5.18.2008

富士山初スピードパラ(世界記録)

2008/05/18
富士山頂からスピードパラグライダーで飛びました。伊藤フミヒロ

パラワールド誌の記事と
山と渓谷誌の記事を転載します。
pdfオリジナルは下にあります。

http://powder.studio-web.net/18-19speed.pdf

http://powder.studio-web.net/20080701143245.pdf



パラワールドの記事
テキスト






スピードパラで高高度も
アリなのか…!

ここ数年話題になっているスピー
ドパラ。日本では木島平と栂池のス
キー場で体験したり教わったりする
ことができます。ぼくも1月のある
日、木島平でスピードパラの試乗会
があるとういうので、のこのこ出かけ
たクチです。
その日見たのは、木島平山頂から
のフライトでした。スピードパラとい
うのは雪の斜面上をそこそこ飛んだ
り滑ったりするものと思っていたの
で、高高度のフライトには驚きまし
た。飛んでみせてくれたのはファルホ
ーク社の岡さんと、木島平スタッフの
根津さん。2回転も見せてくれまし
た。スピードが速いのにもに驚きまし
たが「落ち具合」がすごいのにもびっ
くりしました。
体験して面白かった
ので、木島平にはその後
も2回ほど行ってスピー
ドパラの練習をするこ
とができました。清水校
長が何度も言ったのは、

スピードパラはパラグライダーで
す。体重移動のできないパラグライ
ダーです」ということでした。

山飛びにトライ

ヨーロッパアルプスの連中は当然の
ように山で飛んでいて、そんな動画
がたくさんネットに流れています(ア
イガー山の映像はすごい!)。ぼくも
春になったら富士山から飛んで(滑っ
て)みよう、と思いました。以前、夏の
富士山頂からふつうのパラで飛んだ
ことがありましたが、それに比べたら
スピードパラは雪の急斜面上の低高
度滑空。「楽勝」という予測ができま
した。
3月に富士山腹の寄生火山であ
る二子山へ行ってみました。昔、御殿
場市民スキー場があったところ。そ
の日は風もよく数回練習すること
ができました。面白かったです! 
山スキーヤーの人たちが「スゲー!」
と驚いていました。
翌々週は二子山のもっと上にある
宝永山に登りました。ガスが出てい
ましたが、そこそこの視界。いつも通
りグライダーを広げ、スタートしたの
ですが、あれー?開かない? その
ままグライダーを引きずって滑落。
スタ沈です。今までの練習で滅多に
失敗したことがなく、スピードパラは
勢いよく出れば必ず開く、という自
信が崩れました。フォロー
気味で2回目も失敗、3
回目はうまくいき、飛べる
ところまで一気にフライト
して降りました。クロスは
難しいのでフロントで出る
のですが、雪の斜面で風が

あると手助けなしのテイクオフ
はやっかいです。アイガー山頂で
スタ沈したら即死なんだろう
な、ふと思いました。
4月になって、山は春スキー
のシーズンです。木曽の御嶽山
へスキー仲間と出かけました。
山頂は3067m。山頂下か
ら霧にかすむ一の池へ飛んでみ
ました。短いフライトのあと、ガ
スが切れるのを待って森林限界
まで飛んだり滑ったりしまし
た。快適でした。
4月末は、北アルプスの立山
へいきました。ここも風とガスに
悩まされましたが、雷鳥沢と一
の越からフライト&スキーがで
きました。いい気分でした。
一連のトライで、「山は天気
が悪い、天気がよくても風があ
る」という当たり前のことを確
認することができました。


いよいよ富士山へ

5月に入って連休後半は、い
よいよ富士山。4日と6日が比

較的好天でしたので、南面の富士宮
ルートを山頂まで登りましたが、2
日とも山頂部は「山は天気が悪い、
天気がよくても風がある」というこ
とを再認識しただけで、山頂でグラ
ハンのようなことをしてお茶を濁し
ました。スピードパラができなくても
スキーで下れるので、面白くないこ
とはない、のです。
翌週末は天気悪く、東京の大雨
は富士山では大雪になったようで
す。
次の好天は1
6日でした。北面の吉
田口を登る予定でしたが、天気予報

の「南風でしょう」につられて3度目
の南面の富士宮ルートを友人といっ
しょに登りました。新雪でまぶしい
富士山でしたが、3400mまで登
ったところで、北と南がぐちゃぐちゃ
の強風に出会い登高意欲をそがれ、
撤退、スキーで楽しく下りました。
地上の天気予報は富士山頂には通
じない、ということなのでしょう。
翌1
7日は、一人で北面の吉田口ル
ートを登りました。山頂はガスと風、
冴えない風景で、吉田大沢をスキー
でさっさと下ることにしました。標
高3100mのあたりでなんとな

く風が収まる気配が
あったので、とりあえ
ずパラを開いて、スキ
ーヤーが降りてくる
のを待ち伏せ。山頂
で二言三言交わした
人がやってきたので、
「グライダーのここん
とこをつまんでてく
れませんか」とお願
い。1回目はちょっと
無理して出ましたが
失敗。グライダーが前
にかぶって失敗したの
は、いままで100本ほど飛んで初
めてのこと。2回目は、短いフライト
ができましたがこれも失敗フライト
でした。
そして、5月1
8日。やっとうまくい
きました。この日は前からスキー仲
間と吉田大沢を滑ろうというプラン
があったので、スバルライン終点で待
ち合わせしました。5人が予定どお
り集まり7時スタート。吉田口山頂
には2時着。
山頂でみんな「…?」キツネつま
れ状態。登っている間は怪しい風が吹

いたりすることもあったのに、今はほ
とんど無風です。
「奇跡!」「チャンスチャンス!」と
休憩もなしで、走るようにお鉢ルー
トをトラバースして吉田大沢トップ
へ。富士山頂剣ヶ峰は3776m、
ここは3710m、富士山のお鉢の
縁、「なんちゃて頂上」ですが、ここし
か出るところはなさそうです。


やったね大成功!

早速パラを広げて準備。つるつる
の雪面だから誰かに持っていてもら
わないとグライダーがするすると落
ちてきてしまう。サポート隊の今回
のもっとも重要な任務がグライダー
をつまんでいること。
相変わらずあたりは静か。弱いフ
ォローが収まるのを待って、「せーの」
でスタート。
あっ、という間に浮きあがって、あ
とはいつものとおり。あまり高く上
がると怖いので右左に振って高度を
下げます。写真を撮るために何回か
に区切って下る約束があったので
500mほど下ったところで着雪。


やったね!という感じで
す。
2回目のフライトは、フ
ォローが入ってきて、無理
やり出ましたが、失敗、滑
落してすぐ止める。吹き
降ろしが収まりそうにない
のでスキーでしばらく下りました。
2800m地点、岩壁の下で風
を避けて再びスタート、何十秒間の
フライトで高度を下げ、2500m
付近で岩が出てきたため雪の上に
着地しました。
吉田大沢は標高差1400m、
長さ4㎞ほどの一枚バーンで日本一
の滑り台と言われています。スキーパ
ラには最適なスロープで、風向きさ
えよければ安全な「滑・空」が楽しめ
ます。
山飛びの感想は、と聞かれれば
「キモチイー
♪」というとこ
ろでしょうか。
エリアを離れ
てクロカントリ
ップにでかける
のが新鮮なよ
うに、スキー場
ではなく、高い
山をスピードパラで
飛ばすのは実にいい
気分です。富士山
だけでなく、日本
の山にはいい雪のス
ロープがたくさんあ
りますから、これか
らたくさんの人が
スピードパラで楽し
まれるだろうと想
像しています。