10.10.2013

修験道テキスト

参考原稿20130606
混雑を避けて
富士山のちょっと痛な楽しみ方

ふたつの古道。いいとこどりハイク

レポート 伊藤フミヒロ


 富士山の古道。今回訪ねたのは、隠れファンも多い村山道。下りはおとなりの須山道。どちらも歴史のある遥拝道である。同行は山のレポートでおなじみの羽根田治さん。
 まずは村山道。スタートは高鉢パーキング。ハイキング道を歩いて村山道へ向かう。梅雨の中休みか、まずまずの天気。30分ほど歩いて村山道に出くわす。標高1700m、ひと一人が通れるような細道が山へ登っている。これが村山道なのだが、登山道として整備されているわけではないので案内はない。探検の道なのである。
 細道に踏み入る。踏み跡はあるがこれが平安時代から連綿と続く遥拝の道なのか。少し心細い。あたりは富士原生林、ブナの大木が立派。ほかに人はいない。
 10分ほどで大樅にでる。かつては小屋があったところ。「ここだったのか」と羽根田さんが感慨深く天を見上げる。かのウエストンは日本アルプスの父と言われているが、いちばん数多く登ったのは富士山、で6回。彼がこの大樅の小屋で停滞し煙に閉口した記録が「日本アルプス登山と探検」出ている。停滞の翌日、ウエストンは山頂に立った。ちなみにこのあたりは大天狗のすみかとしても一部に知られている。
 標高1900mまで上がると倒木帯になる。石仏が数体あってササゴリ(笹垢離)といわれる遺跡。扁平な山頂部が顔を出している。
 古道は明瞭に続いていて、標高2200mで一ノ木戸の広場にでる。100年も前の道の形と石段が残されていて感動する。関所のようなものがあったらしい。この先を少し登ると宝永火口遊歩道に出くわす。村山古道はさらに現在の6合目の小屋2500mに通じている。
 村山古道と別れ、宝永火口をのぞき込んで「これは自然遺産だろう」と話す。須山道に入る。須山村の有志が再興した古道で原生の森の美しさは富士山でも屈指のもの。「この森も自然遺産だね」と羽根田さん。しばらく下ると村山修験修行場跡に出る。小さな広場だが。これこそ富士を代表する歴史遺産だろう。
 1450mまで下ると有名な御胎内祠に出る。羽根田さんがヘッドランプをつけて潜り込む。しばらくするとずっと先の出口から姿をあらわした。「コノハナサクヤヒメとコウモリがいた」そう。
 ブナ森をしばらく下ると水ヶ塚に続くバス道に飛び出した。8時間ほどの探検的ハイキング。


村山・須山古道いいとこどりガイド

高鉢-村山道-宝永遊歩道-須山道-水ヶ塚

 村山道は浅間神社のある村山集落から富士山頂まで続く道。研究者や篤志家が踏み跡を辿ったのもので一般登山道ではない。今回歩いたルートはその一部のみ。踏み跡は明瞭だが地形図と参考書を見て自分の判断で歩くのが基本。
 富士山スカイライン5合目線の高鉢駐車場からハイキング道に入る。駐車場にはトイレがあり案内地図も掲げられている。等高線伝いに30分ほどいくと村山道とクロスする。立派な道標があるが村山道の案内はない。村山道に入り、すぐに大樅、道標はないが赤布などが散見できる。笹垢離を過ぎて日沢を渡り樹林の中を登ると一ノ木戸。30分ほどの登りで富士山五合目駐車場と宝永火口をむすぶ遊歩道に出会う。
 宝永第2火口の縁を下る。これが須山道である。第3火口へ下る分岐の先に村山修験富士修行場跡がある。須山胎内を見学するためには2175mから第3火口へ下り大きくトラバースして三辻から須山口下山歩道に入る。村山修験富士修行場跡からそのまま須山口登山歩道を下っても水ヶ塚駐車場にでる。

日帰り
高鉢駐車場(30分)村山道入口(10分)大樅(50分)笹垢離(1時間)一ノ木戸(30分)宝永遊歩道(30分)修験道場碑(1時間)三辻(40分)須山胎内(40分)水ヶ塚 
問い合わせ先
村山道は一般登山道ではないため問い合わせ先はとくにない。須山登山道については須山市観光協会のホームページが参考になる。地図データダウンロード可。

参考
裾野市観光協会事務局
410-1102静岡県裾野市深良451 (裾野市商工会館2F)
TEL: 055-992-5005 FAX:055-992-7300

地図 25000分の1地形図  天母山 須山 印野 

山行アドバイス
村山道は、人ひとりが上り下りできる幅でヤブはなく倒木は整理されている。とくに危険と感じるところはなく歩きやすい。須山道は富士登山シーズンでも静かで空いている。道は近年の大雨で一部が溝状になったろころもあるがとくに問題なく歩くことができる。参考ガイドブックは「富士山ハイキング案内(東京新聞刊)」。
紹介ルートは、標高1400mから2400mの高差1000mほどの区間。夏の富士登山シーズンは暑いかもしれない。交通も混雑が予想されるのでハイシーズンを外すのがベター。

アクセス
富士登山シーズン(7~9月)は富士山5合目行きの登山バスが利用できる。高鉢駐車場にとまるのは、新富士駅、富士駅、富士宮駅発の富士急静岡バス。富士宮駅発の7時台のバスが便利。60分ほどかかる。三島発の富士登山バス(富士急シティバス)は始発が遅い。またマイカー規制中は水ヶ塚駐車場からの5合目行きのシャトルバスを利用できる。随時発車。高鉢までは20分ほど。水ヶ塚にはシャトルタクシーもある。
マイカーの場合は、富士山スカイライン5合目線の高鉢駐車場へ。水ヶ塚にもう1台デポするとラク。水ヶ塚・高鉢間はバスかタクシー利用。富士山スカイラインがマイカー規制中は水ヶ塚からバスかタクシー利用。

参考
富士山富士宮口のマイカー規制
2013年7月12日(金)17:00~9月1日(日)17:00
(連続52日間)
マイカー規制中、水ヶ塚駐車場は有料。(1台1,000円)
詳しくは
富士山表富士宮口登山組合のホームページ
http://www.fuji-tozan.com/index.html


写真説明
1 村山古道は大倒木帯を縫っていく。道標はない
2 富士原生林の中の須山古道
3 宝永山第3火口を歩く。通称御殿庭上
4 村山道入口はこの道標が目印
5 大樅。ウエストンも初代英国大使のオルコックもここから登った
6 ササ垢離。身を清めたところ
7 村山修験道は古い富士信仰。山伏の姿で行を行う
8 須山胎内。長さ50mもある溶岩洞穴
9 村山道は日沢に沿う。森林限界が近い
10 石段と道の形が残る一の木戸




ここも静かでおすすめ

西臼塚火山と園地

 富士山南麓の西臼塚と周辺は「ふれあいの森林」として原生森が保存されている。ブナやカエデの大木が散在していて遊歩道が整備されている。樹木や植物の観察にこれほど適当なところもない。西臼塚は標高1300mの立派な寄生火山で山頂にはまあるいきれいな火口がある。火口縁には山の神と結界がある。山の神のご神木はミズナラの大木で見ごたえがある。森は広く歩道は縦横しているので地図やコンパスが必要。


データ
 富士山スカイライン(県道)の西臼塚駐車場は100台ほどのスペースがあって無料。東名高速御殿場ICまたは富士ICから1時間ほど。富士登山シーズンはバスが利用できる。新富士駅、富士駅、富士宮駅発の富士急静岡バスで西臼塚駐車場バス停。ひとつ手前の表富士グリーンキャンプ場バス停でもよい。キャンプ場もふれあいの森林エリア内にある。
コースタイム ふれあいの森林は広いので1日たっぷり歩くことができる。ブナ広場、カエデ広場、西臼塚を巡るには半日はほしい。
地図 25000分の1地形図 天母山

写真説明
11 西臼塚山頂。火口を覗いてみたい
12 園地マップ



野尻草原と大室山

 富士山最大の寄生火山は大室山。富士西麓に巨体を見せている。周辺は火山地形の宝庫となっていて、富士風穴やブナの美林はエコツアーで賑わっている。大室山の南東面には野尻草原があり精進口登山道から見にいくことができる。一帯は青木ケ原樹海の中で、草原は溶岩湖の跡とだという。ススキの原の向こうに富士を見ることができる。大室山南峰からの富士の景観は見事で一部に知られている。大室山を訪ねる一般登山道はないが北東尾根に古い踏み跡がある。樹海歩きのツアーに参加するのも良案。


データ
 県道71号線(通称開拓道路)の精進口登山道入り口に数台の駐車スペースがある。最寄りにバス道はないので河口湖駅からタクシーを利用。6000円くらいかかる。登山口から富士風穴、ブナ広場はすぐ。桟敷山(1248m峰)のコルから南にを伸びる旧林道を辿って野尻草原へ。帰りは神座風穴や大室洞穴、あるいは精進口登山経由で戻る。
コースタイム 開拓道路精進口登山道(1時間)桟敷山コル(30分)野尻草原(90分)開拓道路精進口登山道

※桟敷山のコルから大室山南峰往復は80分ほど。※精進口登山道1合目(鳴沢林道)から周遊することもできる。

地図 25000分の1地形図 鳴沢 

写真説明
13 野尻草原は溶岩が溜まった跡だという
14 山梨100の森林のひとつ大室山