11.23.1996

幕岩の静かな岩場

幕岩の静かな岩場
k
illiust:Mitsuo Nakamura
 
幕岩の季節は秋から春まで。ちょうど小川山で岩登りができなくなる時期。ほかにもいろいろ
なところがあるのだろうが、東京の西側にすむものには手ごろなゲレンデだ。

城が碕はちょと遠いし、車置き場の問題もある。だいいち難しいところがおおい。そんなわけで
、毎年、幕岩へでも、ということになる。
 最近、園地化がすすみ、なんと駐車場が有料になったとか。土日には講習会もおおく、おおに
ぎわいだ。
 開拓者の努力で、上部にもよい岩場があるらしい。と赤本ガイド片手にサイレントバレーへと
えんえんと登ってみた。

96年11月23日
 昨年、一度ここへきたことがある。なにもかわっていない。10台がいくつかあって、われわれ
にはちょうどよい。入り口の『風の谷』で一日過ごす。
ちょと奥に5.6メートルの岩があって、ルートになっている。ウオーミングアップ。『ステンレ
ス』5.9,『オズ』5.9.

『風の谷』5.10aは上部でちょと微妙なところあり。『まりや』5.10bは去年あっさりのぼった
のに、つまってテンション。よくみたらよいホールドがあった。クライミングはレベルを維持
するだけでもたいへんだ。厳しいスポーツ…。

 仲間は登れたり、登れなかったりいろいろ、それぞれ自分の課題に励んでいる。初めてトライ
する『岳人列伝』5.11aはオンサイトといいたいが、たしかワン・テンション入った、ような気
がする。

 サイレントバレーというだけあって、だれもこの日はこない。
ここまできて小グループとはち合わせしたら、どうしようか。トポにはまだまだ奥に好ルート
があると書かれている。
いつか、またこよう。(K)

11.16.1996

CLIMBING IN JOSHATREE-NP

CLIMBING IN JOSHATREE-NP

カリフォルニアのジョシュアツリーでクライミングしてきました
糸尾汽車
 ECHO-RECK5.9を登る チュー
 

 カリフォルニアのジョシュアツリーでクライミングしてきましたのでかんたん
に報告します。とはいっても実質3日なのでたいしたことは言えません。

 いつぞやのクライミング誌にジョシュアツリーの記事が出ていて、世界でもっ
ともルート数が多く(5000本!)、もっともたくさんのクライマーに親しま
れている岩場と、紹介されていたきがします。LAにちかい場所柄、しばしばパ
タゴニアやBDのカタログにも登場するおなじみ岩場です。前回いったときはナ
ショナルモニュメントだったのに、今回はしっかりとナショナルパークとなって
いましたので、格上げされたのではないかとおもいます。

 岩場は小川山とおなじかこうがんで水晶やダイクなどがみられ、おなじみの形
状の岩です。スラブとフェイスが多く、前傾はほとんどなし。クラックは豊富で
す。10余箇所のエリアにわかれていて、車を使って移動します。岩場は無数と
いっていいほどあります。砂漠地帯で、ジョシュアツリーというサボテンとヤシ
の木のあいのこ状態の珍木が無数にはえていて名所になっているのです。キャン
プするだけでも面白いかんじです。今ごろがあつくもなくさむくもなく丁度よい、
とか。

1996-11月16ー19日 毎日晴れ。
メンバー 光、桃、徳池、チュー、ケイ、丸山夫妻、ペンバ、テンジン、KISYA

 29パームツリーのビジターセンターで現地集合。アメリカ在住組もふくめ、
あちこちから車3台で集まってきた。日本人8人、ネパール人2人。半分はクラ
イミングビギナー。
初日は人気のエコーロックエリアで終日つぶす。土曜日なのでにぎやか。トップ
ロープでやっている人がおおい。ぼくらは10台を何本かのぼる。うまーい。と
アメリカ人にほめられる。
夜はキャンプ場でたのしむ。

二日目。ヒドゥンバレーとヘミングウエイロックで楽しむ。やっぱり10台中心。
有名なルーズレディは10Aに格上げされたらしい。マラ岩状露岩で小川山ストー
リー的クライミング、女の子も見事リード。小川山ストーリーよりぜんぜんむず
い。風が強く、気分はパイネだね、とだれかがいっていました。ヘミングウエイ
ロック組は三つ星11Aをドテンションで登る。どこでもそうだが、ランナウト
する所が多く、プレッシャーにまけてしまうのだ。

3日目。クラッックもと、光と徳地がインターセクションロックのスキートラッ
ク11A,10Cにトライ。ぬける。若者二人がその脇をフリーソロでいくのがすごかっ
た。トポでみると5、7。とはいえ50メートルの露岩、半端ではない。やはり
うまい人もいるのだ。午後はインデアンコーブで楽しむ。
 公園入口のノマッドヴェンチャー店で頼まれたニューUFOを2足かう。15
0ドル。そのほかまとめがいしたら、お兄さんが気前よくいろいろとお土産をく
れた。ここで解散。


 3人ほど、自称イレブンクライマーがいたはずなのですが、結構むずかしく感
じられ、さらなる精進をと鞭うたれました。小川山感覚で楽しめる僕ら好みのと
ころですのでまた行きたいとおもいます。でも僕の場合、つぎはやっぱりヨセミ
テでミーハーか。
 
 データ:LA中心から10号を西へ。3時間のドライブ。定員制のキャンプ場
豊富。無料、水なし。ただし週末は満員。公園そとにモテル豊富。トポ立派なも
のが10冊ほどでまわっている。

9.15.1996

小川山の静かな岩場

小川山の静かな岩場
ito kisya
modoki rock-area
 
 シーズンになるといまでも小川山、正確には、金峰山川西股沢廻り目平周辺の岩場はにぎやか
だ。
かつてほどの人気はないが、それでも、前傾壁はジムだけで充分、程よい傾斜、程よいホール
ドのルートがのぼりたい。そしてなによりも、きれいな自然のなかで岩登りを楽しみたいとい
う人には相変わらず親しまれている。

混雑はいやだ、兄岩やマラ岩、2峰あたりはのぼりあきた、という人もおおいだろう。そんな
わけで、ちょと、はずれた岩場で登りました。

1996年9月15-16日
もどき岩にいく。岩と雪の100岩場にはもちろんしっかりのっている。キャンプ場から遠い
からすいている。
左岩スラブの上部にあるが、入り口はヴィクターのある沢を通らず、もっと手前、カモシカ遊
歩道(小川山新コース)からぐんぐんとのぼっていく。
スラブとフェイスで、10a.10c.10dがあり楽しめる。その右の11cというのが、実はたいへんお
買い得で、となりのルートとそれほで差をかんじなかった。
1ピッチめトラバース、2ピッチ目スラブでもどき岩の頭にでる「南回帰線」は10Cで面白い
。
なりゆきで土日2日間もここにいってしまった。

9月29日
最高峰ルーフ。ここも昔いったよなあ、という人がいるかもしれない。小川山レイバックをの
ぼってから、いってみました。ちょとカビくさい感じがしたけれど、ま、とにかく静かでした
。「なでし」11aは出だし核心。宮崎秀夫さんの比較的新しいルートは10c、たのしめました。
今度、最高峰ルーフというのにいってみようかな。

おっと失礼。上の写真の右側はもどき岩ではありません。
兄岩の奥の奥のさいころ岩でした。キャンプ場からスカイライン上にみえるサイコロ状のやつ。
ここも、おもいっきり静かですね。景色も最高ですよ。これはたぶん1995年の秋、カンテの11a
でしょう。ちょとこわいルート。

9.01.1996

モンブラン

モンブラン
黒川晴介
Mt.Mont-balanc
 
 九月のはじめ、朝一番のバスに乗り、グーテ小屋へ向かった。
前回、グランドジョラスを登ってから天候が安定せず、すでに十日が経っていた。グーテ小
屋はまだたいへんな混雑で、その夜はマット二つに三人づつ寝なければならなかった。

 もうすっかり高度に慣れてもよい頃のなのに、なんとなく体調が冴えず、結局一睡もせずに
出発の時間になった。食欲もないが、美味しくないパンを無理に食べ、まずい紅茶をボールに
一杯飲む。独りだと準備も速く、一番最初に小屋をスタートした。

 二時間ほどでバロの避難小屋に着いた。風が吹きつけ、歩いていても寒くてしかたないの
で、中に入って休憩することにした。まだ外は真っ暗だ。小屋の中で数人が休んでいる。気分
が悪くなってきたので、膝を抱えたままずっと下を向いて休んでいると、いつの間にか眠って
しまった。気がつくと外はすっかり明るくなっており、気分も良くなっていた。

 一時は諦めて下山しようかと思ったほどだったのに、歩き始めると調子も良くなり、朝日に
照されながら頂上へと登っていった。

 頂上には何人かの人がいたので、写真を撮ってもらい、ゆっくり展望を楽しむ。スイス国境
の向こうへ白い山々が続いている。ここまで来ると周りの山々すべてが小さく見える。日が
昇った後でもまだ暖かくならず、ヤッケを二枚重ねているが、結構寒い。

 技術的には易しくても、この山で悪天候につかまれば、どんなに恐ろしいだろうと思う。モ
ンブランは歩いて登れるれる山だけれど、その高さゆえの寒さや空気の希薄さなど、決して簡
単な山ではないと思う。簡単だと思って今回はロープもアイスハンマーも持って来なかったので
、ザックは軽かった。けれど高度の影響や寒さなど、自分の精神的な弱さを思い知らされ、改め
て謙虚な心の大切さを考えさせられた。
 
 下山はモンブラン・ド・タキュールに寄っていく。メールドグラスに降り立った頃、すっか
り暖かくなり、一カ月あまりのシャモニーでの登山生活を思い出しながら、ミディのロープ
ウェイ駅までゆっくりと歩いていった。

8.24.1996

タスマン氷河スキーニュージーランド

東京テレマーカーズ・ニュージーランド合宿

どんなにスキーが好きでも、夏にわざわざ南半球まで、とおもっていたぼくらだが
糸尾汽車
 マナリング氷河を滑る
 
 どんなにスキーが好きでも、夏にわざわざ南半球まで、とおもっていたぼくらだが、今
年は、仲間の黒川、春水がワナカに家を借り、ひたすらテレマーク修業をつづけていると
いう事情もあり、訪問がてら、では、と重い腰をあげたのだった。行ってみればこんなに
よい所もない、夏はニュージーランドに限る、と感想も一変。テレマークフリークなら一
度はNZの旅もよいね、と、ここにぼくらの夏合宿の報告を。

メンバー ヒロユキ 真壁さん、静子様、ゆみさん、KISYA、現地・黒川、春水
日程 1996年8月24日~9月5日
目的 マウントクック周辺でバックカントリースキーイング
 登山愛好家があこがれるニュージーランド、サザンアルプス。なかでも有名なマウント
クック周辺には巨大な氷河の海がひろがります。スキーをつかってマウントクック周辺の
山やまと氷河を滑ります。海に囲まれたニュージーランドの山は、ちょうど、北アルプス
の厳冬期の感じです。厳しく美しい自然が日本から訪れたテレマークスキーヤーをむかえ
てくれるでしょう。

行程
24日 NZ機で出発
25日 クライストチャーチからレンタカーでワナカへ。ワナカモテル入。現地組みと合
流。

26日~28日 ワナカ、クイーンズタウン周辺のスキー場で遊ぶ。現地滞在中の石木田
選手、永島選手らともすべる。ふたりはデッドヒートしながら練習していた。二木選手も
モービルホームに住んでなんと釣を楽しんでいるという。もんべる金森は前前の週突然あ
らわれ雪不足のルートバンで板をきずつけて帰ったという。スキー場にはテレマーカーが
いっぱい。ワナカには若い日本人のボーダーがたくさんすんでいる。時代は変わった。ハ
リスマウンテンのヘリスキーに申し込むが、天候不良で果たせず。

29日 現地組みとわかれ、ワナカからマウントクック村へ移動。マウンテンガイズ社で
打ち合わせ。明日より4泊5日の予定で入山。ガイドはアントンさんと日本人のノリさん
。外国の山はガイドをたのむのが安心。

30日 朝一で村の飛行場からヘリでタスマンサドルへ。さっそくタスマン氷河源流のあ
ちこちをすべりまくる。どこもかしこもパウダースノー、バージンスノー。もちろん自分
の足でのぼったぶんだけしかすべれないのだが。下りすぎて夕方へろへろになってケルマ
ン小屋へ。ここに滞在。宿帳をみて仙台のテレマーカー工藤君と友達が前前の週にここに
とまって同じ様なことをやっていることがわかる。だしぬかれたか。
続き(改行で表示 S:次の発言)

31日 マーチソン氷河とマナーリング氷河へ出張、だれにも会わず。最高の雪質、天国
的なスロープ。奥まったところにあるマナリング氷河は特に印象的だった。アントンさん
はすばらしいガイドだ。

1日 ホックステタードーム登頂。滑る。天気もよく快適。終日遊ぶ。
2日 明日より天候悪化のため、下山。タスマン氷河を下る。
3~4日 天気悪く、移動、ツーリストに変身して観光。5日帰国。

8.02.1996

ブランブラ、フィルストで飛ぶ

PARA IN PLANPRANZ,FIRST

ブランブラ、フィルストで飛ぶ(パラグライダ-)


伊藤忠男
 CHU IS FLYING ABOVE CHAMONIX
 
96/8/2 ~8/11
ブランブラ(シャモニ-)もフィルスト(グリンデルワルト)も純然たるパラグライ  
ダ-のフライトエリアですから、このレポ-トはRock&Snowのコンセンサス  

からずれていて、明らかに”パラ・ワ-ルド”向きです。ただ、アイガ-やモンブラ  
ンを狙って滞在するクライマ-が”山飛び”の練習をするといった仮定をすると、多  
少意味があるかもしれないと考え、キ-を叩くことにしました。
昨年(96)夏に娘が”アンネの家”に行きたいというので、機体と寄り道案を持っ  
て一緒に行くことにしました。目的は“アンネ”なので、あまりぐずぐずやっていら  
れません。
これらのエリアが日本のエリアと明らかに違うのはスケ-ルですが、ただ飛ぶ分には  
、ランディングもテイクオフも充分な広さがあり、障害物のない平地も多いので緊急  
ランディングにもそれほど神経質にならなくて済みますから、かえって楽じゃないか  
と思います。

ブランブラはシャモニ-の街からゴンドラで上がって歩き1分。テイクオフは正面の  
モンブランに向かって行います。そう広くありませんが安定したブロ-の通り道で、  
楽勝~。ゴンドラの走っている斜面全体にサ-マルが出ていて、簡単に上げられます  
。テイクオフまでの高度差は1000m、水平距離3000mですから、届かないっ  
てことはありませんが、逆に強烈なサ-マルコンディションでは降ろす技術と精神力  
を試されるでしょう。こっちのパイロットは日本ではあまり見ないスパイラル降下を  
頻繁に使うのでちょっと驚きました(知らないで見ているひとも多分びっくりするん  
でしょうね、墜落した!っていってるひとがいましたから)。スパイラルは今のとこ  
ろ、もっとも降下率の高い技術ですが、機体の強度に掛かる負担も大きいのです。僕  
は、パラで数少ない体育的な動作になるこの技術が好きですが、ブランブラではおか  
げでフロントのラインを2本切ってしまいました。

フィルストは、シャモニ-とはがらり変わって牧歌的(的ってのは変か?)で超退屈  
な街グリンデルワルトから、やはりゴンドラで上がります。山頂駅から1分下ると理  
想的なラウンドトップのテイクオフ地点です。正面にアイガ-北壁が見えるすごいと  
ころ。ランディングまでの高度差は1300mで、水平距離が5200mですから、  
ブランブラのような訳にはいきません。まったく上げられないと、ショ-トします。  
ただ、直線でコ-スをとれば、下は殆ど牧草地で、ごめんなさいを覚悟すればまあ、  
安全に降ろせる場所を見つけるのにそう苦労はいらないでしょう。
僕の飛んだときは、小さなサ-マルだけだったのでそう上がりませんでした。ランデ  
ィングは街の向こう側にありますので、上空からゆっくり横断していくと下から歓声  
が聞こえてきてなかなかいい気分でした。広々としたランディングで機体をたたんで  
いたら、アイガ-の方からアプロ-チしてきたパラが目の前に降り、メットを外して  
ハイと声をかけてきました。見ると大きなリュックを背負っっているので、どっか登  
ったのかときくと、アイガ-北壁を狙っていたが、天気が良くならないので(飛んで  
)降りてきた、というのです。もう少し話をするとフリ-クライミングの好きなチュ  
-リッヒ大学の学生でした。アルプスではやっぱりパラはクライマ-の道具なんだな  
あ、と思ってしまいました。

高度差2000mのベルビエはもっとも有名なエリアの一つですが、僕らが寄った日  
は天気が悪くてパス。僕の持ち時間はこれでおしまい、アンネの家へはアルプスから  
2日間のドライブで、娘たちの健全さを尻目に、僕は合法化された?ッシッシにびっ  
くりして、ジ-ザス ワズ スト-ンドとかかれたTシャツが氾濫してぶら下がってい  
るアジア的な混乱を見せるアムスの街に懐かしさを感じていました。

7.15.1996

グランドジョラス

CLIMBING IN CHAMONIX-MONTBLANC

グランドジョラス
黒川晴介
Grandes Jorasses
 
 グランドジョラスは日本人に馴染みの深い山だろう。その北壁はクライマーにとっ
てあまりにも有名だ。モンブラン山群の中でも山自体の大きさ、際立った聳えかた、
やはり一度は登ってみたい山だ。

 残念ながら僕には北壁をソロで登るほどの根性はない。比較的易しいルートはない
かと捜すと、イタリア側がまだ登りやすそうなので、南面から登ることにした。

 シャモニーからバスに乗り、モンブラントンネルを抜けると、四十五分ほどで反対
 側の村、クールマイヨールに着く。フェレ谷へ入り、一日目はボカラッテ小屋
(別名グランドジョラス小屋)まで一二〇〇メートルの登りだ。

 フェレの谷は広くひらけており、緑も美しく生え、個人的にはハイキングするなら
シャモニーより良いのでは、と思う。小屋の人もとても親切で、なにより食事が美味
しかった。

さて、小屋の人に「明日ジョラスに登りたいんだけど、独りでも大丈夫ですか?」と
訊くと、少し暗い顔で「スノーブリッジがあまり良くない状態だけれど、行けないこ
とはないよ」との話だった。

 翌朝は三時にスタートしたけれど、ヘッドランプの灯りでは出発していきなりルー
トがよくわからない。なんとか最初の岩稜に取り付いたけれど、やはり真っ暗の中で
ロッククライミングをするのは大変だった。岩稜を登っているうちに明るくなってき
たけれど、今度はルート真ん中ぐらいですっかりガスに包まれてしまった。岩の上に
腰をおろし、しばらく悩んでいたけれどやはり、続けて登ることにした。もう八月下
旬でこのチャンスを逃すと登れないかもしれないと思ったからだ。

 なんとかウィンパーピークに突き上げるリッジに取り付き、フーフー言いながら
登っていくと、ガスが少し切れてきた。頂上はすぐそこだった。北壁側を覗きこみ、
シャモニーの谷を見ると、雲の中だ。

 クローピークを往復して、さっさと同ルートを下るが、再びガスに包まれた岩稜の
下りを迷って他のリッジに入ってしまった。そのうちガスは雪に変わり、登りとは違
う雪壁をクライムダウンしていくが、中途半端に積もった湿雪でクランポンがよく効
かず、恐ろしいクライムダウンだった。
 
 どうにか登りのトラックに合流して、岩場を何度かラッペルを交えて下っていく。
降り続ける雪がヤッケやザックに積もり、ロープを握る手袋はビショビショだ。最後
のラッペルで氷河上に降り立った頃に、ようやく雪が止んだ。ここから先はスノーブ
リッジに気をつければ歩きだけで小屋に帰ることができる。