11.01.2011

氷穴火口列と氷池


氷穴火口列と氷池

2011年10月30日 日曜日
天候 くもり
メンバー 太郎、伊藤フミヒロ記
氷穴火口列という表記の左のふたつ並んだ小穴が氷池の双子大噴火口
氷穴火口列と弓射塚、氷池_拡大 富士砂防事務所フジアザミ38号より

緑が太郎トラック

太郎、氷穴列状火口のひとつを見下ろす

朝からどんぐもり、午後は雨になるかもという予報。こんな日はハイキングがいいだろうと出かける。どこへ行くかなりゆきドライブ。北麓公園から丸紅富士桜をぬけてフジテンスキー場へ。鳴沢林道へ入り天神峠へ。精進湖登山口1合目に車を置く。
資料が手元にないのではっきりしないが、たしかこのあたりにいくつか見所があったはずと、GPSのマップを見る。精進湖登山道を上がって弓射塚(ゆみいづか)の下をトラバースするようなトレイルが引かれている。きっとヤブに埋もれた廃道だろうが、これを辿ってみることにしよう。

9時前にスタート。1合目から幅広の登山道を進む。傾斜が出てきた先に右に分かれるトレイルがあるようにマップからは読み取れる。右手に幅広い深い沢が現れる。これをどうやって渡るのか。絶壁の上から沢状をのぞき込んで気がついた。噴火口だ。たしか列状火口という地名があったことを思い出す。いくつかの噴火口が山に向かってつながっているようだ。沢なら水が流れるはずだが、火口が直列しているだけから水が流れようがない。
小さなケルンを発見。トレイルの入り口らしい。かすかな踏み後を行くと火口と火口の間をすんなりと越えることができた。すこし下ると幅広の林道にでる。マップのトレイルどおりに林道が延びている。シカよけの柵があらわれ、伐採植林地に出る。林道はこの植林地のためらしい。ちょうどいいので柵中に太郎を放す。動物が入れないから匂いもないのか、太郎はつまらなそうにひと巡りして戻ってきた。
氷穴列状火口。精進湖登山道脇


林道をさらに辿る。振り返ると弓射塚がよく見える。しばらく行くとなんのことはない鳴沢林道に出てしまった。少し戻ってマップトレイルどおり広くてきれいな沢状地形を登る。分岐の目印は1本ブナの巨木。ヤブをかき分け小尾根を越すと再びトレイルを発見。スズタケのうるさい細道を行くとシカ柵に出会う。右下が若い植林地で、鳴沢林道が下に見える。向かいには大室山や南アルプス、八ヶ岳まで見える。
柵脇をすいすい進んだあと、柵から離れスズダケの細道を行く。ここで太郎を放す、とさっさと消えてしまった。ヤブが濃くなってトレイルを失ったところで適当に下ると小さな広場に出た。
古い瀬戸物がふたつ転がっている。近くに炭焼き釜のあと。あたりは溶岩流の流れた傾斜の緩い樹海。おおよその見当をつけて進む。
作業林道から振り返る弓射塚

植林エリアで。今日はこの赤Tシャツをどこか捨ててきた

太郎はどこ?とGPSで動きを見ると、南側に見えるふたつの小山で遊んでいるようだ。様子を見にふたつの山のコルに上がってみる。
なんと、足元に巨大な火口が口を開けているのを発見。GPSのマップでは小山になっていたがいいかげんな地図なので窪地表示にするべき地形が逆に小山になっていたのだった。ふたつの小山は実はふたつの噴火口というわけ。いま立っているコルはふたつの山の間の峠ではなく、溶岩が流れ出た火口壁のくぼみのようだ。左右が小山のように見えただけ。
この噴火口は迫力がある。直径は100mくらい。深さは50mはありそう。周囲は絶壁になっている。大発見。
太郎が気になって樹海に戻る。太郎を呼んでようやく合流。ランチのあと樹海をくねくくね抜けて植林帯に入り鳴沢林道に出る。
昼過ぎ、車に戻って終了。
炭焼き釜の近く

氷池の北噴火口を見下ろす。ちょっとわかんないね

GPSのマップのトレイル破線をなんとか辿ることができたが、廃道状態で道標などはひとつもない。が、かつては火山ウオッチングのためハイキングルートだったのではないか。

GPSのマップどおり歩いていたら樹海散歩で終わってしまったはずだが、太郎を探しにいったおかげで火口をのぞくことができた。
発見した火口は氷池という名前の双子の火口だった。のぞき込んだのは北側にある方で、もうひとつの火口はその南にあって、大きさはさらに倍ほどもあるようだ。氷池という地名は資料で知っていたが、小さな池だろうと思い込んでいたので、家に戻って地形図を見るまで今日見たあれが氷池だったとはつゆ思わなかった。富士山腹には100もの火山がある。事前にしっかりプランを立ててから行動しないとこんなことになる。
氷池には古人が持ち込んだ祠、氷池白大竜王があってうんぬんかんぬんと、資料にはあった。氷池のふたつの火口は底に下りることもできるらしい。南にある直径200mもの噴火口はさぞかし迫力があることだろう。次回の楽しみにとっておくことにしよう。今回の逆コースで辿れば氷池へはラクに行けるはず。

パソコンに太郎のトラックを落としてみると、なんのことはない、彼は小火口の縁を通って、大火口へ向かい、ちゃっかり火口底に降りて戻ってきていることがわかった。なかなか出来るヤツではある。
緑が太郎。2度も大噴火口に降りている!
富士山を知る見るハイキングガイド伊藤フミヒロ