HISTORY & STORY

6.05.1997

YOSEMIT500 FOR 5.10 CLIMBERs

YOSEMIT500 FOR 10 AND UNDER CLIMBER

ヨセミテで遊んだ
KIM同人合宿97 黒川せいすけ記

NUT CRACKER(LEFT)OUTER LIMITS(RIGHT)
 
KIM 同人ヨセミテ合宿
1997-6-5~12
7人のクライマー

 春山でテレマークを楽しんだ後の温泉で、「ヨセミテに行かないか」という話がで
てきた。6月なら自分もヒマなので、「行きましょう。」ということになった。ヨセミ
テに行くのは他の海外登山に比べてずっと気楽だ。もちろん目的がビッグウォールなら
それなりに準備も必要だろうけど今回は一週間。ショートルートを楽しむつもりなので
持っていく道具もたいしたことはない。
 ヨセミテ行きの話がまとまると、いつもの仲間がいろいろと参加することになって
きた。皆、それぞれ日程がバラバラなのでキャンプ4集合の、出入り自由な合宿形式に
なった。ヨセミテに来たのは5年ぶりだった。緑の濃い森と、白い岩と青い空のコント
ラストは、いろんな国で遊んだ後、訪れても格別にすばらしい。今年は雪が多かったと
のことでヨセミテフォールも水量がたっぷりで豪快だ。キャンプ4入りしてその日は食
糧や燃料など、必要な物を買い出しにでかけると夕方になってしまった。日中は陽のま
ぶしいヨセミテも夕方になると急に落ちついた感じになる。キャンプだけでもここに来
たいと思う。

 翌日は早朝に降りだした雨が一日中降り続き、テントでゴロゴロしていたけれど時
差ボケと旅のつかれをいやすのにはちょうどよかった。まる一日降った雨もやんだので
ハーフドームの頂上までハイキングに行くことにした。ハイキングといっても1000メー
トル以上の高度差があるし、ドームへの最後の登りはずっと手すりをつかんで岩場を登
るわけで、日本のハイキングとはちょっとちがった感じだ。夕方になってようやくバス
ストップに戻る。途中で滝をみたり、森の中を歩いたり、最後はドームの岩場を登り、
変化のある楽しいコースだった。

 6月6日、いよいよクライミングにでかける。クライミングは初めての渡辺とスワン
スラブにでかけた。スワンスラブはキャンプ4から近く、歩いて5分くらいだ。名前の
とおり傾斜はゆるく、日本のゲレンデのようなサイズなので、初日登るには良いところ
だ。スラブだけでなく、けっこうクラシックルートもあり、ナチュラルプロテクション
になれるのにも良いと思う。5.7のフレークルート(Penelope's Problem)を登る。
2ピッチ目、5.6のガリーを登りラッペル。渡辺は自然の岩場は初めてなので少しと
まどっていたけれど、すぐになれた様だ。左よこのクラック(Grant's Crack)5.9を
登る。ところどころフィンガージャムを使いなかなか楽しい。

 これを登り終えてローワーヨセミテフォールに移動。ヨセミテフォールの下の橋を渡
り、少し登った所が取りつきだ。下から見上げると滝はすごい迫力だ。日本には700
メートルの滝なんてないんだから当然だけど。ここはヨセミテバレーの中でも見どころ
のひとつだから、いつも観光客がいっぱいで、なんとなく華いで楽しい雰囲気だ。記念
撮影する人たちの前をとおり、岩場へ少し登る。ここも人気があるようで、結構人が
登っている。少し順番を待ってJamcrackルートの1ピッチ目を登る。(5.
7)このルートは2ピッチ目に5.9のハンドクラックが続いているが、少し混雑して
いたので登らずにラッペルして下った。
 ビレッジストアに行って夕食の材料を買って帰る。ビレッジストアはなかなか品揃え
が豊富だ。食料、酒、たき火用の薪、ちょっとしたキャンプに使う道具などいろいろ
と、そろえることができる。クライミング道具などは、カリービレッジにクライミング
ショップがあるのでそこで買うことができる。今回、日本食はミソと茶、フリカケだけ
を持ってきたけれど充分だった。もちろん本格的にいろいろ日本食を作りたい人は、
持って行く必要があるが、そうでなければ、あまり持ってゆく必要はないんじゃないか
と思う。ヨセミテでの生活に必要なものはだいたい現地でそろえることができるので、
日本食材料を除けば、お金を持って行ったほうが良いかもしれない。

 6月7日、午前中キャンプ場でゆっくりして午後からFive Open 
Bookに出かける。ここもキャンプ4から近く、ヨセミテフォールの橋の手前から左
に登っていった所にある。名前どおり大きなコーナーがいくつかあり、今回は5.6、3
ピッチのルートに取りつく。(●●●)
 たった3ピッチでも高度を上げてゆくとバレーにはえる木を見下ろすことができて
気分が良い。やさしいけれど、ひとつひとつプロテクションを自分で考えながらとって
ゆく。自由な感じがしてとても好きだ。終了点からは靴をはきかえて歩いて下る。歩い
て下ることも、ながめの良い所をとおると楽しいものだ。

 6月8日、昨夜4人のメンバーが合流したので、天気の良いうちに有名なナットク
ラッカーを登りにゆくことにする。5.8までで5ピッチの登りだ。ヨセミテをショート
ルート目的で誘われた人のほとんどがこのルートを登るのではないかと思う。手ごろな
グレードで変化にとんだルートのおもしろさが、多くの人をひきつけている。けっこう
混雑しているとのことだが、やはり取りついてみると先行パーティがじゅずつなぎに
なっており、結局上まで抜けるのに、まる半日かかってしまった。昼から取りついたほ
うが意外によいかもしれない。
 ルートはコーナークラックのレイバックから始まり、傾斜のゆるいフェースを小さな
ハングを2つまじえながら登る。プロテクションのほとんどがナッツ類でとれるため、
ルートファインディングも楽しめる。終了点から歩いて下る。帰り道から見上げると自
分たちの登ったルートがよくわかっておもしろい。

 6月9日、今日は再びヨセミテフォールへ。先日登らなかったジャムクラック、2
ピッチめまでを登る。2ピッチ目はジャミングのよくきく、5.9のクラックだ。登り終
えて1ピッチ目の終了点にラッペルして、トップロープをセットする。ジャムクラック
ルートの左側にはフィンガーのレイバックルート(Lazy Bum 5.10d)があるので、
トップロープでトライしてみる。トップロープなら力をつかいきらないうちに登りきれ
るけど、リードはまだ自分には難しそうなのであきらめる。伊藤と楽しんだ後、スワン
スラブに戻る。先日は渡辺と二人できたので伊藤が5.9のクラックルート(Jamcrack
 Route)をリードする。どのルートもあっさり登ってしまい余裕だ。
 早めに切りあげてたき火と夕食の準備に帰る。薪はビレッジストアに売っており、各
テントサイトにたき火をする場所が用意されているので便利だ。ちなみに、公園の樹林
を燃やすことは禁じられている。朝起きてクライミング、買出し&シャワー、夕食&た
き火のパターンで毎日がすぎていった。

 6月10日、昨日登り残したスワンスラブのレナズレイバックに行く。右はしにある
5.9の美しいコーナークラックだ。取りつきは木かげになっており涼しい。名前どおり
ほとんどレイバックで登る。ところどころ足がすべりやすく、ちょっと緊張する。レイ
バックのリードはプロテクションをとりにくくていつも緊張だ。

 チャーチボウルに移動する。有名な三ツ星ルート「ビショップテラス」は混んでい
るので、正面のクラックルート(Churc Bowl Tree)に取りつく。2ピッチ目まで続
いているが、ボルト2本のところまで登り下る。ボルトから先は5.10bのトラバースだけ
れど、2回落ちてあきらめる。うまくいかないこともあるからしかたない。右側に移動
して11bのボルトルート(The Energither)に取りつくが伊藤も上までぬけられなかっ
た。もちろん僕はぜんぜん歯がたたず、前パーティの残した捨てビナを使って下る。毎
日たくさん登らなくても少し疲れてきた様だ。

 6月11日、どこへ行くか少しまよったが、結局エルキャピタンのベースに行く。午
前中に用事をすませ午後発をした。エルキャピタンは岩が白く、晴れた日にはとてもま
ぶしい。取りつきから見上げると首が痛くなるほどのスケールだ。ノーズやサラテをの
登っているパーティがみえる。下部はまだ少し傾斜がゆるいが上部は前傾している様に
みえる。
さて、取りつきに行ってみると仲間の森がおもしろそうなルートを登っていた。5.9の
クラックルート、La Cosita。三ツ星ルートだ。続いて伊藤と登る。ジャミングがどん
どん楽しくなってきた。La Cositaを登り終えて、有名なMoby Dick 5.10aに移動。
モビーディックは40mくらいクラックが続き、上部でクラックが少し広くなる。総合的
なジャミングテクニックが要求される三ツ星クラックだ。下から見ると傾斜がゆるくみ
えるが、実際に登ると、けっこう上部で腕が疲れてしまう。日本では長いクラックを登
ることがなかったので、自分のスタミナのなさを思い知らされた。モビーディックを登
り終えてビレッジに帰りまた、ピザとビールを楽しんだ。

 6月12日、いよいよヨセミテでのクライミングも最終日なので、あこがれのクッキ
ークリフに行くことにした。クッキーは難しいクラックルートで有名だが、5.10クラ
スの3ツ星ルートも何本かある。クッキーへはキャンプ4から車で10分程度だ。
 仲間がキチチー5.10dを登るのを少し見てからアウターリミックに取りつく。40m以
上垂直のクラックが続いている。難しいムーヴはなく、5.10bのフィンガーが少しある
が、なによりも休みなく続くハンドジャムに半分で疲れて伊藤にかわってもらう。伊藤
もいくつかプロテクションをのばして休憩。結局、たっぷり休んで2回目のトライでな
んとか1ピッチを登り終えた。

 ヨセミテでのフリークライミングは楽しい。すてきなキャンプ生活ももちろんだ
が、日本では味わうことの難しい長いクラックや、ぞんぶんにナチュラルプロテクショ
ンを使うクライミングはクライミング イコール 山登りだったころの何かを感じさせ
てくれる。1週間の休みで充分楽しめるヨセミテに今年こそ行ってみてはどうですか?