12.29.1992

南ア・仙丈ケ岳

南ア・仙丈ケ岳馬ノ背北東面スキ-初滑降
原 伸也
 
,
 
平成4年12月29日-平成5年1月2日
 
  原 伸也(単独)
  
   仙丈ケ岳の北面のスキー滑降は過去に薮沢の記録はあるが、
   他はまだない。                                    
   
   雪の多い東面のスキ-滑降は全て終わり、数年前から狙って
   いた記録のない馬ノ背からのコ-スを正月休みを利用して行
   なった。 29日戸台より入山。当初予定していた平右衛門谷
   と薮沢の間にある尾根は、樹林のため滑れそうにない。                   
    大平山荘から西に見える大きな尾根の中間に、上部が開けた
    沢が見られる。                                    
    下部の状況はわからないが、何とか目的は達せられそうな気
    がした。30日9時頃から曇空となり、頂上に到着時には3
    0メ-トルの視界もない。                                                
    滑降中止し、スキ-を頂上の標識にくくりつけて帰る。 31
    日停滞。1日(元旦)移動性高気圧のため快晴。スキ-が頂上
    にまだあるのか少々不安だったが無事にありほっとする。
                                          
  頂上から見える北面は雪の量は西面よりはるかに多いが、風の
  通り道のためか不気味なアイスバ-ン状に見える。大仙丈沢は
  丁度10年前に滑降した時よりも積雪量は多く、思わず安易な
  気持ちに引き込まれるが初志貫徹。頂上から来た道を15メ-
  トル程滑り、凹地から急な北面へ。数回のジャンプタ-ン後、
  軟雪に足を取られ転倒。そのまま落ちるかと思ったが、石にひ
  っかる。気を持ち直し、大きなシュプールをカールのお腹に刻
  む。
  入口が開いたままの仙丈小屋の脇を通り過ぎるとアイスバーン
  。馬ノ背ヒュッテの上方の稜線でシ-ルを貼る。馬ノ背の頂上
  でカモシカに出会う。2715メ-トル地点を越えると尾根は
  狭くなり、一度だけスキー板を担いで5メートル下る。西側は
  ほとんど雪がない。地形が複雑で予定の下降地点を探すのに地
  図確認が難しい。薮沢のス-パ-林道との出会いにある橋を望
  見確認。2690メートル地点でシールを外し、東側へ滑り込
  む。思ったより雪の量は深く、膝までの軽い雪。小さな誘発雪
  崩が何度も起こる。下るにつれて沢幅は狭くなり、2140メ
  ートル地点で12メートルの滝に出る。                              
  左の急雪壁を胸までのラッセルで抜ける。尾根は倒木が多くて
  つらい下り。1950メートル地点でスキーを外して歩く。地
  図上の問題の大崩壊は、難なくスキーで通過。堰堤を何ヶ所か
  越え、水の少ない薮沢本流を渡りきり林道の橋に15時半到着
  。2日戸台へ下山。
   参考地図2万5千分の1「仙丈ケ岳」  

5.07.1992

ちゅさんの白馬山飛び3本

白馬連峰山飛びハットトリック
伊藤忠男
とんでる
 

引き出しの隅から思いもかけずに、白馬鑓から飛んだときの写真が出てきました。飛  
んでるボクがまるで埃みたいなんで丸付けちゃいましたけど分かりますか? スキ-  
で遅れて登って来る仲間が撮ったもんです。
で、滅多にない記録なんで、古いけどここに書く(打つ)ことにしたってわけです。  
写真でもないと、山飛びなんて、うまくいっちゃうと、たいして書くこともないし目  
を引かんもんね。

>>> 92年5月7日 : 小蓮華岳から栂森 >>>


高度差:1100m、 フライト時間: 約20分。

自家用車がこの時期に栂森まで入れたのはこの年まで。朝7:00、栂森ゲレンデの  
下に車を置いて、栂池自然園へ向かう。テレマ-ク・スキ-ヤ-が3人、シ-ル付け  
てスタコラ行ってしまった。こっちは風が悪いときようにスキ-まで背負っているの  
でつぼ足でのんびり。自然園のプラ-トを南へづっと振って適当なところから、小蓮  
華北のジャンクションへ直登。11時頃に稜線に出たが、風が西風なので気がすすま  
ず、大池の見えるところまで戻って、風の変化を静観する。1時間待つと弱いフォロ  
-(西風)になったので、足場を踏み固め、走路を作った。立ち上げるたびに横にし  
てリュックに付けたスキ-にラインが絡んで閉口した。結局テイクオフしたのは午後  
1時を廻っていたと思う。リフトがかからない気持ちの悪いテイクオフだった。自然  
園まで前(東)へ出て行くと、南風とのウィンドシェア-にぶつかって、思いっきり  
揺さぶられたが、そこから栂森まで追い風に乗ってあっという間にスキ-場の上空。  

対地高度は100mを割っていたので簡単な高度処理をしてアプロ-チ。ところがス  
キ-場によくあるパタ-ンで、低高度になると風向がころころ変わって、アテタと思  
った風がいきなりフォロ-になって、着地するなり、ベタッと顔面から前へ転がって  
しまった。そっとおきあがり、恐る恐る廻りを見た。しめしめ誰もいないぞお。いや  
あ、こんなとこ見られたらなにいわれっかわかんねえもんなあ。とはいっても油断で  
きないので、口笛ふきながら堂々とした動作で機体をたたんでいたら、リフトの作業  
員らしいひとがこっちを見て笑った...ように見えた。わ、わ、わ、わらったなあ  
。

>>> 93年6月12日 : 白馬岳から長走沢出合 >>>

高度差:1600m、 フライト時間: 約44分

梅雨の直前にある静穏な時季を狙っていた。午前2時に家を出て中央を飛ばし猿倉に  
5:20着。
快晴でいまのところ風もない。メシを食って6:40に出発。前に懲りたので今回は  
スキ-はもたない。だめだったら、グリセ-ドで降りてこよう。馬尻 7:20。3  
号雪渓の下まで上からなでるような風が降りて来ていた。これは雪面付近の気温低下  
で起きる接地性逆転層で、雪の上では受け入れなければならない現象だ。頂上10:  
30。稜線にでるなりやはり西風が顕著で、すんなりテイクオフする気になれない。  

頂上山荘前の緩やかな斜面に自作のウィンド・ソックスを立てて様子見。昼近くなっ  
てこころもち西風の勢力が上がったような気がしてきた。飛ぶかやめるかの決断をし  
なければならない。

山荘の斜面はいったん黒部側に向いているのでそのままテイクオフできれば、西風を  
生かせる。問題は2重稜線になっている黒部よりの浅いリッジを超えてしまうとこち  
らには戻れないってところだ。

12:03、緩い斜面なので、ゆっくり立ち上げキャノピ-を頭上で止めたまま、グ  
ランドハンドリングで風にあわせたまま50mほど歩いていき、徐々に加速してリフ  
トがかかって来るのを充分にかんじてからなるべく東よりに崖へ飛び込んだ。村営宿  
舎のすぐ上で、東へタ-ンすると、恐ろしい音とともに揺さぶられ、ベンチから落ち  
てしまった。立ったカッコを修正できず、そのままタ-ンを続け、大雪渓の上空をク  
ロスして白馬主稜に近づく。小岩峰が入り組んでいて、スティッキ-なサ-マルがぶ  

つかり、そのたびにすごいリフトがかかる。腕力全開。あっという間に再び村営宿舎  
よりも上にでてしまう。大雪渓の方向に修正すると、いきなり静粛が訪れた。機体が  
風を裂いていく音だけが聞こえ、ゆれも止まった。ベンチに座り直し、そのまままっ  
すぐ馬尻の上空から小日向山を目指す。雪の消えた杓子東稜の末端付近にはサ-マル  
が出ていて、ゆっくりタ-ンしても高度が上がった。小日向山にもサ-マルがでてい  
て、八方側南斜面でまた上がる。なんとなく八方まで行ってしまいたくなったが、や  
めた。生活圏への侵入はなんとなくやっちゃいけないんだ。

小日向山の北側で180度タ-ンを繰り返し高度を下げ、ブッシュの出始めている長  
走沢の平らなところにランディングした。


>>> 94年5月29日 白馬鑓ケ岳から二股 >>>

高度差:1700m、 フライト時間: 約25分

例年なら鑓の東面は雪が締まってこの時季が一番スキ-滑降に適しているが、この年  
はどういう訳か寡雪で、しかも小日向のコルまでの猿倉台地は完全にブッシュ。スキ  
-を使う2人の相棒は悲惨だ。コルまでいつもなら1時間みれば充分なのにこの日は  
3時間かかってしまった。あまり天気が良くないので、出足も遅れたが結局まだ営業  
どころか仮設もされていない鑓温泉についたのが12時過ぎ。雲量は10だが、雲は  
高い。穏やかで、まったく風がない。山から飛ぶには良いかもしれない。スキ-の仲  
間は一人遅れているが構わず、メシを食ってそのまま頂上へ向かった。頂上3:00  
。機体を広げられる斜面がなく、肩まで降りた。浅いルンゼ状に機体を広げるが、テ  
イクオフに必要な向かい風がない。ないなら良いが時折上からわずかなフォロ-さえ  
 
入って来る。30分ほど様子をみたが、状況は変わらないし、時間ももう夕方。相棒  
に見守られて緩い雪の斜面を全力疾走した。相当走ったあと走りながら上を見ると、  
まだキャノピ-はくしゃくしゃでがっかりした。斜面の傾斜が急になったとたん、ふ  
いに足が離れた。対地高度がみるみる上がってヤッホ-。穏やかで、キャノピ-の風  
切り音だけが聞こえる。サ-マルが出ているとは思えないのでとにかくまっすぐ。眼  
下に鑓温泉がみえると、目前に天狗から落ちてきている脆そうな岩のマイナ-リッジ  
がみるみる近づいてきた。少し修正してロクエモンの滝の上を忠実に辿って、唐松沢  
の下流から南股入に入る。ゆっくり360度回転して広そうな河原にあたりをつけた  
。二股発電所の上部にランディング。最後まで穏やかで、なんと、着地まで、この標  
高差をわずか4回のタ-ンで降りてしまった。


Chu

4.04.1992

Spring skiing in Wasatch

Spring skiing in Wasatch,Utah

伊藤文博
ロッキーの極楽バックカントリースキー
.
マイルドセブンのロケ地
 






1992年4月4日雪の遊び人たちはモルモン教徒の約束の地、ソルトレイクシティーにおりたった。

メンバーはカリブークラブとそのとりまき。北田敬郎、伊藤裕之、野口俊一郎、真壁静子、竹内利春、真下
薫之、ベンジャミン・バーディ。

ワサッチ山系はロッキー山脈の主脈のひとつ。ユタ州の東のはしに南北につらなっている。スノーバードや
アルタなど有名スキー場があります。

今回は一週間のプラン。山麓のコンドミをベースにして、毎日周辺の山々へワンデイツアーにでかけると
いうもの。お気楽、安全プランだ。しかもスキー場のリフトがぎりぎりうごいているのでそれを使って効率
良く遊べるという頭脳の勝利的計画だ。

4月5日 アルタスキー場であしならし。ビーコン練習、雪崩学研究。

6日 ソリチュードスキー場わきからスコットヒルへむかう。3050メートルピークまで2時間。周辺を
滑りまくる。


7日 アルタからツインレイク経由ハニカムクリフまでのワンデイツアー。リフト終点が2500、350
0まで登り滑る。

8日 スノーバードスキー場の向いの山、フラッグスタッフの3500メートルピークまで700メートル
を全力でのぼる。一気に滑り降りて、午後はスノーバードで遊ぶ。ベンのともだちがたくさんいて、急斜面
を舞うように滑る、うわさのワサッチ滑りを習う。

9日 ウルヴァリン山をめざす。ピークから滑る。毎日上天気で疲れがたまりそうだ。

10日 今日が最後と必死ででかける。ここいらの最高峰ツインピークへのツアー。スノーバードの一番う
えのパトロール小屋でサインしてから、3770メートルのピークまで。名山ティンパゴスが目の前だ。知
る人は知っているローンピークもすぐそこ。ボウルをすべり大きく登り返して。ホワイトパインバレーを滑
り、リトルコットンウッドキャニオンにくだる。

3.20.1992

焼岳北面スキー

火打山~焼岳北面スキー滑降・単独
原 伸也(ビルエバンス同人)
 
 
1992年3月20日
加藤 雅昭(大阪あすなろ山岳会) 秋田 三枝子(関西蛍雪山岳会) 原 伸
也(ビルエバンス同人)頸城山塊の火打山から焼山の南面は浅い沢が多くよく滑られてる。
が、一方の北面はそれとは対称的に激しい浸食を受け沢も急峻で複雑に入り組ん
でいる。
そのためか、焼山の北面などや 火打山から派生する空沢山方面などの一部を
は、ほとんどスキー滑降の記録は発表されていない。
日本の山の中でも、標高差2000m以上を滑れる山は特別な条件下での富士山
をのぞいて、火打山頂上2462mから笹倉温泉の450m地点までの標高差約
2000mぐらいしかないと思われる。
豊富な積雪と雪質がよく人もあまりみかけない静寂な山々。
山スキーの縦走も いったん稜線にでると素晴らしい奇妙な形をした山の展望が
楽しめて面白いが、個人的にはスキー滑降を主体としたほうが楽しめると思う。

1983年5月1日~4日
5月1日
関温泉を8時発。
燕温泉を経由して、右手の神奈山の斜面からの落石に注意しながら、ツボ足でゆ
っくりと登る
黒沢池に12時5分着。ツエルト泊。
5月2日
天候悪く停滞。
5月3日
霧で視界ゼロの中を6時50分発。稜線沿いに登り、火打山頂上に9時40分
着。
頂上直下の急な北面斜面も雲の中で何も見えな.
2年前に頂上で偶然出会った直江津山岳会の柳氏らと共に初滑降したから気持ち
の余裕がある、とはいっても最初の滑り出しはポーンと空中に放り出されるよう
で、いろんな考えが交錯して不安と勇気との戦いだ。
滑り出して10mも滑ると、ほとんど頭の中はカラッポで雪面との無邪気な遊び
だけで引き返す気にならない。
雪は腐り気味でしかも積雪量も前回より少な目なのが気がかりだ。
左手へギルランデ状に慎重に滑ると、落下しそうなロート状の一番怖い斜面とな
る。
しかし底部がカール状に少しずつ広がってくるのが見えるとよく滑ったなという
安心感と充実感が
心の中に満足として広がっていくのがわかる。
賽ノ河原手前の緩斜面のど真ん中で大休止し、ウイスキーで乾杯。
世間ではアホと言うヤツもいるが オイラにはとてつもなく充実した気分になる
んだ。

シールをボロイ板につけて胴抜キレットへ向かう。
1730m地点から雨が降り始め、ザックをデポしてツボ足で登高。
胴抜キレットに14時13分着。休憩もせずに滑り始める。
風の通り道なのか堅い雪質でよく滑る。ザックを回収して1500m地点でツエ
ルトを張る。
翌朝3時まで強風と雨。

5月4日
賽ノ河原を横断しようとするが、濃霧で下部が見えず引き返す。
昨日登り滑ったルートを忠実に辿り、胴抜キレットに9時30分着。
円錐形の焼山への縦走路をキックステップで登るが、アイゼン無しのため結構気
を使う。
石仏がひょっこり立ってる頂上に11時28分着。
頂上から稜線沿いに雪面を下ると、ガレが露出した場所があり、そこから固定ザ
イルに助けられて雪の大斜面に出る。
2350mから滑降開始。ホワイトアウトの中泊岩を目指して下るが、滑降不能
な岩場の上部へ出てしまい、大幅にもどることになる。
今度は地図とコンパスそして山勘をたよりに、慎重に沢沿いを下る。
12時15分遭難碑のある1780m地点にようやくたどりつく。
ひと安心で休憩してると、皮肉にも霧は消えていく。
U字谷をふたつほどトラバースし、フィナーレの長大な緩斜面をゆらゆらとパラ
レルで快調に滑る。あきてきてちょっと急な斜面をアマナ平へとコースを自由に
とる。
焼山川と火打山川に挟まれた溶岩流が形成してるいくつかのおだやかな起伏を越
えていく。
左手に新田山が見えはじめると、雪面のところどころに土が出て春の雰囲気が出
てくる。
笹倉温泉手前でスキーは終了。

雨飾山前沢左ルンゼ初滑降

雨飾山前沢左ルンゼ初滑降
NOBUYA HARA
 
 
1992年3月20日
加藤 雅昭(大阪あすなろ山岳会) 秋田 三枝子(関西蛍雪山岳会) 原 伸
也(ビルエバンス同人)

92年の正月に大渚山の登頂した時に、雨飾山の左肩から「く」の字形に落ちて
るルンゼが目についた。
正面から見ると傾斜は概して強く見え、スキー滑降ではとても不可能に見えた。
しかし眺めているうちに、それも可能であるかもしれないとおもえてきて
3月の連休に実行した。

3月20日
小谷温泉を7時30分出発。
林道を少し歩き、シールをつけて登高。
標高1127m地点から大海川沿いに登り、さらに夏道のある尾根の手前の沢を
登る。
荒管沢をトラバースし、右手の尾根に取り付く。
すぐにアイゼンに履き替え、クレバスの多い尾根を登る。
雨飾山の頂上に12時55分着。
山頂から、痩せた西尾根を慎重に下り、1860メートル地点からスキーをつけ
る。
左ルンゼをのぞくと、だいたいの全容が見える。
岩壁や滝はなさそうで一安心。
雪屁の小さい部分から左ルンゼに滑り込む。
昼間部までは30~40度の急斜面。ジャンプウエーデルンで滑降。
気温も上がり湿雪になってるので、雪崩が心配だった。
巨大な前沢奥壁を回りこみ右ルンゼと合流すると斜度も落ち、20度程度にな
る。
さらに前沢右俣は右に曲がっていて、ここからはデブリが多く滑りづらい。
1000m地点まで滑降しそこからシールをつける。
前沢の左岸を巻いてトラバース。湯峠に到着するころには日が暮れてしまった。
ヘッドランプの明かりに助けられ小谷温泉まで滑降。
19時30分小谷温泉着。

写真
1)大渚山から雨飾山の全景 前沢が見える
2)登りの写真 モデルはワシ

5.21.1991

笠ケ岳と抜戸岳周辺

DESCENT AT MT.NUKETO AND KASA

北ア 笠ケ岳と抜戸岳周辺の沢をスキー滑降
田村 和彦、土田 次夫 他 (RSSA同人)古田 徹司 西田 真一(きねずか同人)原 伸也(ビル エバンス同人)
nuketo pict
 
笠ケ岳も他の山と同様で例年に比べて雪の量は少ないが、                                    
日本海からの風が直接あたるため笠ケ岳周辺は充分に雪がある。                                      
新緑、酒、星、友達、露天風呂そして標高差の大きいスキー滑降など、                                        
きわめて快適な2週連続の山行を楽しめた。                                                                                
笠ケ岳笠沢(初滑降かも?)と穴毛谷4ノ沢左俣Aルンゼ滑降(第2滑降)                                    
                                        
5月21日                                      
笠ケ岳周辺を熟知してるRSSA同人の15名と一緒に新穂高温泉を出発。                                    
奥深くひと味違った雰囲気のある笠ケ岳穴毛谷本谷を登ってる最中、                                  
豪快な岩峰群に囲まれた4ノ沢を登ってる土田氏を見つける。                                        
どこを狙うのか予備知識が全くて地図で確認してみると、                                    
4ノ沢左俣Aルンゼのようだ。                                    
地図の等高線ではなんとか滑降できそうな気がする。                                        
あわてて計画変更し一人で後を追う。                                      
一緒に神戸から来た田村氏は自分勝手な行動にあきれた顔をしている。                                        
両岸が切り立つルンゼ中間部で追いつく。                                  
アイゼンを持っている原は、                                      
最後の手強い巨大な雪庇をへばりつきながら登りきる。                                      
夏道を登り、深い静けさのある頂上着。我々2人にとっては初めての頂。                                      
なかなか高度感あふれる展望に感心。                                      
鋭い切れ込みの険しい谷間には、                                  
予想もつかぬ雪の量の雪渓がいくつもあり、今後の課題として面白そうだ。                                    
他のメンバーは全員抜戸岳に集合し、これから杓子平経由で穴毛谷を滑降すると
                                        
の無線が入る。                                  
土田氏は6ノ沢を滑降。                                  
主稜線の下降地点で6ノ沢か5ノ沢か分からず悩んだとのこと。                                      
途中の核心部の滝は20M程巻いて本谷へ滑り込む。                                        
原は笠ケ岳の頂上の30M下の尾根から滑降開始。
頂を背に滑る姿を抜戸岳パーティーは全員が見てたとのこと。                                        
2780M地点から緩やかな景色が展開する西面の笠沢を下る。                                      
急斜面だが岩石がほとんどなく、パラレルが快調。                                  
2ヶ所滝が露出し、下部の滝だけ5mスキーを脱いで下降。                                  
滝のでっぱりに、7本ぐらいシュリンゲが絡んでた。                                        
稜線に戻るわずかな170Mの登りは、遅々として足が進まない。                                    
短時間で高度をかせぎすぎたせだ。                                        
クライマックスのAルンゼの滑り出しは、僕の実力ではどうかな                                      
と思わせるような急斜面。                                        
地図上の傾斜よりきつく感じるのは大きくかぶる雪庇のせいだ。                                      
滑り始めるまでの3分間どうしようか悩んだ。                                     
 心も体もカラッポになり、「エイ」と10Mも下ればあとは狭いが楽な斜面。
                                        
ターンする度に雪が崩れる。                                      
滑降したい細い沢の中央をずるずると流れ、それが下部まで落ちるのを                                        
待っているだけでイライラする。                                  
ときどき落石の大音響が四方からこだまする。                                      
左手の剛鉄のような第一岩稜が、垂直に立ちすばらしい。                                    
見上げると、Bルンゼもやれそうな気がする。                                      
1300M地点で雪が無くなり板をザックにつける。                                        
滑降総標高差1650Mの達成感で放心状態。                                      
1日でこれだけ山を滑るのも久しぶりだった。                                     
 新平湯温泉でRSSA同人の山スキー祭りに飛び込みで参加。                                        
30名の会員や飛騨山岳会の島田靖さんが来られていて、                                    
楽しい山スキーに関する談笑の時を過ごした。                                                                              
                                        
抜戸岳頂上から穴毛谷本谷滑降                                    
                                        
5月22日                                      
快晴の中を田村氏の案内で抜戸岳登頂。                                    
前日滑ったルンゼは本当に垂直に見えた                                    
登高はつらかったが、あとはスキーで往路を下るのみ。                                      
頂上から杓子平周辺は白い広大なカール状斜面で山上の山スキーの楽園。                                      
こんなによい場所ならもっと昔から注目しとけばよかった。                                  
途中にある穴毛大滝(弓折ノ滝)は神秘的で雄大な姿。                                      
ウエストンは2回の地元の非協力から登れなかった後、                                      
この素晴らしいルートを経由して登頂したのだろう。                                        
滑降標高差1410M。                                  
笠ケ岳周辺では、                                        
景色の変化も充分に楽しめる最もポプュラーなコースと思えた。                                      
                                        
                                        
抜戸岳東面無名沢初滑降                                  
                                        
5月23日                                      
昨日の抜戸岳から東面の斜面を観察した時、                                        
各沢は急な傾斜だが滑れるだけの充分な雪がついてる。                                      
地図からは、                                    
下抜戸沢と抜戸岳南尾根の間にある無名沢が一番よさそうに見える。                                  
蒲田左俣林道を歩き、その沢を見上げると、                                       
 思ったより雪の量が多そうな気配がする沢だ。                                     
  沢の水流で切れてるが、                                  
対岸まで沢から押し出された大量の雪が埋まってる。                                        
2人で思わずニヤリと笑う。                                      
しかしすぐに20M登った所で3M雪が切れている                                 
 大きく右に屈曲した部分でも20M間は雪がない。                                
   雪崩の方向が本筋を下らず、小さな尾根に向かうためのようだ。                                      
広大でどこも滑れそうな穏やかな斜面が現れる。                                    
「カッコー」だの「ホーホキキョ」と何種類もの鳥が心地よく鳴いている。                                    
さっそくビールで乾杯してしまった。                                      
稜線にて休憩後雪庇のない部分から滑りだす。                                     
 田村氏も快適にニコニコ顔でどんどん滑って行く。                                 
  原は、調子にのってスピード感に酔いしれてる最中                                 
   雪に隠れた30CM大の石にスキーが衝突し、空中で体が1回転。                                    
石は100M程落ちたが、体は5Mで停止してくれた。                                      
最後の2回のスキー脱着がなければ最高のルートだ。                                        
穴毛谷本谷の下部の雪面のデコボコを思えばなんともない。                                  
ブルーの渓水の端まで滑り込む。                                  
滑降標高差1160M。                                  
例年より極めて雪が少ないことから、途中の雪が切れてた部分は                                      
いつもは雪に覆われてると思われる。                                      
                                        
大ノマ谷滑降                                    
                                        
5月28日                                      
きねずか同人の古田 西田の両氏が、双六小屋周辺を「無茶苦茶に滑るぞ」                                    
との大胆な発言に賛同。                                  
長い林道歩きから小池新道のカール状の雪面を上りきり、                                    
主稜線の大ノマ乗越からトラバースするつもりだったのに                                    
雪が斜面に全くなく、全員「こりゃなんだ」。                                      
「しょうがねーなー」と来た道をスキーで滑降                                     
 栃尾の無料露天風呂までの時間は充分あったが、                                    
 あまりに新緑が美しすぎて、橋のたもとでツエルトをはる。                                  
夜は大きな静けさの中 素晴らしい星空が何倍も心を癒してくれる。                                  
日本の山の良さを凝縮したような山だ。                                    
滑降標高差900M。                                    
                                        
抜戸岳奥抜戸沢初滑降と秩父沢テレマーク滑降                                                                              
5月29日                                      
テント周辺で雪のある斜面は限られ、                                      
テレマークスキーの2人は比較的傾斜の緩い秩父沢へ。                                      
原は奥抜戸沢を目指す。                                  
真っ青な空色の下、奥抜戸沢上部の急斜面は雪が堅く蹴り込みに時間がかかる。
                                        
アイゼンを車の中に置いてきたのを悔やむ。                                                                                
抜戸岳頂上から下50Mの稜線に出る。                                    
12時50分稜線3M下からスキーを着ける。                                      
40M下までシュルントが連続し、危険な部分は横滑りで通過。                                      
どの稜線からの滑降でも最初の原頭部が一番神経を使う。                                    
先週の4ノ沢の最上部の地形によく似ており、左手には岩がそそり立つが                                      
それほど思ったより悪い狭い斜面ではなかった。                                   

 下部の石コロ散乱地帯での格闘滑降並びに                                  
左側のガレ場から押し出された巨岩堆積地帯の通過は苦労する。                                      
大休止し、余ったウイスキーによる解放感が心地よい。                                      
足どり軽く新穂高の駐車場に、4時30分着。                                     
 滑降標高差1180M。                                  
                                        
                                        
当初、穴毛谷4ノ沢左俣Aルンゼは初滑降と考えていた。                                    
後ほど飛騨山岳会の瀬木  島田氏らに問い合わせたところ、                                  
1987年5月11日飛騨山岳会の杉本、岩崎の両名により                                  
三の沢を登り、滑られていた。                                    
その記録によると、                                      
「ルンゼ中間部で、2人とも30から40Mくらい滑落。」                                  
Aルンゼの最上部の滑り出しの写真があり、                                       
 原が滑降した時よりかなり雪が多い時のように思えた。                                      
いずれにしても、大きな雪庇をどう処理するかがポイントのようだ。                                  
4ノ沢左俣初滑降の記録。                                        
                                        
また抜戸岳東面の2コース(奥抜戸沢と無名沢)は、                                        
滑られた記録はまだ聞いたことがないとのことであった。                                    
なお秩父沢周辺は飛騨山岳会の瀬木氏によって行われてる。                                  
                                        
2500M以上の山からの急斜面滑降の最適な時期は、                                      
やはり5月の連休を過ぎてからだと思う。                                  
僕の友人達も連休を過ぎればスキーをしまってしまう。                                      
滑降主体の山スキーヤーだったら本当にもったいない気がする。                                      
今回の笠ケ岳周辺は、頂や稜線までのアプローチが新穂高温泉から短く、                                      
日帰り山スキー滑降に最適な中上級者向けのパラダイスと思う。                                      
                                        
                                        
(参考資料)                                    
1)「北ア笠ケ岳穴毛谷4ノ沢右俣登高  4ノ沢左俣Aルンゼ下降」                                  
飛騨山岳会  瀬木他3名                                  
1981年6月7日                                      
4ノ沢左俣Aルンゼ初滑降の記録。                                        
                                        
2)「北ア笠ケ岳穴毛谷4ノ沢左俣登高 5ノ沢下降」                                       
松坂山岳会  田中他4名                                  
1981年5月1日                                      
Cルンゼを登り、稜線から右俣ルンゼの滑降を試すが、5ノ沢へ転進。                                        
カールを滑り、途中からクライミングダウン。                                      
5ノ沢初滑降の記録と思われる。(原記す)                                                                                
3)「北ア抜戸岳境界尾根登高 東尾根(仮称)滑降」                                       
飛騨山岳会  瀬木他1名                                  
1987年3月30日                                    
北ア抜戸岳東尾根(仮称)滑降は初滑降。(原記す)                                        
                                        
                                        
4)「北ア笠ケ岳穴毛谷本谷、6ノ沢右俣、7の沢滑降」                                    
飯田氏らが3年間で穴毛谷6ノ沢右俣,本谷を滑降                                  
RSSA同人の「ベルグシーローファー20号」より                                        
                                        
4)RSSA同人の牧野氏が単独で今年の5月連休時                                        
打込谷等(初滑降の記録もある?)を滑降の連絡を受けた 

5.11.1991

霞沢岳・八右衛門沢と霞沢初滑降

霞沢岳・八右衛門沢と霞沢初滑降
原 伸也(ビルエバンス同人)単独
 
 
霞沢岳は上高地の近くにあり、ごく限られた場所からしかその姿を見ることがで
きないことから登る人は極まれな山である。
数年前からこの山の沢の滑降の可能性を探って何回か夏に偵察山行をしてきた
が、なんとか行えそうという淡い気持ちを抱きながらトライしてみた。

八右衛門沢滑降
5月11日
上高地を8時30分発。
八右衛門沢下部1670m地点に大堰堤があり、そこから雪が続きアイゼンをつ
けて、少しクラスト気味の急斜面を落石に注意して登る。
静かな山頂に12時到着。
ここはいつも人がいなくて穂高の展望よくての素晴らしい場所だ。
13時八右衛門沢のの最上部2600mから滑降開始。滑り出しは急だが意外と
雪面の状態が良くて滑りやすい。ジャンプウウェーデルンが気持ちよく決まる。
中間部は両側ともかなり狭く、両岩壁からの小石が散乱して慎重に下る。
数分間小雪がぱらつく。
カモシカの姿も見えて楽しい。
三本槍沢との合流地点の手前に巨岩が横たわっていて雪が少しとぎれる。
巨大な堰堤まで石の少ない場所を選びながら左側を主に滑る。
滑降標高差930m。
上高地に14時10分着。
連休からその後の1週間ぐらいが 滑降に適した時期と思う。

霞沢初滑降
5月16日
登路は先週と同じ八右衛門沢。
車の中で寝過ぎて10時発となってしまった。
雪もだいぶ溶けて数カ所水流が現れていた。
頂上には登らず、先週の滑降地点と同じ場所から霞沢を滑降することにした。
大雪庇が霞沢側に張り出している。
重いザックをエンヤコラと落下させたあと細い木にザイルをつけて雪を崩しなが
ら雪庇の下でスキーをつける。
14時。
滑り始めは特に急な斜面のため、非常に緊張。
ジャンプターンでチェックをしながら下る。
ザックは100mほど下にあり、再び転ばせてそのあとを滑る。
ともかく変な場所に停止しなかったことに感謝。
。
2000m地点で部分的に雪がとぎれ、左側の雪面まで草地を5mほどスキーを
つけたままソロリと歩く。
この周辺はサルの集団やカモシカが多い。
しかもあまり人をおそれていないようすだった。
50匹のサルは霞沢の下部から夏を目指して大移動中だった。
よく見てると沢を横断するときに必ず 両岸には見張りが立っていて、なかなか
の組織ぶりに驚く。デコボコの雪に苦労しながら下ると水流が出てきて、160
0m地点でスキー終了。
ッツエルト泊。

5月17日
5時発。
小雨が降る中の沢のゴルジュ通過は難しく、300mの高巻きが2回もあった。
11時に沢渡着。
上高地行きのバスを待ってる時に女性のバスガイドがどこ滑ってきたの?って不
思議な顔して
聞いてきた。
どうやらかなりこの北アルプスについて知ってるみたいで、「霞沢滑ったなんて
記録聞いたことないわ」と驚いていた。そのあとのビールは最高に旨かった。


写真説明
西穂高から見る霞沢岳 中央に見えるのが霞沢