を出発し、西鎌尾根へ。千丈沢乗越までは順調だが、それからが長かっ
た。ガスで視界が悪く、どれが樅沢岳なのかまったくわからずにいくつものピークを
延々と越えていく。本当の樅沢岳を登るときにはヘトヘトになっていた。双六小屋へ
は、コースタイムをややオーバーして入る。ハードな鎖場はなかったが、距離が長
かった。今日も小雨。
 今後の日程をチェックすると、予備日が無いことに気付く。穂高への2日間。それ
から横尾まで戻ったことで、親不知到着が16日になってしまう。明日からペースをあ
げて、本来の日程に近づけるか…それとも朝日岳までを目標とするか… やるだけ
やってみよう。昨日の夜、槍で聞いた話では台風が2つも接近しているそうだ。最悪
の場合は、白馬から下山するなどの対応も考えなければならない。

9月5日 双六小屋 > 鷲羽山 > 野口五郎岳 > 烏帽子小屋
5:40テン場 > 8:30三俣山荘 > 9:50鷲羽山 > 11:00赤岳(水晶小屋)
> 14:30野口五郎岳 > 14:50野口五郎小屋 > 4:00三ツ岳 > 4:45烏帽子小
屋

 小雨の中、撤収。昨日よりも早く起き、5:40に出発。今日は水晶小屋まで、できれ
ば野口五郎小屋まで行きたい。もし、烏帽子小屋まで行ければ遅れを取り戻すことが
できる。早起き、早起き…
 双六と三俣蓮華は、今回はあきらめて巻き道を通る。日程の遅れを取り戻さなけれ
ばならない。しかし、巻き道もアップダウンがあり意外と大変だ。ハイマツが茂り、
小雨で濡れた枝がパンツを濡らす。今日もレインパンツとオーバーゲイターが手放せ
ない。ブーツはすでに芯まで濡れていて、非常に不快だがしかたがない。靴下を腹に
抱えて、寝るときに着干しするのだが完全には乾かない。臭い。
鷲羽山への急登は、思ったよりも順調。久しぶりに天候が回復しつつある。鷲羽池が
キレイに見え、ガスの晴れ間から槍が時々姿を見せる。
 赤岳までも順調に足を伸ばす。水晶小屋には「北アルプスで一番小さな小屋」と看
板が。また、「労山会員の方は、宿泊受付のときに申し出てください」ともあった。
小屋番と少し会話する。「烏帽子までですか?」と聞くので、届く距離なのかと欲が
出てくる。野口五郎小屋はすでにクローズと聞く。どうするか迷う、が、とにかく
行ってみよう。
 真砂岳までが思ったよりも時間がかかる。それに、どれが東沢乗越なのか解らん。
あいかわらずのガスだが、晴れ間からの日差しが強い。今回の山行で初めて日よけ用
のパドリングハットを出す。しかし真砂岳手前でまたまた濃いガスが湧いてくる。野
口五郎岳の登りは、得意なザレた坂道となり、踏ん張りつつ登りつめる。
 野口五郎小屋は8月30日でクローズされている。時間はまだ余裕があるが、ガスの
為すでに夕方の雰囲気。毎日毎日こんな状況で、気が滅入ってくること甚だしい。一
服してから、早々に出発。三ツ岳までがとても長く感じる。相変わらず、どのピーク
が三ツ岳なのか判明しないまま登下降が続く。
 三ツ岳から先はザレ場の下りで、快調に足がでる。烏帽子小屋への最後の下りにさ
しかかる前には、烏帽子岳と南沢岳が姿を見せた。烏帽子岳は、ミニ槍ケ岳といった
たたずまい。インターネットで手に入れた山行報告を読むと、烏帽子から船窪までが
最大の課題であるとのこと。気が引きしまる。
 烏帽子小屋らしきものと(後ほどそうでないことが判明するが)ひょうたん池が姿
を見せる。なんと、ひょうたん池からテン場受付となる小屋まで標高差100mはありそ
う。やれやれ、荷物を置いて小屋まで行くかどうするかまようが、とりあえず担ぎ上
げる。小屋番は商売っけのありそうな親父。調子に乗ってビールを3本も買ってしま
うが、50円マケテくれた。
 烏帽子、南沢岳方面は、気を付けて行けば大丈夫とのこと。ちょっと拍子抜けだ。
水が1リットル200円だったので、買わずにMSRのミニ・ワークスで浄水する。まぁ
まぁ快適に2リットル以上の水をひょうたん池で作る。夕食を多めに取り、明日の朝
は行動食だけで速攻出発することとする。今日は疲れた。がんばった自分を褒めてや
りたい。

9月6日 烏帽子小屋 > 烏帽子岳 > 船窪岳 > 船窪小屋 (テン泊)
5:20烏帽子小屋テン場 > 5:45 烏帽子への分岐 > 8:30不動岳 > 11:20船
窪岳
> 1:45船窪乗越 > 3:45船窪小屋 (テン泊)

 3:50に起きる。真っ暗なので、キャンドルランタンとヘッドランプで出発準備。晴
れ、寒い。テントの内側は一部霜が付いている。久しぶりに寒くて目がさめた。裏を
返せば、朝晴れた日が久しぶりということだ。
 朝食は行動食で済ませて、手早く片付けたつもりだった。しかし、真っ暗なため手
間取り5:20出発となる。素晴らしい朝焼けと雲海。今朝はすべての荷物がザックに収
まる。今までトップリッドに縛り付けていたスタッフバッグ(食料が入っている)が
無くなり、単純に嬉しい。でも、その嬉しさを分かち合える人がいないのは寂しい
なぁ。
 ここ何日か、ニョーボのことを考えることが多い。これが終わって、「ただい
まー」と帰っても誰もいない部屋… そして耳垢掃除を自分でやらなければならない
こと… 
 仕事でいつも誰かと一緒にいると、時々無性に一人きりになりたくなる。でも、今
回の旅では、パートナーのいる素晴らしさを解ったように思う。
 今日の行程は、事前の情報どおりキビシイコースだった。「2度とやりたくない
ルート、ワースト3」を選んだら、必ず入るだろう。不動岳まではそこそこ快適だっ
た。コマクサの群落もあり、すがすがしい。いかにも人があまり入らないルート、と
いった雰囲気。高原状のトレールが続き、烏帽子山頂も花崗岩の岩塔が並びワクワク
する。四十八池(烏帽子田圃)も、趣があって「ここでキャンプしたい」と思わせる
ものがあった(もちろん禁止だが)。
 2299m峰までは良く晴れ、時々は槍方面にも晴れ間が出る。赤岳も、三ツ岳も見
え、しみじみとした余韻を感じる。ここから船窪乗越までがキビシイ。
 油断のできない崩壊した馬の背状。信用の置けないトラロープをたどり、グズグズ
に崩れる岩稜を巻いて行く。どれが船窪でどれが乗越かわからんくらい岩稜が連続し
て続く。針の木谷への分岐を過ぎてから、急にガスが巻き、雨が降り始める。思った
よりも本格的な雨となり、雨具フル装備した所で小雨に変わる…マーフィーの法則だ
な、こりゃ… 5分の急登で全身がずぶ濡れ。汗と小雨で中も外もビショビショとな
る。とっとと雨具を外し、最後の踏ん張りとするが、木の根を掴んでの急登下降が連
続。体力の消耗が激しい。
 テン場に到着してがっかり。急なはしごの真下にあり、小屋からも遠そうだ。荷物
をデポすることを考えたが、天候が悪化しつつあったのと「もしかしたら小屋から近
いところにもテン場があるかも?」という根拠の無い希望を元に担ぎ上げる。受付を
すませたが、やはりテン場はさっきのところとのこと…再度急な下降をしてテン場に
戻る。テントを張り終えたところでまたまた雨。今日も雨漏りとのやりくりが始ま
る。
 小止みになるのを見計らって水場に行くが、足場が悪く最後はロープを伝って水場
に到着する。
 水場から帰ったら雨がやんだ。なんだがアイロニカルな話だ。
とっとと飯を食って、寝る準備をする。飯を食い終わったら、またまた本格的な雨と
なる。今日もすべての物が濡れていく、あぁ。手足の爪を切って、寂しく寝る。

9月7日 船窪テン場 > 蓮華岳 > 針の木小屋 (小屋泊、夕食付き)
7:00船窪発 > 7:45七倉乗越 > 8:50北葛岳 > 9:30北葛乗越 > 12:00蓮
華岳
> 12:45針の木小屋

 今日は寝坊を決め込み5:00起床。スリリングな水場で給水し、7:00出発。行程が短
いので、のんびり休み気分で歩こうと思っていたが…あてが外れる。北葛への細かい
アップダウンで少々バテ気味。
 蓮華岳は中腹まで蓮華の大下りを登る。岩場の登行が続く。鎖とハシゴが連続し、
神経を使うルートだ。ガスが濃いが、雨でないだけましと自分に言い聞る。下方には
雲海。
 岩場が終わったところで(不幸中の幸い)雨模様となる。少々我慢したが、風雨が
どんどん強まり、今日も雨具で完全装備。蓮華山頂は風雨とガス。写真も撮らずに下
る。針の木小屋までの間で、雨脚がさらに強くなり全身ずぶ濡れ。コマクサの群落も
たくさんあったが、雨の為撮影ができなかった。雨具の撥水加工も限界となっていて
まったく水を弾かない。今日は小屋泊とする。到着は12:30。時間には余裕がある
が、横殴りの雨。
 小屋は清潔で、広々している。休憩室は畳敷きで、石油ストーブが燃えている。そ
れに!なんと!乾燥室なんてものがあった。涙がでるくらい嬉しかった。乾燥室のス
トーブに火を入れてもらい、装備を乾かすこととする。しばらくずーーーっとビショ
ビショだったブーツも、少しは乾燥させることができる。
 夕食も頼んだ。久しぶりにきちんと炊いた飯が食えると思うととても楽しみであ
る。
 外は雨風がさらに強くなり、小屋泊にして良かったとしみじみ思う。夕飯は大当た
り。3杯お代わりをする。分厚いポークソテー、ポテトとコンビーフの炒めもの、ア
ジフライ、、、旨くて泣けそうだ。ただ…小屋泊が続くと資金が持たない。明日は種
池にてテン泊だが、天候はビミョーなところだ。
 今日は雨の中歩きながらいろいろ考えた。転職活動のことや、ニョーボと、ニョー
ボの腹の中にいる子供の事。こうしているとき、会社がどうなっているかは、もうど
うでも良くなってきた。周囲のスタッフのことは気にかかる。一緒に仕事をしてきた
仲間であるし…でも、会社の持つ輝きは、すでに自分の中では失せつつある。
 夕方から天候は回復しはじめた。槍も見え、少し希望が見えてきた。親不知からの
縦走者が小屋に到着した。30歳。佐藤さん。N社の社員で、感じのいい人だ。N社もリ
ストラで出向辞令が出ることになっているそうだ。いろいろと情報交換をして、互い
に勇気付けあう。

9月8日 針の木小屋 > 針ノ木岳 > 爺ガ岳 > 冷池山荘(テン泊)
5:20針の木出発 > 6:20針ノ木岳 > 7:20スバリ岳 > 9:00赤沢岳 > 
10:00鳴沢岳
> 11:00岩小屋沢岳 > 1:15種池山荘 > 2:15爺ガ岳(北峰) > 3:30冷池
山荘

 せっかくの小屋泊、撤収が楽なのを利用して5:20出発。日の出が5:20なので、日の
出と同時に出発とする。朝焼けが素晴らしい。槍も、富士山も、浅間も見えた。
 噴煙を上げる浅間を西から見るのは初めての経験だ。旧友の違った姿を見たよう
で、なんだか嬉しい。台風を考えて、針の木からの撤退も考えたのが嘘のように晴れ
ている。しかし下界は相変わらずの雲海。針の木岳のピークを過ぎた頃から、この雲
がどんどん上昇してきた。
 濃いガスは新越(シンコシ)山荘まで続く。ここからガスは晴れ、岩小屋沢岳を過
ぎた頃から半袖・半ズボンとなる。風は相変わらず強いが、日差しが強く心地よい。
種池山荘に着くころには、すっかり晴れた。
 今日はやけにすれ違う人が多いと思ったら週末だった。団体のパーティーも多い。
 爺ガ岳がすっきりキレイに見える。南峰からまたガス。冷池(つべたいけ)山荘に
着く頃には、雨の心配をしなければならなくなる。これまで山荘に着くたびに、公衆
電話をチェックするがどこにも無い。ニョーボの声も聞きたいし、これだけ天候が不
安定だと向こうも心配していると思う。
 タバコもそろそろ厳しくなってきたが、これも販売していない。今日のキャンプ地
は山の斜面。できるだけ風の影響が無さそうな下部にテントを張る。水は1リットル
150円。明日の希望的な予定では、鹿島槍を超え、五竜岳を超えて五竜山荘にてテン
泊。行動時間は10時間の予定。荷物も軽くなってきたので体力的には楽になりつつあ
る。日程的にも、遅れを大分取り戻すことができそうだ。というよりも、遅くなった
ら金が足りなくなってしまう。がんばろう。ニョーボの事と、台風だけがちょっと気
がかり。

9月9日 冷池 > 鹿島槍ガ岳 > 八峰キレット > 五竜山荘(素泊まり)
6:00冷池 > 7:10布引岳 > 8:00鹿島槍ガ岳 > 10:00キレット小屋
> 11:00口ノ沢のコル > 1:20五竜岳 > 2:15五竜山荘(素泊まり)

 夕べは風が強く、テントが一晩中暴れていた。テントが飛ばされたり、修復が不可
能なくらい破れてしまったら山行が成り立たなくなってしまう。不安で良く眠ること
ができない。雨も3~4回降る。相変わらず雨漏りはするが、仕方ないとあきらめる。
テントの下部は、ほとんど地面と水平なので、雨が垂直に当たる。よって、この部分
の雨漏りがひどい。夕べは2回ほどペグの固定をやりなおし、少しでも雨をハジキ流
すようにした。もちろん風対策ともからめて… 荷物が少なくなったので、ヌレ対策
については多少楽になった。
 キャンドルランタンの灯りの下で出発準備。5:45に鹿島槍に向かって歩き出す。濃
いガスと強い横風を受けている。100人の団体さんが先行していて、追いぬくのに
ちょっと大変だった。この風雨の中を良くやるよ… 見てみると、コンビニのビニー
ル袋を小脇に抱えている人や、ビニールポンチョを着ている人もいる。大丈夫なのだ
ろうか。
 布引山の手前で、雨具を完全装備。団体さんに追いつかれたが、「ここから稜線上
にでるから、上下とも雨具を着けたほうがいいですよ」とアドバイス。目論見どおり
団体さんはそこでストップして、バタバタと雨対策をやりだす。そのスキに先を進
む。
 ガスの中登っていくと、何の変哲もないピークが槍だった。頂上では5~6人の団体
さんが3組くらい記念撮影をしていたが、早々に先に進む。キレットを見渡すが、ガ
スで何も見えない。キレット小屋を通過して、進むのはリスキーかもしれない。だ
が、鎖もしっかりしているとのことだから、何とかなるだろう。いきなりの急下降に
ちょっとビビルが、行くことにする。北峰分岐を通過し、キレット小屋の手前で本格
的な鎖場、ハシゴが現れる。ただ、八峰キレットは鎖もしっかりしており、あまり怖
さを感じない。岩場が滑るのが、神経を使うくらいだ。
 キレット小屋では、横殴りの雨となり、雨宿りをさせてもらう。公衆電話は無し。
タバコは販売していた。なけなしのショートホープは、雨でビショビショだったの
で、やむを得ず捨て、マルボロを2箱補給する。
 きれいな自炊部屋で、小屋番も感じが良い。ここで素泊まり…と思ったが、小屋番
の兄ちゃんから天気図を見せられてがっかり。台風15号と16号が2つも近づいてい
る。特に15号はまだ本州から遠いのにも関わらず、山岳への影響が大きいタイプのよ
うだ。キレットにはエスケープルートが無い。もし、ここで3泊停滞したら、資金も
アウト。
 台風は11日に上陸する可能性が強く、明日になればさらに天候が悪化する模様。
ニョーボも心配しているだろうから、五竜まで抜けて電話をしてあげたい気持ちも
あった。五竜への登山道は、キレットよりも困難だが、鎖やハシゴはしっかりしてい
るとのこと。登山道はほとんど稜線の西側に付いており、東風が吹いている今のうち
に五竜まで抜けたほうがいいとも判断した。向かうことにする。
カーボショッツを、岩陰で食べながら五竜へ。最後の急登と鎖場が厳しい。山頂直下
は、登山道が沢のような流れになっており、落石も起こりやすい状況。緊張しながら
進む。コースタイムをオーバーしながら五竜の山頂に立つ。強風とガス、横殴りの雨
の中視界は無い。下山を開始する。
 下りにも何箇所か神経を使う鎖場。ゆっくり、ゆっくり登山道を辿る。
 五竜山荘には14:15到着。こんな天候でも、遠見尾根を登ってくる人がいた。テン
ト泊をする人も3名ほど見かけた。稜線の西側にテン場はあるから、大丈夫なのだろ
うが、、、がんばるなぁ。
 乾燥室に荷物をぶち込む。やはり台風はこちらに向かっているようだ。風も雨もど
んどん強くなっていく。ここまで来て残念だが、明日遠見尾根を経由して五竜遠見ス
キー場に下山することを決めた。 下山を決断したら気が楽になって、ビールとコッ
プ酒を買ってしまう。

ビーフジャーキーを齧りながらビールを飲んでいるうちに、
「一度下山してから、鑓温泉に向かい、そこから白馬に上がって続行しようか?」と
か、
「まず電車で親不知に抜けて、台風の影響が比較的少なそうな逆ルートで五竜までつ
なげようか?」
なんて案も浮かんでは消える。

ビールを飲みながら地図を見ながら検討を続ける。往生際が悪いこと甚だしい。
 やはり日程的に厳しいようだ。足の速い台風ならまだしも、今回の台風はゆっくり
近づいてきて、山への影響が大きいタイプなのだから。休暇を1日延長することを考
えている自分に気付くが、それを始めたらきりが無いだろう。今までの行程で、歩く
のが嫌になったこともあった。靴が壊れたり、テントが破れたりしたら「下山やむな
し」という言い訳になるなぁとも考えたことがあった。でも、ここまで来ると、そん
な気持ちはまったく無い。

下山したらやりたいことをリストにしてみる。
1: ニョーボに会いに、気仙沼まで行く
2: 温泉でアカを落とす (できれば角質層を柔らかくする硫黄泉…)
3: 耳垢をほじる
4: 選択する
5: 防水完璧のテントでオートキャンプにでかけ、温泉・焚き火・読書三昧。
6: 週刊文春を読み、定価のビールを浴びるように飲んで酔っ払う
7: 小川山でクライミング
やれやれ… 翌日の出発準備を済ませ、適当に眠る。

9月10日 五竜山荘 > 白岳 > 大遠見山 > 五竜とおみスキー場
7:00五竜山荘 > 7:30白岳 > 9:00大遠見山 > 10:00中遠見山 > 11:00地
蔵ノ頭
> 11:15アルプス平駅

 不本意ながら、最終日。今日も朝から強烈な風雨。山荘に泊まっている他の人は全
員停滞のようだ。相変わらず東風が強烈に吹き荒れる。自炊場の壁や天井からは雨漏
りがしている。7時ごろ身支度を整えて山荘の正面口に行く。
 遠見尾根の入り口を地図で確認すると、白岳を越えて行くことになる。山荘のス
タッフに確認すると、頂上直下から遠見尾根に入るまでは東風がまともにあたるとの
こと。「無理だと思ったら、引き返して来てくださいね」と、励まし?の言葉をかけ
てもらう。
 ザックカバーが風で吹き飛ばされないように、細引きで上からグルグル巻にして出
発。山荘入り口を出た瞬間、ヤッケのあらゆる隙間から雨が進入してくるのが判る。
顔をそむけて西側を見ると、稜線下にテントが3張りある。根性ありますなぁ。
 白岳への登りは、右下からの風をまともに受ける。雨具のフードが顔に下がってく
るのを避けるため、つば付きのキャップをかぶっているのだが役に立たない。つばの
裏側に叩きつけるように雨が吹き上げてくる。右目が開けられない。開けるとあっと
いう間にコンタクトが叩き出されてしまいそうになる。ぼやけた視界の中で白岳の山
頂に到着。ここで迷うわけにはいかない。
 コンパスとマップで方向をきちんと見極める。岩陰に潜んでいないと、立っている
ことも難しいような状況だ。風に正対する方向に遠見尾根が伸びているはず。そちら
に向かって歩き出す。ストックは思いきり短くして、ダブルで耐風姿勢を取る。一歩
ずつ前進していく。西遠見山まで300m弱下降すると、ようやく風も弱くなってきた。
右からは、白岳沢がゴウゴウと流れ下る音が聞こえる。登山道も凹状のところは流れ
になっている。
中遠見山あたりまでくると、五竜遠見スキー場からのトレッキングコースとして整備
された道となってくる。風も落ち着いて、雨も小降りになる。稜線上が嘘のようだ。
 地蔵の頭を超え、テレキャビン山頂駅へと向かう。山頂駅では森隊長とニョーボに
電話で報告し、生ビールを飲んで下った。下山時のザックの重さは27kgとなってい
た。本日もずぶ濡れ。気合が残っていたら、鑓温泉に向かおうと思っていたが…おと
なしく帰京することとした。

追記: この後、神城駅に到着すると「台風で中央線が不通」「東海道新幹線は今の
ところ大丈夫だが、いつ停まるか判らない」と言われてしまう。関東地方も直撃する
おそれがあるから、名古屋まで出て新幹線で帰るのが一番確実だと助言された。アド
バイスどおりにしたがい、ひかりは座れそうになかったのでこだま号で帰路につい
た。
結局下山後に温泉に入る余裕も無くアタフタと電車に揺られることとなってしまっ
た。

秋の小川山5本

秋の小川山
紅葉が素晴らしい

。。。
 9月1日 小川山
ぴか、文さん、三浦さん、くるみざわさん、トミさん夫妻

今まで行ったことのない、リバーバンクエリアに行った(日本100岩場③P52)。
取り付きは広場になっていて、川沿いで明るい雰囲気。
小川山には珍しく、林の中ではない開けた場所でのクライミングが楽しめる。

登ったルート
1)プテラ(5.9)  クラックおよび立木を使ってよいのか?クラックの中の岩
がもろく注意!
2)秋の訪れ(5.10a) すっきりとした好ルート。上部右のカンテがもろく落
石注意。グレード甘め。
3)ナイトライス(5.10d) フェイス~スラブ。テクニカルなルートで上部の
バランスが悪い。
4)I LOVEデリヴァリー69(5.10d) ハング越えが核心だが、右から回
ると簡単になるんですけど・・・。限定ルートか?
5)チコリータ(5.10d) 見た目より簡単。川の上のカンテを登るので、見栄
えがよい。
6)ランチ(5.10d) 川の中の石から取り付く。見た目良し。でもハング越え
のムーブは見た目よりセコイ。
7)シートタイム(5.11a) 細かいホールドをつなげて登る超ショートルート。
國分さんの面目躍如ルート?

エリアは小さく、ルートの長さも短め。
我々のほかに2パーティー来ていて、人気エリアだった。
アプローチはゲート下の車道を浄化槽まで下り、その対面の踏み跡をたどる(赤
布のマークあり)。
または、ゲートのすぐ下の「しゃくなげ遊歩道」を入る。ここにも赤布あり。 

ぴか


 9月1日
メンバー ひかり、くるみさわ、みうら、丸山夫妻、くろ
いつものようにクロと1000に廻り目平の駐車場に着くと、メンバー
がそろっていた。きょうは6人。
もう初秋の気配、人出もすくなくなって落ち着いた雰囲気だ。天気は悪くない。
こんな日はここのキャンプも楽しいにちがいない。
新しいエリア、リバーバンクにいく。駐車場から10分もかからない。
河原の脇の明るいゲレンデだ。夏は少し暑いかもしれない。そのためか小屋掛
けがあった。開拓時にも使ったものだろう。ルートはわかりやすい。掃除は
徹底的にされていて足下も整備されていて開拓者たちの奮闘がわかる。岩
はすこしもろいようだ。9、10a,そして10dが4本、11もある。開拓者は有名
なその道のプロ。あちこちに新しいエリアを拓きつづける情熱には感心
してしまう。
9から始めてみんなでかわるがわる登る。エリア名のように川岸にあるから川の
中に入ってビレイするところもあって面白い。ぽかぽか陽気でなごむ。昼前
にはほかの2グループもやってきて賑やかになった。森の中と違ってなんとも
開放的な雰囲気、ルートは手軽で、講習会などで賑わうことだろう。
今日はたくさん登った。9から11までオンサイトできたルートが多かった。
詳細は森レポートにあり。自分の実力から考えてちょっと甘いグレードが混
じっているかもしれない。4時前にはおひらきとなった。車にもどるとき、
大型のヘリがやってきてサイコロ岩のあたりでケガ人らしき人を吊り上げると、
あっという間に飛んでいってしまった。駐車場で三々五々解散。この日、6人
とにぎやかだったが、言動等は温厚で大人しい6人でもあった。
昭和の強力鉄分含有深沢温泉経由ひごもんずラーメンを食べて8時ころ小屋
にもどった。

9/22(土)
小川でクライミングしました。事故もなく、久々のド・快晴、寒かったけど楽しくやりました。
メンバーは、tomi、けんじ、chu。因みに川上村の気温は9:30頃でなんと8℃しかあ
りませんでした。

1.ひょっとこ岩(私のいっちゃんきれえな水晶スラビの右側)
・精神カンテ★★10a(tomi:OS)・・・このグレードにしては、要パワー&バランス
だけど、変化に富んでいておもしろい
・オンザロード★10c(chu:OS)・・・核心は、スタンスなしの指トラバース

2.おなじみ「ソラマメ下部」
・甘食★10b(tomi:OS)
・三色すみれ★10a(tomi:OS、ケンジ:RP)
・生木が倒れたよ9(chu:OS)

3.ダンナ岩Ⅲ
・草溝直上ルート★11b(chu:OSならず、1テン)・・・う~~ん、惜しい(と、びれい
や~からホメ言葉をいただきました)
    ※パワールートで楽しいですが、核心はどっちか迷うところなので云いません。やってみて!


10/19土曜日帰り(つうか仕事ついでで)小川。
メンバー:chu、けんじさん、tomi&なおき

快晴、無風。葉っぱが落ちて岩があちこちにょきにょき。この2,3週間が一番良いような気がしますが、クライマーは殆どいません。黄や赤に染
まった林が素晴らしい、輝くような一日でした。

以下、登ったルート。(名前はOS、FLのひと)
・ごめんねえっちゃん5.10b(tom)
・ウィスキーキャット5.10a
・ハートアンドソウル5.10a/b
・タジヤンⅣ★★5.10a(なおき、けんじ)
・ピクニクラ★★★5.10b(tom)
・お掃除上手5.11a

#ピクニクラのOSは、リッパ! まさに粘りのクライミングでした。
#ずっと敬遠していた”お掃除上手”ですが、やってみたら、高品質のルートでした。残念ながら1フォールしましたが。


伊藤ちゅうです。
10/27あんまりのド・快晴で、けんじさんと、お仕事帰りに超便利という噂の瑞牆西面、カサメリ沢に思わず寄り道してしまいました。
暑くも寒くもなく、空気はからからで、条件はベストでした。

時間がないので、アプローチ7分、サニーサイドみたいな感動的下地真っ平ら取り付きの”コセロック”のみ。
ここの壁は南面、東面に開けていて、夕方でも暖かいところです。
小川よりやや低く、風の入らない地形なのか日陰でもそう寒くなかったです。

・5.10b(無名)★★
・ネコの手5.10a
・ワニワニワニ5.11b★★(chu:OS、むはは)

#スポーツエリアという謳い文句だけど、ジョシュアみたいなwildな雰囲気も濃厚。
#アプローチはとっても近い! コセロックで、金峰山荘から兄岩下部くらい。
#立派な壁がずらずら並んでいて、肝の座ってないわしらは、いちいち息を呑んでしまいやした。