3.17.2012

イガドノ山バックボウル


イガドノ山バックボウル
2012年3月16日 快晴
メンバー 伊藤フミヒロ


東京をゆっくり出てフジテンスキー場へは2時ころ。平日で空いている。太郎を車に置き去りにして回数券2枚800円購入。
ふじてんスノーリゾートは以前富士天神山スキー場と言ってたはず。1485mの寄生火山イガドノ山(伊賀殿山)と1420mの天神山のそれぞれ山頂までスキーリフトが伸びている。地図でみるとふたつの山には噴火口があるようだ。
メインリフトにのってイガドノ山の東1450mまで上がる。ゲレンデトップからからすぐに裏に続く雪の細道があって、ちいさなゲートをすり抜けると広くて平らな雪原が広がっている。スキーであちこち歩き回ることができる。シカやウサギの足跡が縦横しているがヒトの気配は皆無。ふじてんのバックボウルは秘密の花園のような自然の園地になっている、ということだが、もちろんそんなアナウンスはされていない。
地図上の細道らしい切り開きを辿るが夏にはカヤがぼうぼうで入り込めないかもしれない。池のようなお皿のような一段低くなっている凹地があってこれも火口か溶岩陥没にちがいない。直径100mほどの窪みで地形図でも凹地と表現されている。
南のガケの上にガードレールが見えるが、これは林道富士線から鳴沢の富士桜別荘地につづく林道なんとか線で以前一度走ったことがある。地図上の細道は、不思議なことだが、この凹地を観察するためにつけられたような按配で精進口登山道につながっている。
ふじてんバックボウルの広場とイガドノ山

イガドノ山に直登するトレイルはないかと凹地をグルリとしてみるが結局もと来た道に戻ることに。再びちいさなゲートをすりぬけてゲレンデに戻るところに「恋人の聖地。富士天神山へ」という標識があった。夏の遊歩道のようだ。これを辿る。標高差50mほどの雪道を登りイガドノ山山頂近くに出ると右手に深い窪みが現れた。イガドノ山頂の噴火口。20~30mほどの深さ、ケモノ道を下って火口に降り立つ。火口底には雑木が茂っていて大岩が雪を被って転がっている。長さ50mほどのひょうたん型、双子の火口に見える。
イガドノ山噴火口

火口淵に戻ってさらに進むと、別の「恋人の聖地。富士天神山へ」が現れそれを辿るとスキー場トップの天神山(実際はイガドノ山)の展望台にでることができた。富士山がよく見える。富士の裾野の先に河口湖の平が広がり、奥には御坂連山が並ぶ。新鮮な風景が広がる絶景ポイント。とはいえ後ろ側に数メートルほどササヤブをかき分ければ、富士山噴火史に名を残すひょうたん型の深い窪みが口を開けているのだが、その案内はないし、実際穴ぼこの片鱗も見えない。やたらに入り込まれたら崖から転落したりの騒動も起きることだろうからそれが妥当なのだろう。
足元にリフト小屋があってスキー場が広がっているのに「スキー場へはもと来た道をお戻りください」の案内がある。夏はメインリフトの運行だけなので、戻ってそれに乗って下山してくれということらしい。

よこっらしょとスキー場に滑りこむ。スピーカーから流れる騒音が五月蝿。ゲレンデの端っこを滑りながら天神山に抜けるすき間がないかと探すが濃いヤブにふさがれていてあきらめる。平日は天神山にかかるリフトは運休とあって今日の探索はおしまい。5時の営業終了前に余った券でもういちどイガドノ山リフトに乗って山頂直下へ。人工雪の堅いバーンを危なく滑って終了。
イガドノ山山頂、この裏に大火口がある

●参考
天神山は、イガドノ山の北尾根にあるコブのような山で、山麓からはほとんど同定できない。が、天神山にはイガドノ山から続く列状火口がある。地形図では山頂の40mほど下、南西側100mのところに深い窪み地形が記されているがこれはごく一部。イガドノ山頂部から北西向かって大きな深い谷があると見えたのは実は火口だったことが赤色立体地図を見てわかった。イガドノ山の南数百メートルにある有名な精進口登山道脇の「氷穴列状火口」よりもさらに巨大な火口列がここには存在しているのであるうう。

イガドノ山と天神山の列状噴火は、青木が原溶岩流を噴出した貞観の火山活動とは別物(延暦19−21(800-802)の噴火)ではないかと推測されている。いずれにしても富士山の火山活動は1200年ほど前想像以上に活発だったようだ。
小山真人博士のレポ以下
貞観六~七年(864~866初頭)の噴火(貞観噴火)は,青木ヶ原溶岩が流出して富士五湖のうちの3湖(本栖湖・精進湖・西湖)がほぼ現在の形となった有名な噴火であり,歴史時代の富士火山の噴火中で,前述の延暦噴火,後述の宝永噴火と並んで,もっとも豊富な文字記録が残されている噴火でもある.

地図では、ふじてんスキー場の東には2本の細道があってこれは鳴沢からくる旧登山道ではないだろうか。ほかにも近くの西剣の北向き噴火口谷にわざわざ入り込む細道などもあってこのあたりは謎のトレイルの宝庫だ。

富士山麓の寄生火山探索などマイナーなハイキングルートをまとめた本を5月発刊予定。ここ2~3年の太郎と散歩した成果で、脱稿済み。このイガドノ山と天神山、そのほかは含まれていないです。
レーザープロファイル航空写真から作った赤色立体地図。伊賀殿山と天神山の列状上火口がわかる。延暦19−21(800-802)に噴火したと権威は推測しているが。

ページトップの地形図と赤色立体画像を合体。地形図が列状火口の多くを見逃しているのがわかる。
従来の航空写真からの作図では森の中の火口を見つけることはできないのだ。
レーザー光線による地表面の観察は10年ほど前に開発されたばかり…