4.04.1992

Spring skiing in Wasatch

Spring skiing in Wasatch,Utah

伊藤文博
ロッキーの極楽バックカントリースキー
.
マイルドセブンのロケ地
 






1992年4月4日雪の遊び人たちはモルモン教徒の約束の地、ソルトレイクシティーにおりたった。

メンバーはカリブークラブとそのとりまき。北田敬郎、伊藤裕之、野口俊一郎、真壁静子、竹内利春、真下
薫之、ベンジャミン・バーディ。

ワサッチ山系はロッキー山脈の主脈のひとつ。ユタ州の東のはしに南北につらなっている。スノーバードや
アルタなど有名スキー場があります。

今回は一週間のプラン。山麓のコンドミをベースにして、毎日周辺の山々へワンデイツアーにでかけると
いうもの。お気楽、安全プランだ。しかもスキー場のリフトがぎりぎりうごいているのでそれを使って効率
良く遊べるという頭脳の勝利的計画だ。

4月5日 アルタスキー場であしならし。ビーコン練習、雪崩学研究。

6日 ソリチュードスキー場わきからスコットヒルへむかう。3050メートルピークまで2時間。周辺を
滑りまくる。


7日 アルタからツインレイク経由ハニカムクリフまでのワンデイツアー。リフト終点が2500、350
0まで登り滑る。

8日 スノーバードスキー場の向いの山、フラッグスタッフの3500メートルピークまで700メートル
を全力でのぼる。一気に滑り降りて、午後はスノーバードで遊ぶ。ベンのともだちがたくさんいて、急斜面
を舞うように滑る、うわさのワサッチ滑りを習う。

9日 ウルヴァリン山をめざす。ピークから滑る。毎日上天気で疲れがたまりそうだ。

10日 今日が最後と必死ででかける。ここいらの最高峰ツインピークへのツアー。スノーバードの一番う
えのパトロール小屋でサインしてから、3770メートルのピークまで。名山ティンパゴスが目の前だ。知
る人は知っているローンピークもすぐそこ。ボウルをすべり大きく登り返して。ホワイトパインバレーを滑
り、リトルコットンウッドキャニオンにくだる。

3.20.1992

焼岳北面スキー

火打山~焼岳北面スキー滑降・単独
原 伸也(ビルエバンス同人)
 
 
1992年3月20日
加藤 雅昭(大阪あすなろ山岳会) 秋田 三枝子(関西蛍雪山岳会) 原 伸
也(ビルエバンス同人)頸城山塊の火打山から焼山の南面は浅い沢が多くよく滑られてる。
が、一方の北面はそれとは対称的に激しい浸食を受け沢も急峻で複雑に入り組ん
でいる。
そのためか、焼山の北面などや 火打山から派生する空沢山方面などの一部を
は、ほとんどスキー滑降の記録は発表されていない。
日本の山の中でも、標高差2000m以上を滑れる山は特別な条件下での富士山
をのぞいて、火打山頂上2462mから笹倉温泉の450m地点までの標高差約
2000mぐらいしかないと思われる。
豊富な積雪と雪質がよく人もあまりみかけない静寂な山々。
山スキーの縦走も いったん稜線にでると素晴らしい奇妙な形をした山の展望が
楽しめて面白いが、個人的にはスキー滑降を主体としたほうが楽しめると思う。

1983年5月1日~4日
5月1日
関温泉を8時発。
燕温泉を経由して、右手の神奈山の斜面からの落石に注意しながら、ツボ足でゆ
っくりと登る
黒沢池に12時5分着。ツエルト泊。
5月2日
天候悪く停滞。
5月3日
霧で視界ゼロの中を6時50分発。稜線沿いに登り、火打山頂上に9時40分
着。
頂上直下の急な北面斜面も雲の中で何も見えな.
2年前に頂上で偶然出会った直江津山岳会の柳氏らと共に初滑降したから気持ち
の余裕がある、とはいっても最初の滑り出しはポーンと空中に放り出されるよう
で、いろんな考えが交錯して不安と勇気との戦いだ。
滑り出して10mも滑ると、ほとんど頭の中はカラッポで雪面との無邪気な遊び
だけで引き返す気にならない。
雪は腐り気味でしかも積雪量も前回より少な目なのが気がかりだ。
左手へギルランデ状に慎重に滑ると、落下しそうなロート状の一番怖い斜面とな
る。
しかし底部がカール状に少しずつ広がってくるのが見えるとよく滑ったなという
安心感と充実感が
心の中に満足として広がっていくのがわかる。
賽ノ河原手前の緩斜面のど真ん中で大休止し、ウイスキーで乾杯。
世間ではアホと言うヤツもいるが オイラにはとてつもなく充実した気分になる
んだ。

シールをボロイ板につけて胴抜キレットへ向かう。
1730m地点から雨が降り始め、ザックをデポしてツボ足で登高。
胴抜キレットに14時13分着。休憩もせずに滑り始める。
風の通り道なのか堅い雪質でよく滑る。ザックを回収して1500m地点でツエ
ルトを張る。
翌朝3時まで強風と雨。

5月4日
賽ノ河原を横断しようとするが、濃霧で下部が見えず引き返す。
昨日登り滑ったルートを忠実に辿り、胴抜キレットに9時30分着。
円錐形の焼山への縦走路をキックステップで登るが、アイゼン無しのため結構気
を使う。
石仏がひょっこり立ってる頂上に11時28分着。
頂上から稜線沿いに雪面を下ると、ガレが露出した場所があり、そこから固定ザ
イルに助けられて雪の大斜面に出る。
2350mから滑降開始。ホワイトアウトの中泊岩を目指して下るが、滑降不能
な岩場の上部へ出てしまい、大幅にもどることになる。
今度は地図とコンパスそして山勘をたよりに、慎重に沢沿いを下る。
12時15分遭難碑のある1780m地点にようやくたどりつく。
ひと安心で休憩してると、皮肉にも霧は消えていく。
U字谷をふたつほどトラバースし、フィナーレの長大な緩斜面をゆらゆらとパラ
レルで快調に滑る。あきてきてちょっと急な斜面をアマナ平へとコースを自由に
とる。
焼山川と火打山川に挟まれた溶岩流が形成してるいくつかのおだやかな起伏を越
えていく。
左手に新田山が見えはじめると、雪面のところどころに土が出て春の雰囲気が出
てくる。
笹倉温泉手前でスキーは終了。

雨飾山前沢左ルンゼ初滑降

雨飾山前沢左ルンゼ初滑降
NOBUYA HARA
 
 
1992年3月20日
加藤 雅昭(大阪あすなろ山岳会) 秋田 三枝子(関西蛍雪山岳会) 原 伸
也(ビルエバンス同人)

92年の正月に大渚山の登頂した時に、雨飾山の左肩から「く」の字形に落ちて
るルンゼが目についた。
正面から見ると傾斜は概して強く見え、スキー滑降ではとても不可能に見えた。
しかし眺めているうちに、それも可能であるかもしれないとおもえてきて
3月の連休に実行した。

3月20日
小谷温泉を7時30分出発。
林道を少し歩き、シールをつけて登高。
標高1127m地点から大海川沿いに登り、さらに夏道のある尾根の手前の沢を
登る。
荒管沢をトラバースし、右手の尾根に取り付く。
すぐにアイゼンに履き替え、クレバスの多い尾根を登る。
雨飾山の頂上に12時55分着。
山頂から、痩せた西尾根を慎重に下り、1860メートル地点からスキーをつけ
る。
左ルンゼをのぞくと、だいたいの全容が見える。
岩壁や滝はなさそうで一安心。
雪屁の小さい部分から左ルンゼに滑り込む。
昼間部までは30~40度の急斜面。ジャンプウエーデルンで滑降。
気温も上がり湿雪になってるので、雪崩が心配だった。
巨大な前沢奥壁を回りこみ右ルンゼと合流すると斜度も落ち、20度程度にな
る。
さらに前沢右俣は右に曲がっていて、ここからはデブリが多く滑りづらい。
1000m地点まで滑降しそこからシールをつける。
前沢の左岸を巻いてトラバース。湯峠に到着するころには日が暮れてしまった。
ヘッドランプの明かりに助けられ小谷温泉まで滑降。
19時30分小谷温泉着。

写真
1)大渚山から雨飾山の全景 前沢が見える
2)登りの写真 モデルはワシ

5.21.1991

笠ケ岳と抜戸岳周辺

DESCENT AT MT.NUKETO AND KASA

北ア 笠ケ岳と抜戸岳周辺の沢をスキー滑降
田村 和彦、土田 次夫 他 (RSSA同人)古田 徹司 西田 真一(きねずか同人)原 伸也(ビル エバンス同人)
nuketo pict
 
笠ケ岳も他の山と同様で例年に比べて雪の量は少ないが、                                    
日本海からの風が直接あたるため笠ケ岳周辺は充分に雪がある。                                      
新緑、酒、星、友達、露天風呂そして標高差の大きいスキー滑降など、                                        
きわめて快適な2週連続の山行を楽しめた。                                                                                
笠ケ岳笠沢(初滑降かも?)と穴毛谷4ノ沢左俣Aルンゼ滑降(第2滑降)                                    
                                        
5月21日                                      
笠ケ岳周辺を熟知してるRSSA同人の15名と一緒に新穂高温泉を出発。                                    
奥深くひと味違った雰囲気のある笠ケ岳穴毛谷本谷を登ってる最中、                                  
豪快な岩峰群に囲まれた4ノ沢を登ってる土田氏を見つける。                                        
どこを狙うのか予備知識が全くて地図で確認してみると、                                    
4ノ沢左俣Aルンゼのようだ。                                    
地図の等高線ではなんとか滑降できそうな気がする。                                        
あわてて計画変更し一人で後を追う。                                      
一緒に神戸から来た田村氏は自分勝手な行動にあきれた顔をしている。                                        
両岸が切り立つルンゼ中間部で追いつく。                                  
アイゼンを持っている原は、                                      
最後の手強い巨大な雪庇をへばりつきながら登りきる。                                      
夏道を登り、深い静けさのある頂上着。我々2人にとっては初めての頂。                                      
なかなか高度感あふれる展望に感心。                                      
鋭い切れ込みの険しい谷間には、                                  
予想もつかぬ雪の量の雪渓がいくつもあり、今後の課題として面白そうだ。                                    
他のメンバーは全員抜戸岳に集合し、これから杓子平経由で穴毛谷を滑降すると
                                        
の無線が入る。                                  
土田氏は6ノ沢を滑降。                                  
主稜線の下降地点で6ノ沢か5ノ沢か分からず悩んだとのこと。                                      
途中の核心部の滝は20M程巻いて本谷へ滑り込む。                                        
原は笠ケ岳の頂上の30M下の尾根から滑降開始。
頂を背に滑る姿を抜戸岳パーティーは全員が見てたとのこと。                                        
2780M地点から緩やかな景色が展開する西面の笠沢を下る。                                      
急斜面だが岩石がほとんどなく、パラレルが快調。                                  
2ヶ所滝が露出し、下部の滝だけ5mスキーを脱いで下降。                                  
滝のでっぱりに、7本ぐらいシュリンゲが絡んでた。                                        
稜線に戻るわずかな170Mの登りは、遅々として足が進まない。                                    
短時間で高度をかせぎすぎたせだ。                                        
クライマックスのAルンゼの滑り出しは、僕の実力ではどうかな                                      
と思わせるような急斜面。                                        
地図上の傾斜よりきつく感じるのは大きくかぶる雪庇のせいだ。                                      
滑り始めるまでの3分間どうしようか悩んだ。                                     
 心も体もカラッポになり、「エイ」と10Mも下ればあとは狭いが楽な斜面。
                                        
ターンする度に雪が崩れる。                                      
滑降したい細い沢の中央をずるずると流れ、それが下部まで落ちるのを                                        
待っているだけでイライラする。                                  
ときどき落石の大音響が四方からこだまする。                                      
左手の剛鉄のような第一岩稜が、垂直に立ちすばらしい。                                    
見上げると、Bルンゼもやれそうな気がする。                                      
1300M地点で雪が無くなり板をザックにつける。                                        
滑降総標高差1650Mの達成感で放心状態。                                      
1日でこれだけ山を滑るのも久しぶりだった。                                     
 新平湯温泉でRSSA同人の山スキー祭りに飛び込みで参加。                                        
30名の会員や飛騨山岳会の島田靖さんが来られていて、                                    
楽しい山スキーに関する談笑の時を過ごした。                                                                              
                                        
抜戸岳頂上から穴毛谷本谷滑降                                    
                                        
5月22日                                      
快晴の中を田村氏の案内で抜戸岳登頂。                                    
前日滑ったルンゼは本当に垂直に見えた                                    
登高はつらかったが、あとはスキーで往路を下るのみ。                                      
頂上から杓子平周辺は白い広大なカール状斜面で山上の山スキーの楽園。                                      
こんなによい場所ならもっと昔から注目しとけばよかった。                                  
途中にある穴毛大滝(弓折ノ滝)は神秘的で雄大な姿。                                      
ウエストンは2回の地元の非協力から登れなかった後、                                      
この素晴らしいルートを経由して登頂したのだろう。                                        
滑降標高差1410M。                                  
笠ケ岳周辺では、                                        
景色の変化も充分に楽しめる最もポプュラーなコースと思えた。                                      
                                        
                                        
抜戸岳東面無名沢初滑降                                  
                                        
5月23日                                      
昨日の抜戸岳から東面の斜面を観察した時、                                        
各沢は急な傾斜だが滑れるだけの充分な雪がついてる。                                      
地図からは、                                    
下抜戸沢と抜戸岳南尾根の間にある無名沢が一番よさそうに見える。                                  
蒲田左俣林道を歩き、その沢を見上げると、                                       
 思ったより雪の量が多そうな気配がする沢だ。                                     
  沢の水流で切れてるが、                                  
対岸まで沢から押し出された大量の雪が埋まってる。                                        
2人で思わずニヤリと笑う。                                      
しかしすぐに20M登った所で3M雪が切れている                                 
 大きく右に屈曲した部分でも20M間は雪がない。                                
   雪崩の方向が本筋を下らず、小さな尾根に向かうためのようだ。                                      
広大でどこも滑れそうな穏やかな斜面が現れる。                                    
「カッコー」だの「ホーホキキョ」と何種類もの鳥が心地よく鳴いている。                                    
さっそくビールで乾杯してしまった。                                      
稜線にて休憩後雪庇のない部分から滑りだす。                                     
 田村氏も快適にニコニコ顔でどんどん滑って行く。                                 
  原は、調子にのってスピード感に酔いしれてる最中                                 
   雪に隠れた30CM大の石にスキーが衝突し、空中で体が1回転。                                    
石は100M程落ちたが、体は5Mで停止してくれた。                                      
最後の2回のスキー脱着がなければ最高のルートだ。                                        
穴毛谷本谷の下部の雪面のデコボコを思えばなんともない。                                  
ブルーの渓水の端まで滑り込む。                                  
滑降標高差1160M。                                  
例年より極めて雪が少ないことから、途中の雪が切れてた部分は                                      
いつもは雪に覆われてると思われる。                                      
                                        
大ノマ谷滑降                                    
                                        
5月28日                                      
きねずか同人の古田 西田の両氏が、双六小屋周辺を「無茶苦茶に滑るぞ」                                    
との大胆な発言に賛同。                                  
長い林道歩きから小池新道のカール状の雪面を上りきり、                                    
主稜線の大ノマ乗越からトラバースするつもりだったのに                                    
雪が斜面に全くなく、全員「こりゃなんだ」。                                      
「しょうがねーなー」と来た道をスキーで滑降                                     
 栃尾の無料露天風呂までの時間は充分あったが、                                    
 あまりに新緑が美しすぎて、橋のたもとでツエルトをはる。                                  
夜は大きな静けさの中 素晴らしい星空が何倍も心を癒してくれる。                                  
日本の山の良さを凝縮したような山だ。                                    
滑降標高差900M。                                    
                                        
抜戸岳奥抜戸沢初滑降と秩父沢テレマーク滑降                                                                              
5月29日                                      
テント周辺で雪のある斜面は限られ、                                      
テレマークスキーの2人は比較的傾斜の緩い秩父沢へ。                                      
原は奥抜戸沢を目指す。                                  
真っ青な空色の下、奥抜戸沢上部の急斜面は雪が堅く蹴り込みに時間がかかる。
                                        
アイゼンを車の中に置いてきたのを悔やむ。                                                                                
抜戸岳頂上から下50Mの稜線に出る。                                    
12時50分稜線3M下からスキーを着ける。                                      
40M下までシュルントが連続し、危険な部分は横滑りで通過。                                      
どの稜線からの滑降でも最初の原頭部が一番神経を使う。                                    
先週の4ノ沢の最上部の地形によく似ており、左手には岩がそそり立つが                                      
それほど思ったより悪い狭い斜面ではなかった。                                   

 下部の石コロ散乱地帯での格闘滑降並びに                                  
左側のガレ場から押し出された巨岩堆積地帯の通過は苦労する。                                      
大休止し、余ったウイスキーによる解放感が心地よい。                                      
足どり軽く新穂高の駐車場に、4時30分着。                                     
 滑降標高差1180M。                                  
                                        
                                        
当初、穴毛谷4ノ沢左俣Aルンゼは初滑降と考えていた。                                    
後ほど飛騨山岳会の瀬木  島田氏らに問い合わせたところ、                                  
1987年5月11日飛騨山岳会の杉本、岩崎の両名により                                  
三の沢を登り、滑られていた。                                    
その記録によると、                                      
「ルンゼ中間部で、2人とも30から40Mくらい滑落。」                                  
Aルンゼの最上部の滑り出しの写真があり、                                       
 原が滑降した時よりかなり雪が多い時のように思えた。                                      
いずれにしても、大きな雪庇をどう処理するかがポイントのようだ。                                  
4ノ沢左俣初滑降の記録。                                        
                                        
また抜戸岳東面の2コース(奥抜戸沢と無名沢)は、                                        
滑られた記録はまだ聞いたことがないとのことであった。                                    
なお秩父沢周辺は飛騨山岳会の瀬木氏によって行われてる。                                  
                                        
2500M以上の山からの急斜面滑降の最適な時期は、                                      
やはり5月の連休を過ぎてからだと思う。                                  
僕の友人達も連休を過ぎればスキーをしまってしまう。                                      
滑降主体の山スキーヤーだったら本当にもったいない気がする。                                      
今回の笠ケ岳周辺は、頂や稜線までのアプローチが新穂高温泉から短く、                                      
日帰り山スキー滑降に最適な中上級者向けのパラダイスと思う。                                      
                                        
                                        
(参考資料)                                    
1)「北ア笠ケ岳穴毛谷4ノ沢右俣登高  4ノ沢左俣Aルンゼ下降」                                  
飛騨山岳会  瀬木他3名                                  
1981年6月7日                                      
4ノ沢左俣Aルンゼ初滑降の記録。                                        
                                        
2)「北ア笠ケ岳穴毛谷4ノ沢左俣登高 5ノ沢下降」                                       
松坂山岳会  田中他4名                                  
1981年5月1日                                      
Cルンゼを登り、稜線から右俣ルンゼの滑降を試すが、5ノ沢へ転進。                                        
カールを滑り、途中からクライミングダウン。                                      
5ノ沢初滑降の記録と思われる。(原記す)                                                                                
3)「北ア抜戸岳境界尾根登高 東尾根(仮称)滑降」                                       
飛騨山岳会  瀬木他1名                                  
1987年3月30日                                    
北ア抜戸岳東尾根(仮称)滑降は初滑降。(原記す)                                        
                                        
                                        
4)「北ア笠ケ岳穴毛谷本谷、6ノ沢右俣、7の沢滑降」                                    
飯田氏らが3年間で穴毛谷6ノ沢右俣,本谷を滑降                                  
RSSA同人の「ベルグシーローファー20号」より                                        
                                        
4)RSSA同人の牧野氏が単独で今年の5月連休時                                        
打込谷等(初滑降の記録もある?)を滑降の連絡を受けた 

5.11.1991

霞沢岳・八右衛門沢と霞沢初滑降

霞沢岳・八右衛門沢と霞沢初滑降
原 伸也(ビルエバンス同人)単独
 
 
霞沢岳は上高地の近くにあり、ごく限られた場所からしかその姿を見ることがで
きないことから登る人は極まれな山である。
数年前からこの山の沢の滑降の可能性を探って何回か夏に偵察山行をしてきた
が、なんとか行えそうという淡い気持ちを抱きながらトライしてみた。

八右衛門沢滑降
5月11日
上高地を8時30分発。
八右衛門沢下部1670m地点に大堰堤があり、そこから雪が続きアイゼンをつ
けて、少しクラスト気味の急斜面を落石に注意して登る。
静かな山頂に12時到着。
ここはいつも人がいなくて穂高の展望よくての素晴らしい場所だ。
13時八右衛門沢のの最上部2600mから滑降開始。滑り出しは急だが意外と
雪面の状態が良くて滑りやすい。ジャンプウウェーデルンが気持ちよく決まる。
中間部は両側ともかなり狭く、両岩壁からの小石が散乱して慎重に下る。
数分間小雪がぱらつく。
カモシカの姿も見えて楽しい。
三本槍沢との合流地点の手前に巨岩が横たわっていて雪が少しとぎれる。
巨大な堰堤まで石の少ない場所を選びながら左側を主に滑る。
滑降標高差930m。
上高地に14時10分着。
連休からその後の1週間ぐらいが 滑降に適した時期と思う。

霞沢初滑降
5月16日
登路は先週と同じ八右衛門沢。
車の中で寝過ぎて10時発となってしまった。
雪もだいぶ溶けて数カ所水流が現れていた。
頂上には登らず、先週の滑降地点と同じ場所から霞沢を滑降することにした。
大雪庇が霞沢側に張り出している。
重いザックをエンヤコラと落下させたあと細い木にザイルをつけて雪を崩しなが
ら雪庇の下でスキーをつける。
14時。
滑り始めは特に急な斜面のため、非常に緊張。
ジャンプターンでチェックをしながら下る。
ザックは100mほど下にあり、再び転ばせてそのあとを滑る。
ともかく変な場所に停止しなかったことに感謝。
。
2000m地点で部分的に雪がとぎれ、左側の雪面まで草地を5mほどスキーを
つけたままソロリと歩く。
この周辺はサルの集団やカモシカが多い。
しかもあまり人をおそれていないようすだった。
50匹のサルは霞沢の下部から夏を目指して大移動中だった。
よく見てると沢を横断するときに必ず 両岸には見張りが立っていて、なかなか
の組織ぶりに驚く。デコボコの雪に苦労しながら下ると水流が出てきて、160
0m地点でスキー終了。
ッツエルト泊。

5月17日
5時発。
小雨が降る中の沢のゴルジュ通過は難しく、300mの高巻きが2回もあった。
11時に沢渡着。
上高地行きのバスを待ってる時に女性のバスガイドがどこ滑ってきたの?って不
思議な顔して
聞いてきた。
どうやらかなりこの北アルプスについて知ってるみたいで、「霞沢滑ったなんて
記録聞いたことないわ」と驚いていた。そのあとのビールは最高に旨かった。


写真説明
西穂高から見る霞沢岳 中央に見えるのが霞沢

5.03.1991

DESCENT AT ANAGE,MT.KASA

西田 真一 (きねずか同人) 原 伸也 (ビル エバンス同人)
ANAGE PICT
 
穴毛谷周辺の沢には まだ紹介されてない幾つかの滑降コースがあり
槍見温泉の無料混浴露天風呂をベースに 日帰りで4日間
のスキー滑降をショートスキーで楽しむ。

5月3日(快晴)穴毛谷一の沢滑降
穴毛谷としては 新穂高温泉から一番近いことや
積雪期の記録を見た事がない 穴毛谷一の沢へ向かう。
一の沢出合の1341M地点で2パーティーがテントを張っていた。
1260M地点から雪を踏みしめて登る。
単調な登りでも 周囲の岩壁の風景が飽きさせない。
1840M地点の大きな左側の支流は広サコ尾根に伸びる。
地図上ではかなりの急斜面に見えるが 下から見上げると大した斜度でもなく
雪庇もなく 笠岳主稜線縦走路の残雪期における
エスケープルートとして 又はクリヤの頭方面
からの帰路における最短スキー滑降ルートとしても使用できそうだ。
本流は右側へ大きく屈曲し 傾斜を増してクリヤノ頭へ直上してる。
無雪期にはここから 15Mの滝を筆頭に大小6つの滝があるらしいが
岩壁から落ちた雪で全て覆われてるためか 水音はない。
途中2150M地点から広サコ尾根側へ回り込み クリヤ谷の縦走路へ合流。
春日井山岳会のスノーボードなどを持つ3人パーティーと出会い
この 山域で出会う人は希だ。
山談義に花が咲き 様々な情報が得られた。
クリヤノ頭(2440M)に14時着。
時間に余裕があり そこから笠谷右俣A沢へ 約250M程滑降。
穴毛谷と違いデブリがなくて 滑り易い。
右俣B沢より格段に樹木の数が少なく また広大な明るい斜面だった。
小尾根を乗り越して クリヤノ頭に引き返す。
頂には雪がなく 10M下降してからスキーを着けて滑降。
最初はかなりの急斜面で 慎重に下ると 後は部分的にシュルントがあるだけ
の 第一尾根と広サコ尾根に挟まれた谷筋の滑降。
そのまま 穴毛谷本流に合流して終了。滑降標高差1180M。

5月4日(快晴)抜戸岳南尾根・岩小舎沢滑降
巨大なデブリの目立つ蒲田川左俣谷から岩小舎沢を登りつめる。
上部にカモシカを見かけ 
キノコ雪をいくつかつけた2421M峰東南壁が右手に大きく見える
南尾根のコル8に13時着。
穴毛谷側を見ると スッパリと切れ落ちている。
3年前の難しい滑りだった穴毛谷四の沢左俣Aルンゼが大きく見えてなつかし
い。
標高は低いが 高度感がすごい。
デブリや落石なども少なく 広大な斜面で気持ち良く滑れる。
抜戸岳南尾根の沢の中では 最も容易で明るい雰囲気の
気持ち良い沢であり 穴毛谷の概要をつかむのにも好適なルートと思う。

5月5日(雨)
小雨が切れ 風呂に入ってばかりもしていられない。
穴毛谷本谷に向かう。
堰堤の多さが いささか気になるのは 登山者のワガママであろうか?。
三の沢の出合から 雨が降り出し 霧が深くなる。
毎回の快晴のせいで いつもの癖のツェルト携帯をこの時ばかりは
忘れてしまった。
雨具を着たまま 3時間立ち尽くし
たがついに やむことなく そのまま滑降して下山。

5月6日(晴れ)穴毛谷無名沢滑降
初日の 一の沢から見た抜戸岳南尾根から穴毛谷側にある白い沢筋が印象に残り
地図で確認すると2248M地点から滑れそうだ。
三の沢の出合から南尾根側への無名沢を登る。
昨日の雨と寒さにより 斜面が氷化し 久しぶりのアイゼン装着。
うっすらと新雪が積もり その下はガチガチの氷だ。
どうやら 雨の後に新雪が降ったようだ。
中間部の巨岩で休憩中 直径30CM大の雪塊が頭に直撃しそうになったが
運良く事前に発見して 無事。
直上すれば穴毛槍手前のコル6につくが、ある程度登れて滑れそうなので
左側の狭くてシュルントの多い不安定な凍った斜面を
ルートを探しながら無理矢理登る。

三の沢上部の雪崩が何度となくこだまする。
地図上の2248M地点に13時30分着。
南尾根上の他の滑降適地を偵察。

P7(2248M)の手前から
2日前に滑った岩小舎沢側にかすかな可能性を見つける。
しかし最初の滑り出しは50度はある急斜面のために 将来の課題とし
登ってきたルートを滑降することにした。
好天による雪の溶けるのを待つ間に 断崖絶壁の景色を充分に堪能する。

なだらかな丘状の斜面をゆっくりと滑った後は わずか100Mと短いが
大きくていやなシュルントが連続する 急なバーンだ。
足下が崩れればそのまま落ちるしかない。
微妙なバランスを要求され油汗をかきながらなんとか緩い斜面にたどりつく。
今年の大雪の年で この少ない雪の付着であることを考えると
普段の年の滑降は かなり困難な部分と思われた。
後は白い広大な斜面を 直線的なウェーデルンで滑走。

日帰りの行程で 素晴らしい絶景とかなりの急斜面を楽しめ
さまざまな可能性を秘めた山域は 日本ではこの笠岳周辺
が一番と思う。



(付記)
上記の 各滑降コースについては 今まで雑誌や本では 発表されてない。
1)岩小舎沢については 飛騨山岳会の瀬木氏らが滑ってるが
発表されてない。
2)1ノ沢滑降は積雪期における 下降路として使用されてる。
スキーの使用は 多分されてるであろうと想像するが
クリヤノ頭からの本流は滑られてないと思う。
3)穴毛谷の無名沢は 沢の中間部から滑られてるかもしれないが
今年度の豊富な雪でも 尾根直下には難しいシュルントだらけであった事から
初滑降と思われる。


参考文献
日本登山大系・「槍ケ岳・穂高岳」
笠岳の岩場と沢 飛騨山岳会

5.02.1991

蝶岳東面頂上初滑降

北ア・蝶岳東面頂上直下スキー初滑降 単独

NOBEER
 pict
 
蝶岳東面頂上直下には2つの急な沢があり、まだ滑られた記録を見たことがな
い。                                                            
連休の初めの頃は低気圧の通過により、ひどい悪天気。                                                              
5月2日に吹雪の常念岳に登頂し、周囲の沢の状況を偵察。                                                          
5月3日一の沢をスキー滑降。                                                            
前日の雪が降りつもっていたと思ったが、雨のせいか安定して滑り易い。
                                                                
約1800メートル地点でスキーを脱ぐ                                                            
5月4日三股から蝶岳に登頂。                                                            
途中常念岳から南に直線的に見える常念沢は、友人がリーチをかけているから諦
める。                                                          
カンビールを2つ飲んだら、朝からなにも食べてないためか、肝心な時に酔って
しまう。                                                                
頂上から、東面の2つの沢を地図と地形から右に走る沢に決めた。                                                            
2重山稜のため噴火口状の窪地があり、山頂直下からジャンプターンで下る。
                                                                
好天のため大勢の登山者がビデオを撮ったりしてくれたようだ。                                                              
こんな時は、意外とビビッテしまう。                                                              
這松を3メートル程下り、下の急斜面を覗く。                                                              
直感的に「これはいける」と思う。体中にアドレナリンが充満。                                                              
喉がやけに乾いてくる。                                                         
 最初の40メートルだけ慎重に下れば、後はなんのことはないただの斜面。
                                                                
途中ブルーとグリーンのザックカバーが落ちていた。                                                                
これは5月2日の突風で流されたものだろう。常念岳も同じだった.                                                          
雪面は、滑降に申し分なく、板は曲り易い。                                                                
左右から沢が出て来るが、いずれも大きなブロックが散乱。                                                          
標高が低い山のためか、沢筋以外の尾根は樹林が濃い。                                                              
1950メートル地点からトラバース。                                                            
登った時のコースに出るために、沢筋を約50メートル登り返す。                                                            
登山道に出ると、やっと終った気分になる。                                                                
1918メートルの地点から登山道の右にある小さな薄暗い沢に入り滑る。
                                                                
雑木が邪魔だったが,硬い残雪のおかげでかなり滑降標高差をかせげた。
                                                                
約1600メートル地点でスキーを脱ぐ                                                            
三股に15時30分着。                                                         
 今年のゴールデンウイークは天気が悪く、あまり自分の思った山行ができなかっ
た。